晴海フラッグ NHK報道を見て思うこと
1.小池都政の責任
私は『晴海フラッグに住んでみてわかった事』にて残念に思う事として小池都政の責任について述べた。
2.NHK報道
1)ネタドリ
その後、2024年6月7日夜のNHKネタドリで再び晴海フラッグの不動産業者の転売が取り上げられた。それまでNHKは2度にわたり不動産業者の転売及び賃貸募集の問題を取り上げてきた。しかし、これまでは問題を報道するだけで、その背景にある本質的な問題に関しては追求されていなかった。そのためにニュースを見た後にモヤモヤ感が残った。
しかし、ネタドリでは、私が前回の投稿で指摘したように、問題の原因となった都政の無策ぶりが取り上げられた。厳しさには欠けたが、小池都政の責任につき、言及したのはNHKとしては大きな進歩だと感じた。
2)NHK首都圏ナビ
さらに7月11日のNHK首都圏ナビでは東京都が上記の報道を受け、発表した『ファクトシート』の検証が行われた。
それによれば、以前は都は法的にデヴェロッパーの販売方針に関与することはできないと回答してきた。NHKの問い合わせに国交相が法的に都が販売を指導することは可能であると見解を述べたことより、都はこの言い訳を削除している。
都は板状棟の販売に関与しなかった理由として、新たに第一回目の販売では2.6倍の倍率になったものの、全ての販売予定住戸に申込みが入らず、その後の販売に不安があった事を挙げている。しかし、これは言い訳にもならない事は後段で説明する。
そして、タワー棟の販売に関し、1名義2戸までの申込み制限をつける様指導した事、さらに同一の代表の法人については1法人のみの申込みに制限した事を述べている。しかし、問題の本質の解決(実需筋の購入優先)にはなっていない事、また、ぬけ穴だらけの制限方法である事は明らかである。世間の批判を交わすための形ばかりの急場凌ぎの対応策でしかなかった。
本気で法人の購入を制限するなら、10年間は転売を禁じる等の制限をつけるか、もっと厳しく法人の購入そのものを禁止する措置が取れたはずである。
晴海フラッグは2020東京オリンピックのレガシーとして建設されたものだ。しかし、このような実態ではレガシーと呼ぶにはあまりにもお粗末だ。小池都政はオリンピックのレガシーを自ら貶めてしまったのだ。その反省が全く無いのが不思議だ。言い訳のために作成したと思われるファクトシートもあまりにもお粗末だ。
NHKには更に都政も闇の解明してもらいたい。
3.これまでの販売の経緯/デヴェロッパーの闇
実際の販売状況について本当に都やデヴェロッパーが危惧するような問題があったのかどうか、晴海フラッグの購入者の視点で検証してみたい。
1)晴海フラッグ販売前の噂
私は晴海フラッグに非常に興味を持っていて、できるだけ情報を集めたいと思っていた。当時は販売価格は坪単価270万円平均と言う話が最も有力だった。しかし、250万円もありうると言う情報もあった。むしろ、その方が有力だと感じていた。270万円でも当時の周辺のマンション価格から見て十分に魅力ある価格ではあった。
2)第一期販売
実際に販売が開始されると条件次第で価格は変わるので、平均価格を算定するのは難しいが、どう見ても平均坪単価は270万円以上で300万円に近いと思った。少しがっかりしたが、だからと言って購入を断念する気は全くなかった。
