(この街が好き) ニュータウン団地の不動産市況
1.新居探し
前回、稲城市の戸建住戸の売却の顛末について述べたが、思いもよらず早く売却が決まり、晴海フラッグへの入居まで2年近い期間の仮住まいを探さねばならなくなった。そこで下記方針のもと転居先を探すことにした。幸い、引き渡し条件が半年後の契約であり、新居探しに時間的な余裕はたっぷりある。
(新居の条件)
1)できる限りコストを抑える。
2)隠居生活ゆえ、通勤の必要性はなく、また、車も有るので、足の便は悪くても構わないが、緑豊かな住環境は不可欠。
3)この時間を何か新しい楽しい経験のできる機会としたい。
4)妻の持病のための通院や子供の育児上のピンチに駆けつける事ができる距離内に住む。
上記の条件を満たす居住地として最初に思いつくのはニュータウン内の団地である。ニュータウンとしては多摩、千葉、稲毛海岸を候補と考えた。これらのニュータウンにはUR賃貸住宅が豊富にあり、イメージを持ちやすかった。また、一度ニュータウンに住んでみると都内の他の街の狭苦しい雰囲気には耐えられず、ニュータウン以外の住宅地は考えられなかった。
ニュータウン内の古い団地は高齢者が増え、それに伴い空き家が目立ち、廃墟化している様な印象を持たれているかもしれない。しかし、実際に現地を訪れてみるとどの建物も築40年以上の老朽化マンションとは思えないように綺麗に維持されており、管理が行き届いていることがよくわかる。また、物件の詳細を見ると大規模修繕でペアガラスに交換済みであり、建物によっては外断熱化工事が予定されており、管理組合が十分に機能していることが見て取れる。多摩は街路樹が綺麗で緑地(大規模公園)が多く、生活する上でゆとりが感じられる。また、稲毛海岸では海浜公園が素晴らしかった。長く続く海水浴場とそれを覆う緑地が豊かだ。海辺と緑地公園が一緒にある所はなかなかないだろう。ハワイのワイキキ近くのマジックアイランドが思い浮かぶ様な光景だった。また、近くの幕張ベイタウンは建物の外壁の色がとても見事で統一感のある建物群とあいまい、まるで異国の街に来た様な錯覚に陥るほど素晴らしかった。こんなところに住めば毎日のウオーキングが楽しいだろうなと思う。
2.ニュータウン団地の不動産市況
(1)2022年2月
2022年2月以降、本格的に仮住まいを探し始めた。これらのニュータウンを比較すると家賃、不動産価格では多摩>稲毛>千葉の順で高いがその差はあまりなかった。これらの団地内では築40−50年の古いマンションが主流であり、50m2前後の広さで3DKの公団分譲マンションを使いやすい2LDKにリフォームした住戸で、家賃6万円/月前後の物件が普通にあった。また売買でも10万円/m2、500万円程度の2LDKも普通に見られた。一方、倍の20万円/m2、 1,000万円レヴェルの2LDKもあり、その差はフルリフォームの有無である事がわかった。これなら購入して2年後に売却しても大きな損にはならないだろうと考え、賃貸、購入の両面から物件を探し始めた。
その時、購入の場合の物件価格の妥当性を判断する基準にしたのがUR住宅の家賃である。2人で住むのに必要な50m2前後の広さの2LDKもしくは3DKの家賃は凡そ75千円である。これに相当する住宅としてリフォーム済みの分譲団地の2LDK、50m2前後を想定。フルローンで購入したとしてその返済にはURの家賃から管理費、修善衝立費を除いた6万円が返済に充てられる金額と想定。物件価格が1,000万円なら15年で余裕を持って返済できる。20年であれば1400万円程度までなら妥当な購入価格と考えられる。なお、これらの分譲団地は殆どが旧耐震基準で建築されている。しかし、5階建ての低層建築である事、また、単純な長方形をしており、耐震性は高いと考えられる。事実、旧耐震建築でありながら新耐震基準に適合するケースが多いと聞いてる。たとえ耐震補強工事が必要としても建物の形状から費用は安く済むはずだ。また、UR住宅に比較して駅からの距離も近く徒歩圏にある建物が多い。2月時点でネットに掲載されていた売物件は3ニュータウンいずれでも2LDKでリフォーム済み相当で1,000万円前後の物件が多く見られた。上記の様にUR住宅の家賃を基準に考えた場合、この価格は非常に魅力的と言える。築古団地の不動産価格は同じニュータウンの築30年以内のマンションと比べて格安と言える。5階建の建物でエレベーターが無く高層階では階段を登るのが大変だと言うのがその理由であろう。売りに出ている物件はやはり最上階である5階の部屋が1番多い。
