都会のオフィスビル

２日前、半年以上もったアトピー性皮膚炎の薬がやっと無くなり、病院へ久しぶりに行ってきた。仕事帰りだ。
診察後の薬局はいつも混んでおり、薬の待ち時間は１５分前後だと告げられた。狭く混雑した室内で待つ気になれなかったので少しの間外出することにした。

この病院に来ると大体寄るのが明治屋だ。そしてこの明治屋が入っているビルがわたしは好きだ。職場から歩いて行ける距離だが、少し歩くだけで街の雰囲気というのは変わる。そのビルは昨日調べて初めて知った、京橋エドグランというオフィスビルである。

わたしはこのビルが格好良くて好きだ。

都会にそびえ立つ、洗練された構造と開放的な空間が魅力のビルだ。街行く人々の憩いの場となるゆったりとしたソファやベンチが並び、風の通り道は歩くだけで気持ちが良い。
病院に行った日は時間がなくて立ち寄れなかったが、ビルの地下にスタバを発見した。エスカレーターから見えたあのスタバに行ってみたいと思った。スタバはどこにでもあるが、わたしはどうしてもあのスタバに行ってみたくなって休日にわざわざ電車に乗って来たのである。

いざ入ったスタバの店内は思ったほど広くなかった。しかし居心地は良い。気持ちの良いほど良い冷房で、他の客もちらほら。さっき地上で見かけた開放テラスに行ってみようと思う。

自分の行動の動機というのはよく分からない。しかしあそこに行きたいと思うと何が何でも行くのだ。自分の心が動いたら行動に移る。逆を言うと、心が動かないものは1ミリも興味がないのだろう。人に勧められてその時はやってみようかなと思うが心が動かないものはやっぱり行動に結びつかない。

スタバは快適だったが冷房の中に長時間いることをためらってやはり地上の開放テラスへ移動した。地上へ向かうエスカレーターから見るビル内部の構造は思わず見入ってしまう。景色を楽しむため一段ずつ階段を上るのもいいだろう。段差が緩く長い階段を上ると、地下から地上へ続くにつれ自然光と緑が視界に入ってくるようになっている。上を見上げるとベンチで寛ぐ人。すべてが完璧に見える。

このエスカレーターはなぜか通常よりかなりゆっくり動く。こんなゆっくりしたエスカレーターなら歩いて上がっていく人がいそうなものだがそんな人も見かけないほどひっそりしているのも京橋エドグランの良いところだ！

開放テラスに座っていると天気は曇りの予定だったのに晴れてきた。
今日はこれからもっと気温が上がるだろう。
ここは都会のど真ん中。ビルの裏はすぐ、東京駅。
ビル前の通りを絶えず走る車両の音、近隣で常に行われている工事の音、それらが一斉に混ざり合い雑音として耳に入ってくる。

あぁ都会だな、と思う。

こんな都会の喧騒の中でひとり、ひとつの場所に佇んで外の風を感じている瞬間は非常に豊かで至福のひとときである。
わたしは都会が好きなのだ。