格安とは言えないが、それでも周辺の市況から判断して割安だと思えたし、何よりも街として大きな魅力があったからだ。だから、価格的には少し期待はずれだったにも拘らず、勝どき駅からの距離が遠いと揶揄されても本当に晴海フラッグの価値を理解する人たちがいて、平均倍率は2.6倍にもなったのだ。今でこそ、2.6倍の競争率と言ってもさほど驚かれないかもしれないが、当時のマンションの販売状況では販売量から見ても画期的な人気と言える倍率だった。何故なら、当時のマンションの販売は販売個数を小分けし、事前に申込書を受付、申込のあった住戸のみを販売し、常に完売宣言していたものだ。平均倍率が2倍になるマンションは殆どなかったはずだ。
当時は投機家の購入の噂は全くなかった。販売担当者にも複数戸の購入を進める雰囲気など全くなかった。住宅ローンを使う場合はその返済能力があるかどうか厳しくチェックされた。
都のファクトシートでは都が販売に関し、介入せず、デヴェロッパーに任せた理由として、2.6倍の人気にもかかわらず、販売予定住戸の全てに申込みが入らず、先の売れ行きに不安があったとしている。これは後から考えついた言い訳に過ぎない。もちろん全ての住戸に申込みが入らなかったのは事実である。私も参加したからよく覚えている。例えば、人気のあった住戸にもかかわらず2階住戸だけ申し込みが入らなかったケースがあった。しかし、これらはレアケースであり、販売に不安をもたらすような事象ではなかったはずだ。何よりもデヴェロッパーはそんなことは百も承知のはずだろう。
第1期販売ではたった2回の4ヶ月間の販売で全体の販売戸数の35%に当る941戸が販売できたのだ。(当時は完売と言っていた。)この状況のどこに不安があったのか?
3)第二期販売
第1期一次、二次の販売の後、3回目の販売であるサンヴィレッジの販売が始まると、それまでに抽選にはずれ、購入する事が出来なかった人達を救済するために、過去に購入を申し込んでいた人たちには3倍の抽選権を与えると言う措置が取られた。それだけ、人気があり、なかなか抽選に当たらないと言う実態があったと言う証明である。
さらにサンヴィレッジは眺望、日当たりの条件が悪い住戸が多く、そのため価格が安く設定され、多くの実需家ばかりでなく、投機家の興味を惹くことになったのだろう。だから、デヴェロッパーが不動産業者に複数個の購入を認めたのは販売不振が予想されたからと言うのは真っ赤なうそであることはあきらかだ。
4)それ以降の販売
その後、1年間のコロナ禍による販売の中断を挟み販売が再開された。私はすでに購入済みであり、販売状況に関しては感心を持っていなかった。そのため、4回目以降の販売がどのように行われたかは正直知らなかった。NHKのネタドリを見て、初めて、デヴェロッパーが率先して不動産業者に複数戸の購入を勧めていた事を知った。3戸までの購入はネットで申し込みができ、4戸以上の購入は対面での申し込みが出来たと言う。実需での購入者はこの販売方法にかなり困惑を感じたと言う。これはデヴェロッパーが不動産業者への販売を積極的に進めていたことの証である。
正直、デヴェロッパーが投機筋に積極的に販売を進める理由が全くわからない。癒着して販売せねばならないほど影響力のある不動産業者がいたのだろうか?
