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五右衛門のお風呂

 ”まのいいりょうし”を屋号に掲げる私たちは 常々’まのいい暮らし’について考えている。
 うちのお風呂は 朝までぬくい。
 夏なら追い焚き無しで朝風呂を楽しめるレベルで ぬくい。
 冬でも 洗濯物をちょっと手洗いしたい時に丁度有り難く ぬくい。
 この抜群の保温力を誇るのは 我が家自慢、手製の五右衛門風呂にござる。
 築100年位と予想される古民家を 自分たちで改装しながら住んでいる我が家であるが、この風呂場はウチで一番の映えスポットだ。
 なぜ 令和の時代に薪で焚く風呂を選んだかと言うと、
茅葺き屋根のお家に暮らす まのいいソウルファミリーのお宅で五右衛門風呂を頂いた時に "お湯"というものに非常に感動し、その気持ちよさが忘れられず、「こんなお湯でわたしも人をもてなしたい」という思いから 薪風呂を新設するに至った。

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 既存の風呂場を解体し 風呂釜を購入し レンガやブロックで炉を組み シーグラスで釜の周りを装飾し シャワーや自作のステンドグラスも設置した。
 さっくりと書いたが、工事には二年ほどかかった。
 愛着が沸かないはずがない大作である。

 薪で沸かした湯というのは、電気などで沸かした湯と比べると、時間をかけてゆっくり温めた水の味わいが深い。お湯に柔らかさと、’簡単には冷めないぞ!’という意志を感じる。
 風呂に入るタイミングも、火の具合で感触が大きく違ってくる。
アッツアツの高火、堅実な熾火、釜の蓄熱を味わう火が消えた後。
 私が最も好きなのは、高火タイムだ。
 まだ少しぬるいかな、くらいの温まり中に入り、浸かっている間にどんどん温度が上がるというタイミング。真下に燃え盛る火があるのを直に体で受ける。これがもう、たまらなく気持ち良い。遠赤外線なのか何なのか、きっとこのパワーの正式な名称があるのだとは思うが、
私はこれを「直火アタック」と呼んでいる。 
 煙道に当たる部分は特に釜が熱くなる。そこに腰やら背やらを当ててもたれて入ると、これはもう、施術である。
 ”贅沢”という言葉が心身に染み込んでいく。
 直火アタックは名の通り、けっこうくらう。ほろ酔いで入ったりすると、惨敗に見舞われる。どんどん熱くなるので、水を足してぬるくしてまた熱くなるのを味わう。水も山から引いている天然岩清水なので、この水をドバドバ足して、ゴクゴク飲んで、脱衣場の扇風機を回して風を送り込んだりしながら、「熱すぎ」にならない快適環境で ゆっくり じっくり楽しむ。
 湯舟に浸かっていると、その日1日を賞賛されたように感じ、非常に穏やかでハッピーな気持ちを頂く。
 毎日お風呂が楽しみでしかたがない。

 きっと皆さんお察しされている通り、この風呂は非常に手間がかかる。
 薪を集め(←ナニってカニってこれが本当に大変!)、火を焚き、何度か様子を見て薪をくべ、入れる温度になるまで時間を要し、釜も鉄製なので本当は毎日最後に湯を抜いて、しっかり水気を拭き取らなければ、すぐに錆びてしまう。
(※最近はセイタカアワダチソウで薬草風呂を愛用しており、3日間同じ湯を繰り返し煎じる戦法なので、サビ < 薬効 を選択しているが。)
 ここまでの手間を持ってしても、
五右衛門風呂にして良かった! 最高! 人生が豊か!
と、メリットしか脳裏に浮かばない。
 私は、中古車を買う時も家を借りる時も、仲介の入らない個人直結やりとりがめっぽう好みなのだが、
 自分で集めた焚き木に 火を付け 湯が沸く 
という実にダイレクトで当たり前なエネルギーの利用法が
シンプルで強くて、
大きく心を満たしている気がする。

完成直後


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