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君と僕と、ちっさいおっさん。



それは、友人のある一言から始まった。


『マスクって、正直興奮するよね。』


コロナ禍に際し、マスク着用が常識となった現代社会に向けて放たれた言葉である。


ここまでは、まぁ、分からんでもなかった。

マスク姿でキスをするVOGUEの表紙には、私も胸を打たれたものです。


しかし、友人の言葉はまだ続きがあった。


『俺ね、夢があるんだわ。』

うんうん。

『ガスマスク越しに好きな人の息を吸いたい。』

うん?

『微生物って居るじゃん。』

居るね

『俺らの身体の中にも』

そうだね

『手を繋いでもキスしても、居るじゃん。』

あー…たぶん居るね

『それって彼女と俺の間にちっさいおっさんが混ざってるみたいなもんじゃん。』

…ふむ。

『彼女と俺とちっさいおっさんで手を繋いでるようなもんじゃん。』

…なるほど。

『だからさ、マスクとかフィルター越しに吸う息こそが純粋な彼女なんだよ。』

はいはいはい

『残念ながら俺の中のちっさいおっさんを消す術は無いけれど、それでも純粋な彼女を迎えることは出来る。』

……

『マスク万歳!!!』



私は何を聞かされているんだろう(´・ω・`)



その後、彼のマスクLOVE談義は小一時間続いた。


内心「とっととAmaz⚪︎nでガスマスクポチって来いよ」だった。

3回くらいそう言った。


『でも、正直邪魔されてることにも興奮する』とか言い出したあたりで諦めた。



諦めたら、私の中の心境に変化が起きた。


「フェチ…羨ましい」


対象がなんであれ、そこまで心震わせるものを持ち、それを把握してるって最強だよなぁ…と。

夢や希望を持ってる人と同じ輝きを感じる。

やはり、それは守るべきものを持っている強さというか。
「身を滅ぼしてでも貫きたい意志」に魅力を感じるのだと思う。


ほぼほぼヒーロー。


だから、こんな変態とも友人関係が続いてるんだろうなぁ。

って言ったら、『お前もそれなりだよ』と言われた。

やめてくれ。


でも、感受性の乏しくなった現代人にこそ、フェチズムって必要なのかも知れないや。

心が震えないと、人は弱る。

「死んでない」ではなく「生きる」者であるには、必要不可欠な要素かも知れない。


なんか、こう、ディープな下ネタを語り合う会とかしたい気持ち。


色々と言ったけれど、正直マスク趣味はセクシーだと思ったよ。




ありがとう、だいすき。