都は販売に不安があったから法人への販売を容認したと言ってるが、そもそも販売に不安のある物件に法人・不動産業者が興味を持つはずがなく、この言い訳は矛盾に満ちている。
また、不動産業者の転売が世間から非難されるとタワー棟の販売では購入を2戸までに制限した。しかし、これは全く実効性のない、見せかけの対応策であることは誰の目にも明らかだ。本気で、法人を締め出す気が無く、ここでも不動産業者への便宜が明らかだ。
コロナ禍で受け渡しが1年延期されたとはいえ、販売が落ち込むことはなく、回を追うごとに販売は熱を帯びていった。にもかかわらず、デヴェロッパーはなぜ不動産業者に便宜を与えたのか?私には全くの謎だ。
デヴェロッパーとしても不動産業者への大量の販売が問題となり、批判されるのはわかっていたはずだ。それなのに何故???私にはどうしても理解できない晴海フラッグの闇だ。
4.今後のNHKの報道に期待すること
都政の無策ぶり、無責任さには言及されたが、新たにあきらかになった販売主体であるデヴェロッパーの責任については触れられなかった。実際には販売の主導権を持っていたデヴェロッパーの不動産業者・法人への販売政策がより大きな問題だと考える。都の役員の三井不動産への天下りの実態が報道されている。しかし、それは三井不動産が法人への販売を勧めた理由の説明にはならない。NHKや他のマスコミには今後、デヴェロッパーの闇について厳しく追求してくれることを切に希望する。
これまでの様にゴーストタウン化とか民泊とか晴海フラッグをディスる様な記事を出しても盛り上がらない。なぜなら、これまでマスコミが取り上げてきた問題は実態とかけ離れているからだ。
それよりも何故このように晴海フラッグが不動産業者・法人の餌食になる様な状況になったのかという原因を明確にして反省しないと晴海フラッグは2020東京オリンピックの本当のレガシーにはなり得ない。
5.晴海フラッグの現状
これまで転売問題、賃貸募集問題とネガティヴな話題について触れてきたが、最後に住民の目線で晴海フラッグの現状について述べたい。出足でつまづいた様に見える晴海フラッグだが、実態はしっかりと確実に街づくりが進んでいることを知ってもらいたい。
1)空室率
1月20日より引越しが始まり、ほぼ半年が過ぎた。7月になっても入居は続いている。転売住戸を購入した人や賃貸で入居する人の引越しも含まれているかもしれない。現状、空室はそれほど多くない。サンビレッジはよくわからないがパーク、シービレッジでは確実に80%以上は居住されていると言うのが実感だ。
一般的にマンションの価格が高騰したため、実需の買いは細り、都心のタワーマンションでは晴海フラッグ同様に投機家の買いが多い。従い、必然的に竣工当時は空室が多く、空室問題は晴海フラッグ特有の問題というわけでは無いのかもしれない。
2)生活感
休日は中庭で子供達の歓声が賑やかだ。各ビレッジの中庭で遊ぶのは晴海埠頭公園とは異なり、ほとんどが住人家族だ。十分すぎるほど生活感に溢れている。特に幼い子供いる街の将来は明るい。
1、2月は小さな子供のいる若い世帯が目立ったが、その後は徐々に各世代の入居が始まり、私の様な高齢者も多くみられる。これはうれしい誤算だった。よく団地と揶揄されるが、団地の問題点は入居者の年代が偏っており、居住者の新陳代謝が進まず、4−50年経つと建物と共に高齢化が進む事である。晴海フラッグの住民の世代構成を見る限りバランスが取れており、住民の新陳代謝はスムーズに進みそうだ。
晴海フラッグでは上記のタウンポータルでわかる様に、街開き以来、様々なイヴェントが行われ、また、すでに12のサークルが入会の募集を行っている。住民間のコミュニケーションの形成は想像以上に早く進んでいる。
3)晴海フラッグ住民の課題と管理組合の役割
晴海フラッグの想定人口は12,000人と言われる。これは地方では1つの行政単位を構成できる大きさである。区、都政に対しても大きな発言力を持てるだけの人口である。都政に頼らず、これからは自力でレガシーとして誇れる街作りをしなければならない。
しかし、そのためには住民の意見の集約が必要で、その基盤が管理組合になると思っている。6月に管理組合理事会が開催された様だが、私は理事会運営に少し不安を持っている。理事は立候補制ではなく、輪番制であるようだ。輪番制だと、2年の任期が終われば交代で長期的な視野に立った運営がやりにくい。そしてデヴェロッパーの息のかかった管理会社の言いなりになる恐れがある。
その弊害を回避するために、理事の選任方法として立候補制の併用の採用が必要だ。立候補制の併用により強いリーダーシップを持った理事・理事長が選ばれ、長期的視野にたった理事会の運営できるようにならないといけない。管理会社任せではなく、理事会が主導する管理組合でなければならない。早く、その理想が実現されることを切に願っている。
以上
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?