2月に多摩ニュータウンで100m2超の物件を内見した。5階の部屋で歩いて登ったが、普段からよく歩いており、全然息切れすることもなく、物件に興味を持った。価格は14万円/m2であり、リフォーム物件ではなかったが、キッチン、バス、トイレは比較的新しく、やや劣化している壁紙を張り替える費用程度は値引きしても良いと言われた。ほぼ、リフォーム物件でこの価格は安いと思われた。また、年内に外断熱化工事が予定されており、そのための一時金の徴収は無いと言う。なかなか魅力的な物件であった。しかし、同じ日にスーパーに買い出しに行き車まで重い買い物カゴを運んでいる時、もしこれを5階まで運ぶとすればとても無理だなと言う思いに至り、残念ながら、断りの電話を入れた。これは自分が高齢者だからと言うわけだけではない。若くても重い荷物を持って5階まで歩くことは大変な事であり、時代に合わないのだろう。その後、値下げするのでもう一度購入を検討してくれないかとの依頼が仲介業者からあったが、理由は価格ではなく、断らざるをえなかった。本当に築古団地を再生するには建替が必要だと思った。
※その後3月末に東京都はマンション再生を奨励する4地域を発表したが、多摩ニュータウンの一部地域が含まれていた。建替えが進み、この地域が再生されれば、素晴らしい住宅街になるだろう。リニア新幹線の停車駅橋本から電車で10分程の距離であり、企業誘致も進み、職住接近の新しい街ができる事を期待したい。(東京都のマンション再生政策関連は下記ULR参照)
https://www.mansion-tokyo.metro.tokyo.lg.jp/pdf/36saisei-machidukuri/36saisei-chiku-02.pdf
(2)2022年4月
4月に入り、再度ネットで物件をチェックしたが、驚いた事に築古団地の格安物件はほぼなくなっており、数は少ないが、これまで1,000万円程度であった2LDKの物件が1,700ー1,900万円まで高騰しており、他物件も価格が著しく上がっているように感じた。多摩ニュータウン稲城地区で昨年後半に起きた様な売り物件の枯渇、高騰化現象が少し遅れて多摩センター、永山地区以西にも及んできているのだろう。
コロナ禍でより広い住居を求めて需要が郊外に移っていると言われるが、住居の広さだけが求められているのではないだろう。この様に50m2程度の住戸の需要も旺盛なのは価格のみならず、人々の人生における価値観の変化が背景にあるのでは無いだろうか。これまでの様に資産価値の観点からではなく、住環境、人生の真の豊かさ等を求め、都心から郊外へと目を向けた結果では無いだろうか。コロナ禍による人々の郊外への移動は一時的とみる評論家やマンションブロガーが多いが、このような身近な地域での大きなうねりを見ているとこれらの動きは不可逆的な大きな流れのように見える。
とは言え都心では不動産市場は10年以上も上昇を続けているが、郊外ではその間低迷を続けていた事を考えれば、現在の短期間の市況の変化も都心のそれに追いつくものとすれば当然の動きかも知れない。
稲毛海岸や千葉ニュータウンではまだそれほど目立った変化は起こっていないように見えるが、それでも格安物件は出てこなくなったように見える。何れ、千葉でも多摩ニュータウンで起きている現象が顕著になるだろうと想像される。
やはり、転居先は当初の予定通り、賃貸物件に絞った方が良いだろう。候補地は稲毛海岸にしようか。
ニュータウンの魅力を伝えたいと思い、このブログを書いているが、図らずも前回同様、今回もニュータウンの不動産市況について書く事になった。しかし、不動産市場が活性化し、ニュータウンが再度注目され、ニュータウンの再生に繋がればうれしかぎりである。
以上
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