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子会社で企業不祥事が起っているのはほんまでっか? 最終話 「不祥事は親会社で起きてるんじゃない!子会社で起きてるんだ!?」

織田〇二さんはかつて言いました。「事件は会議室で起きてるんじゃない!現場で起きてるんだ!」これは不祥事における親会社、子会社にも当てはまるのでしょうか?

今宵はこの点を検証し、最終回とさせていただきます。タイトルが面白いと思った方も面白くないと思った方も、もう少しお付き合いください。

一言に「企業不祥事」といっても色々ありますので、本連載における企業不祥事とは、「企業に重大な不利益をもたらす可能性がある業務上の事件または事故であって、企業としての被害軽減対策や防止対策が存在し得るが、当該企業による故意あるいは注意義務の違反が重要な原因であるもの」とします。 ※1 
また、企業不祥事の区分は、「①不正会計、②会社資産の不正利用、③情報の不正使用、④その他意図的なコンプライアンス違反、⑤その他不祥事」の5つに分類します。※1

このように、様々な種類の不祥事がありますが、調査対象は、公正取引委員会の公表資料といった各種資料から比較的調査が容易な④その他コンプライアンス違反のうちの法令違反、それも談合に絞りたいと思います。

談合を行っていた会社については、公正取引委員会のウェブサイト ※2 をもとに、延べ違反子会社数と延べ違反事業者数を求め筆者が算出しました。子会社の定義は法令毎に異なりますが、会社法上の議決権の過半数を有する会社がある場合に子会社としてカウントしました。


その結果、2017年から2019年の3年間において公正取引委員会から処分を受けている企業の約41%が子会社であることがわかりました。


41%


この数字が大きいか小さいかは皆さんの感覚次第かもしれませんが、筆者は大きいと感じました。少し大げさな言い方をしますが、公正取引委員会から処分を受けている企業のおよそ2社に1社は子会社ということですから。

平成26年(2014年)の会社法改正では、多重代表訴訟の制度が導入され、親会社の株主が子会社役員の責任を追及できることになっています。子会社役員についてもD&O保険の対象にしており保険でカバーしている会社が多いでしょうけれど、代表訴訟に巻き込まれた際の対応時間というコスト、対象役員や企業のレピュテーションリスク、株価や採用への影響、指名停止処分を始めとした各種行政処分による売上高への影響、談合が刑事事件へ発展する可能性、ファイナンスの条件への抵触、コーポレートガバナンス・コードで求められている社長・CEOの後継者育成計画などを視野に入れると、保険をかけていれば(お金を払えば)済むという問題ではないように筆者は感じます。

まとめますと、


「談合は親会社だけで起きてるんじゃない!子会社でも起きてるんだ!」


がどうやら正しい台詞のようです。

そして、連載第1回の問題意識『定量的に子会社で不祥事が起きているかを分析してみて、このプリンシプルの原則5が言ってることに「Yes」or「No」の答えを出してみたい。』については、


画像1


となります。(談合に限って、ですが)

本連載はこれにて終了となります。お読みいただきありがとうございました。

※1 渡辺樹一弁護士 【連載】企業不祥事から学ぶ企業変革・組織開発への施策第1回企業不祥事の分類と件数の推移」 (https://www.businesslawyers.jp/articles/794)BUSINESS LAWYERS 2020年7月17日

※2 (https://www.jftc.go.jp/houdou/pressrelease/dksochi/index.html)

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