数え役満フルハウス

「病院」という場所には「待つ」ことがつきものだ。
それをわかっているので我慢をするが、たまに限度を超えることがある。
これは、我慢ができなかったある患者の独白だ。

ある患者、つまり私。別の患者に彼と共通の知り合い(という名の患者)が恋に関する悩みを抱えている、と聞かされた。解決してあげたいから一緒に話し合おう、と声をかけられた。
マスクの下の私の顔は引きつっている。

ツイッターでフォロワーが恋バナをしているのは「あらあらまあまあ」などと言いながら親戚のおばさん顔ができるが、入院中だ。他人のことを気にする余裕があるものか、と。

不幸なことに院内一階の自販機コーナーでジュースを物色している時に連絡がきた。
『外のベンチで待ってます』
寒いやんけ絶対。行きたくねーよ。
しかし断れないのが私の弱さ。外に出てみたが。
おらんやんけ。
数分うろうろしていると彼が来た。誰かと電話をしながら、座って待てというジェスチャーをされたのでベンチに座って待ったが、30分近く経っても通話が終わらない。
寒さと胃痛とイライラが限界を迎えたわたくし、
『すみません、気分悪いので病棟戻りますね』
と打ったスマホ画面を見せた。
彼、通話したまま手でOKサインを作り、私が立ち去るのを見送った。

はっ倒すぞお前。

人待たせといて通話止めんて何やねんお前。
健康な人がこれをしたら常識のない人だと思われそうな行動、
そうじゃない人がやったら「病気言い訳にしても許されねーからな」と怒られていい案件だと思う。

我慢しなければならない「待ち」と我慢できない、というかしなくていい「待ち」。
こういう病棟には両方あるので見極めが難しい。
私は今回のことは後者だと思っている。
悩んでいるらしい共通の知り合いには悪いと1グラムほどの気持ちを持ったが、私今それどころじゃないので。

胃が痛い。今日も頓服薬を飲まないとやってられない。