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プロジェクトマネージメント特性比較 Part6 (プロジェクト属性との相関関係と回帰分析)

 今日は、前回までの結果がどういう要因で出てくるのかを調べてみる。それぞれの相関関係を確認し、各説明変数およびそれぞれの目的変数が互いに他の目的変数にどの程度の影響を与えるかを考察し、アジャイル型と ウォーターフォール型の違いを洗い出す。


プロダクトサイズと各目的変数の相関関係


 ここでは、三つの目的変数であるProductivity (生産性)、Speed of Delivery (開発速度) 、Defect Density (欠陥比率) とプロダクトサイズの相関関係をアジャイル型と ウォーターフォール型で比較する。

 アジャイル型に関しては、各データが全て揃っている 31 プロジェクトに絞っている。また、Speed of Delivery が 2157.2 のプロジェクトを削除し、結果 30 プロジェクトを外れ値として考察している。Table 14 に アジャイル型に使用したデータの基礎データ情報を記載している。
 ウォーターフォール型に関しては、各データがすべて揃っている 99 プロジェクトに絞っている。なお、データが無いこと以外にはフィルタリングをかけずそのままのデータを使用している。Table 15にウォーターフォール型に使用したデータの基礎データ情報を記載している。

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 Table 16 、Table 17はそれぞれ アジャイル型と ウォーターフォール型のFP の数である Function Size、開発プロジェクトに掛かった工数(時間)である Work Effort (労働時間)、Productivity (生産性)、Defect Density (欠陥比率)、Speed Delivery (開発速度) 、開発に掛かった時間である Project Elapsed Time、総欠陥数である Total Defects Delivered のそれぞれの相関関係を表している。

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左上から順に アジャイル型と ウォーターフォール型で差があり特徴を表しているものを見ていく。

Function Size と Speed of Delivery

 アジャイル型の相関係数は0.83 であり、非常に相関が強く開発規模が大きくなると開発速度も同じく変化していくことを意味している。一方 ウォーターフォール型の相関係数は 0.49 であり、相関はあるが アジャイル型程ではない数字であった。詳細を見てみると小さな開発プロジェクトで非常に早く開発が終わるプロジェクトがいくつかあり、それらが相関係数を下げていることが分かる。

Function Size(開発規模) と Productivity(生産性)

 アジャイル型の相関係数は -0.36 であり、負に相関があり開発規模が大きくなると生産性が下がることを意味している。また、ウォーターフォール型の相関係数は -0.18 であり、これもまた負に相関がある。開発規模が大きくなると予想外の事象がおこり生産性が下がるのは想像に易いのでこれは想定の範囲内ではあるが、アジャイル型がより開発規模の影響を受ける。対処方法として Iteration を分けるなどの手法が取られる。

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Function Size(開発規模) と Defect Density(欠陥(バグ)比率)

 アジャイル型の相関係数は-0.15であり、開発規模の大きさと欠陥比率にそれほどの相関関係が無いことを意味している。また、ウォーターフォール型の相関係数も 0.09 であり、これまた相関関係が弱い事が言える。これは、規模に比例して欠陥率が増えるかどうかは一概には言えないことを表している。一方単純に欠陥の数を表す Total Defect Delivered と Function Size の相関係数は、アジャイル型では 0.55、ウォーターフォール型では 0.75 と強い相関がある。アジャイル型、ウォーターフォール型双方とも開発規模が大きいにもかかわらず 欠陥があまり出ていないプロジェクトがある点が、相関関数が 1.0にはならない理由だ。アジャイル型と ウォーターフォール型の差について見ると、アジャイル型では、開発規模が小さいにもかかわらず欠陥が大量に生じているというプロジェクトがいくつかあるため、 アジャイル型の方が、少し相関関数が低くなっている。強いて言うなら、 アジャイル型の方が欠陥率予想が難しいと言えるが、ここではそこまでの差ではないと考える。

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Productivity (生産性)と Defect Density (欠陥比率)および Project Elapsed Time (開発総時間)と Total Defects Delivered(総欠陥数)

 Productivity と Defect Density について、アジャイル型の相関係数は 0.32 であり、ウォーターフォール型のそれは -0.13 である。また、Project Elapsed Time と Total Defects Delivered について、アジャイル型の相関係数は 0.81 であり、ウォーターフォール型のそれは 0.36 である。これらの相関係数の比較から、欠陥が起きた際にアジャイル型は、生産性、開発速度により大きく影響すると言える。

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次回は、プロジェクト、プロダクトの属性(産業、新規開発・改良開発、開発言語別)を調査する。

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