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『表現者クライテリオン』巻頭コラム∶鳥兜

定期購読している『表現者クライテリオン』の、2023年3月号が届いた。
いつも、巻頭コラムの「鳥兜」を楽しみにしている。
なにせ、初めてこの雑誌を買った2020年7月号の「鳥兜」の初っ端が、「単に死んでいないだけの人々」に送る という見出し!書き出しの一文にもほれぼれする。

一律「接触八割削減」による緊急事態宣言が解除に向かなか、今度は、「ソーシャルディスタンス」による「新しい生活様式」である。なるほど、彼らは「コロナウィルス」のことは舐めていないのかもしれない。が、しかし「人間」の生き方を舐めていることだけは間違いない。
(以上引用)

巻頭の3ページに、すっかり心を奪われてしまった。

そして2023年3月号。
特集タイトルは『SDGs/AI批判序説 スローガンに群がる愚』。
巻頭コラム「鳥兜」の書き出しは

「AI」という名のルサンチマン
 近代日本の歴史はスローガンで溢れかえっている。西洋化と共に、自らの生き方(型)と、その足元を支える伝統を見失ってしまった日本人は、その穴を様々なる意匠で埋め合わせてきたのだった。曰く、「文明開化」「大東亜共栄圏」「戦後民主主義」「平和主義」……。
(以上引用)

結びは
 我が国は、「優れた中央集権制」の確立が生存競争の行方を決める時代に適応できるだろうか。先行きが暗いと思わされるのは、日本のエリートが首相を筆頭に「重要な決定を先送りにし、あるいは他国に委ねながら、下らないことに要らぬ口を挟んで人気取りに走る」ことを習慣化してしまっているからだ。「人口の高齢化」よりも「エリートの幼稚化」のほうが何倍も恐ろしいのだということに、我々は気づかなくてはならない。
(以上引用)

深い教養に裏打ちされた明晰な思考で現代社会を分析し、世に阿らずはっきりと真実を発言してくれる人がいて、そしてそれを出版してくれる会社がある。この鬱屈した世の中で、救われる思いで『表現者クライテリオン』を読み進めている。


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