Shonan's Style【湘南ベルマーレ】

湘南ベルマーレの反撃が始まる。

2018年、長らく主戦場となっていたJ2から、”湘南スタイル”を引っ提げ、リーグカップを優勝。リーグ戦は13位だったものの、スタイルの確立と共に1994年以来のタイトル獲得とあって、ファンの胸は膨らんだ。

しかし、2019年~2021年は3年連続下位に沈み、またしても降格争いに苦しみ続けている。

今年も序盤戦は出遅れ、常に最下位争いをする状況だったが、直近4試合はリーグカップを含め3勝1敗。中位勢のとの勝ち点差を縮め、リーグカップでもプレーオフに進出。

堅守速攻をベースとしたアグレッシブな湘南スタイルを再建し、今年はタイトル奪取、降格常連組からの脱却を目指す。


☆上昇

ここ数年リーグを牽引してきた川崎・横浜FMを含め各チームが一進一退を繰り返す今シーズンのJ1において、5月に入り矢印が上向いてきたチームの1つが湘南ベルマーレだろう。

リーグカップグループリーグ最終節で磐田を破り、プレーオフステージ進出。第14節・ヴィッセル神戸戦で、下位対決をホームで制し反撃の狼煙を上げ、第15節『王者』川崎フロンターレ戦では、不落の要塞・等々力競技場で4-0と衝撃の圧勝劇を演じた。

第16節では同じく絶好調のC大阪に敗れてしまったが、18本のシュートに、コーナーキック10本と、攻撃的で魅力的なサッカーを見せた。


そもそも、”湘南スタイル”とは、2012年に就任した曺貴裁監督(現・京都サンガFC監督)が提唱した「ミスを割り切りアグレッシブにトライする攻守一体の堅守速攻」という戦術と信念。

監督が交代してもベースの湘南スタイルは引き継がれており、ボールは相手に握らせながら全員で守る堅い守備、高い位置でのボール奪取、複数人でのカウンターで、ボール支配率は高くないもののゲームを支配する。

昨年シーズン途中に就任した山口智監督の下で、ボールホルダーを追い越しながらじわじわと枚数をかける遅攻にも一定の成果が上がってきているが、基本スタイルは堅守で相手を引き込むことを前提にしている為、仕上げのフィニッシュのクオリティによって勝ち負けが左右される。

事実、今シーズンは、1点差での敗戦や引き分けと、決め手に欠ける展開で勝ち点を取りこぼしてきた。


そんな中現れた救世主が、FW町野修斗だ。神戸戦、川崎戦と2得点ずつマークし、現在6得点で得点ランキング4位タイ。チームの約半分のゴールを記録している。

185cmの体格と、汚れ役を厭わない前線からのハードワークが武器で、2019年に加入したギラヴァンツ北九州でもチーム得点王に輝き、クラブのJ3優勝に貢献した。

ウェリントン、瀬川祐輔、タリクらとのポジション争いもあり、スタメンは半分の7試合にとどまっているが、この勢いを保ち、今シーズンの湘南の顔になってほしい存在だ。


22歳の町野の他にも、ここ数年の湘南は若手の躍進が目立つ。

最後尾で湘南の堅守を支えるのは、21歳GK・谷晃生。2020年にガンバ大阪からレンタル移籍し、湘南在籍の間に東京オリンピック日本代表、ワールドカップ最終予選日本代表に選出。絶対的な守護神として、ますます存在感を増している。

19歳・MF田中聡は、パリ五輪を目指すU-21にも選出されている湘南の未来を担う存在。同じアンカーのポジション、同じ湘南下部組織の出身ということもあり遠藤航と比較されるが、守備時の切り替えの早さ・強度の高さと、時折見せるパスセンスはまさに遠藤に重なるものがある。アンカーポジションのライバルは実績・実力共に申し分無しの米本拓司で、ハイレベルなポジション争いを繰り広げている。

ウイングバックのポジションを勝ち取った20歳・畑大雅、23歳・石原広教の2人は、申し分のないスピードと運動量で攻守に渡って奮闘。湘南の武器であるサイド攻撃で、多くのチャンスをクリエイト。

22歳・MF池田昌生は正確な技術と戦術眼で、湘南屈指のプレイメーカーとして成長中。

守備陣には経験豊富なベテラン勢の山本脩斗、大岩一貴、東京五輪世代のチームでも活躍した杉岡大暉と、勝つためのピースは揃いつつあると言える。


”スタイル”と”哲学”があるチームには未来がある。これはサッカー界の常識だ。「湘南スタイル」がベテランから若手まで浸透し、数多のニュースター候補達から本物のスターが生まれた時、揺るがない、そして勢いを持った、強固なチームが完成するだろう。

昨年は降格争い、現在の順位は17位。とて、侮るなかれ。
「湘南スタイル」が日本サッカーを席巻する日は、すぐそこまで来ているかもしれない。

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