見出し画像

子会社で企業不祥事が起っているのはほんまでっか? 第2話 「今夜わたしが説明しますのは…」

さて、今夜わたしが説明しますのは、リスクマネジメントについてです。

リスクマネジメントの定義は色々ありますが、例えば「企業の諸活動におよぶ悪影響を低減させるため、要因(リスク)を特定し、資産・活動・稼働力を保護するために必要な機能を、最小のコストで運営管理するプロセスで、経営管理手法の一つ」とされています。※1

一見難しいように聞こえますが、リスクマネジメントは日常生活の中で意識無意識を問わず誰もが行っています。

例えば、海外旅行の計画を立てるとしましょう。「旅行先を選定する際に、治安の悪い危険な地域は避ける」「旅行先で病気やケガをすると心配だから傷害保険をかける」「宿泊先で夜中に出歩かないようにしている」といった経験はありませんか?これがリスクマネジメントです。

旅行先選定の場合の皆さんの頭の中をもう少し分解すると、(A国に行ったら××が起こる可能性があるな…)と考えた際に、
選択肢1:海外旅行に行くのはやめる。
選択肢2:A国ではなくB国に行く。
選択肢3:A国に行くが××が起きても問題ない方法を検討する。
選択肢4:××が起きても問題ない。A国に行く。
ぐらいのことを意識無意識を問わず考えていると思います。(例え話なので、こんなこと考えないとか、別の選択肢を考える、ということは置いておいてください)
これは、A国に行くと発生しうるリスク××について、①発生しそうな頻度と②そのリスク××が自分に与える影響度を想像し、どのように行動するかを自分で選択しているのです。これがリスクマネジメントの肝の部分です。
A国だとイメージしづらい方は、遊びに行く場所について、より身近な国内、それも歌舞伎町など、イメージできる治安の悪そうな場所に置き換えてみてください。あるいは、新型コロナウイルスの感染者が増加している地域に遊びに行くかどうかを考えてみてください。そのときの思考プロセスは、まさにリスクマネジメントです。

リスクマネジメントのプロセスは、JISQ31000によると、次の図のようになります。

画像1

         (出典:日本工業標準調査会HP)

これまた一見するとわかりにくいのですが、先ほどの海外旅行を例にとると、大きくは
①海外旅行に行った場合のリスクを特定する
②各リスクを分析、評価する
③各リスクへの対応を決める
というステップを踏みます。

①は、海外旅行に行った際にどんな「危ないこと」が起きるかを想像することです。例えば、治安の悪い所に行けば、スリにあう、強盗にあう、命の危険にさらされるといったことです。実際には、webサイト、旅行会社の注意点アナウンス、友達からのアドバイスなどを基に色々な項目を考えていると思います。

②では、①で想像したリスクを分析、評価します。上記に即していえば、命の危険にさらされる頻度、命の危険が自分自身に与える影響度をもとに、リスクの大きさを評価します。具体的には、
A 発生確率 ✖ B 発生したときの影響の大きさ = C リスクの大きさ
によりリスクの大きさを評価することになります。

リスクマネジメント

  出典(https://mag.jws-japan.or.jp/hint/work/risk-management/)

③では、②で評価したリスクに対し、どのように対応するかを決めます。例えば、現地での病気や傷害に備え保険に入る(移転する)、危険な地域への旅行は避ける(回避する)、問題となるようなリスクの大きさではないから気にしない(受容する)などです。リスクマネジメント上は、回避、低減、移転、保有などと呼ばれます。

ここまで縷々述べてきたリスクマネジメントの考え方をもとに今回の連載で述べたいことを要約すると、

A 発生確率 ✖ B 発生したときの影響の大きさ = C リスクの大きさ
だとすれば、
子会社で不祥事が起きてる(A発生確率が高い)なら、C リスクの大きさは大きくなる可能性がある。
逆に子会社で不祥事が起きていない(A 発生確率が低い)なら、C リスクの大きさは小さくなる可能性がある。
となります。
今回の連載は、子会社における不祥事の「A 発生確率」がどの程度のものなのかを分析し、その上で子会社不祥事に対する対応を決めるべきではないかということをテーマにしたものです。

次回は最終回。全ての子会社の不祥事についてではなく一部に限定したものですが、分析結果を発表します。


※1 三井住友海上(https://www.ms-ins.com/business/risk/rmguide/cycle.html)より引用

是非サポートお願いいたします。サポート頂いた資金は、アンケート費やデータ購入の為に使用させていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。