天地がひっくり返ったら、驚くほど痛くて、でも自由になった話。
昨年10月、まちなかの精密機器のサポートから、家近くのとある小売のコールセンターに転職した。
何故転職したかと言うと、以前の職場の取り扱う製品などは心から好きで楽しかったのだが、度々残業になり、
「寂しい……」
と当時小一の息子に言われたためだ。こういう時、息子はあまり私の目を見ない。
コロナ禍のさなか、感染者数が爆発的に増えてきていた北海道。まちなかまで出勤を続けるのも躊躇われた、というのもあった。
知人もいたため安心して移った職場。全くの未経験の業界だったが、だからこそ学ぶことが多く、本当に楽しく過ごしていた。
2021年1月までは。
今、仕方の無いことなのかもしれないが、職場に「出勤可能な基準」が定められているところが多い。その新しい職場でも、「何かしらの風邪症状や味覚嗅覚異常がある場合は出勤してはならない」という基準が周知された。
元々、体温高いんだ。真面目に毎朝計測する習慣がつき、12月頃から基準値の「37.0℃」を超えることが、ポツポツと出始めてきていた。
実はこれ、私の実体験。ライブじゃないけど、職場。
他に症状もなく「新型コロナウイルスの症例疑いに該当しない」との保健所の回答をもらっても、37.0℃を1分でも超えると出勤停止。
1月に酷い風邪を家族中で引いたこともあり、高体温について調べてみるか、ということで、ウン万円かけて大学病院で全身検査してもらった。
「膠原病では無いですね!」
ということが2ヶ月かけて判明し、原因不明のまま、出勤できない日が続いた。
こういう時、通常なら「会社指示による休み(欠勤扱いではない)」ということで、休業手当を支払うのが、一応は厚労省ホームページでも推奨されている。(下記参照)
だから、会社に「休業手当が振り込まれていないのだが」と確認したあたりから、風向きがおかしくなった。
結局、各所に相談するも、休業手当は支払われず。むしろ出勤してもいいハードルがより高く会社より示された。仕方がないので、厚労省の方の休業手当支援金を申請した。(会社から休業手当が支払われない場合、労働者側から国に直接申請できる制度)
私、新しい職場の上司も、すごく信頼して尊敬していた。しかし、人事の調査で、私に指示した無理難題を「そんなこと言っていません」と回答したらしい。
信頼した人に、嘘をつかれるのは、堪える。
もう4月からずっと出勤できていないから、もうすぐ退職する。
労働相談では「馬鹿正直ですね」と半ば笑われた。みんな、ちゃんと報告しないんだね。
社内の相談先の方には、こう言われた。
「うたりさんは、まっすぐで正直だ。それがいいところです。ものすごく生きづらいだろうな。でも直せなんて言えないよ」
ほんとに好きだったんだ、あそこで働くこと。
でも、悲しい結果になった。全部、新型コロナウイルスがあぶりだした。
そう、悪い面も、……いい面も。
この時勢で、リモートワークを取り入れようという流れの作れないところは、どうなのだろうと思う。人と人が直接会って会話することは、とても贅沢なことになってしまった。
でも。
人の命に関わる非常事態で、自分の会社の従業員を守るための施策を取ろうとしないのは、どうして?
ものすごく頑張って、半年くらい話し合いを続けたのだが、ダメだった。辞めることが残念で、残念で、仕方がない。
でも、辞めても私、そこの商品のファンで、い続ける。
これが、私の失敗……というか、痛かった経験。
でもね、この流れがあったからこそ、私は今漫画に向き合えている。
そして、息子の不登校(という名前は嫌いだけど)の対応にも時間を取れる。
ここ3ヶ月弱、がむしゃらに漫画を描いてきた。自分で言うのはバカみたいだが、「漫画を書く筋力」がつきはじめた。と思う。
ずっと、向き合うことを、
向き合って挑戦して、失敗することを、避けてきた夢。
オリジナル漫画の提案はまだ通っていないけれど、昨年夏からは出版社の漫画担当の方が、春からはプロダクションの担当の方が、案を見てくれるようになった。そして、海外の漫画の写植のお仕事。動画漫画の作画。
これから楽しみなことがいっぱいある。
ものすごく辛くて、泣けて仕方のない日もたくさんあった。
それでも、台風が来て、私の土地は強制的にまっさらになった。
だからこそ、今頑張れているんだよ。
昨年の作画の動画漫画(ファウストの劇薬さま)はこれで、
今は下描き無しで線画のみ(1ページ3~40分かかる)がこんな感じ。(オリジナル漫画 #ヤマブキさん より)
漫画筋力、鍛えられてるよ!まだまだだけれど、数ヶ月前よりはずっと!
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人は、守らなければならないものがある。そして、それは人により異なる、私の守るものと他人の守るものが違っても、お互いそれは間違いではないとも思う。
私はでも、自分で自分を許せなくなるような……もしくはその感覚さえ麻痺させないと生きていけないような生き方は、選べない。
上司はね、私にとっては、「私にとっては」ね、残念な選択肢をとった。仕方がない。彼女の守るものが、それだったのだから。
私はただ、嘘だけはつかないでほしかった。それだけだった。
お世話になったから、もう会うことは無いけれど、幸せに生きてほしい。
だが逆に、彼女がその選択をしたからこそ、私にこの環境が与えられたのかと思うと、皮肉にも「ありがとう」と思ってしまうのだ。
みんな、この閉塞した状況に、悲鳴をあげている。
閉じられた中で、自分の意思と関係なく、変わらざるを得ないのは、痛い。辛い。
でもきっと、生き残れば、何か得られる。
そうだといいな。そう祈っている。
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あ、そうそう。
たまたま広告で見かけて「楽しそう!」と思って応募したシニアオーディション、2次に進んだのだ!
ちゃんと楽しんで、受けてくるつもり。
もし受かったとしたら結構な受講料がかかるとは思うのですが、ニューワールドだよね。
子供の頃も窮屈で、大人になっても大変だけれど、中年は楽しい。
少なくとも私は。
だからもし今、若いあなたが苦しいとしたら、中年になって楽しくなってきた人間もいるんだなと、記憶の片隅に置いておいてくれないかな。
確約はできないけれど、もしかしたらこの先のあなたにも、苦しいでも楽しい!って思える何かが待っているかもしれない。
(でも今の苦しみを何がなんでも耐えろって話ではないの。そこから抜け出せる道が、見つかるように、ただただ無責任に願う)
人生ってさ、痛くて美味しくて、綺麗で、愛おしいのだ。
面白かったらぜひハートを!