見出し画像

埼玉県虐待禁止条例改正案について自民党埼玉県議連に問う

自民党埼玉県議団の勇み足には閉口する。しかし彼らは、取り下げはしたものの「手続きや内容に瑕疵はなかった」と言い張っているらしい。

しかしこれは単なる言葉足らずで済む問題ではない。真剣に子どもの育ちに向き合ったことのある議員がこの中にどれほどいただろうか。
ばかばかしくてまともに相手にする気にもなれないのが本当だが、そういって放置していたら条例として成立してしまっただろう。
こうやって、ひとつひとつ取り上げて批判していかなければいけないとは、油断も隙もない。

子どもたちを虐待から守る必要があるのは当然のことだが、何をもって虐待というのか。
子育てとは埼玉県自民県議団が考えるほど単純なものではない。
だからこそ悩むのだ。
ああ、記事を書き始めて既に後悔している。太平洋の水を飲み始めてしまったような気持ちになっている。
仕方がないからひとつだけに絞ろう。百歩譲って、子どもの小さな成功体験の積み重ねの意義や生き生きした生活、自分で判断して生きていく素地を作ることの意義についてはここでは触れない(本当はそこのところはものすごく大切なのだけれども)。本当の虐待とは、本当のネグレクトとはいかなるものであるかにも触れない(ネグレクトの起こる状況は様々だ。それとすぐにはわからないところにネグレクトが存在することだってある)。

それらに触れていると話の焦点がぶれて広がりすぎてしまうから。


単純すぎ、雑駁に過ぎてまともに相手にする気になれない

育児介護休業法というものがある。
正式名称は、
『育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律』
という。
下のリンクは、厚生労働省パンフレット『育児・介護休業法のあらまし』最新版。

https://www.mhlw.go.jp/content/11909000/000355354.pdf

令和4年10月1日からは出生時育児休業が新たに制度導入され、男性が育児休業を取りやすくなったという触れ込みで広く知られるようになったが、育児や介護を行う者にとって、使える制度は休業だけではない。
この中に、 育児・介護のための深夜業の制限 というものがある。
以下、該当ページを少し文面コピーして載せてみる。

Ⅷ 深夜業の制限 Ⅷ-1 育児を行う労働者の深夜業の制限1
(第19条第1項)
○ 事業主は、小学校就学の始期に達するまでの子を養育する労働者が、その子を養育するために請求した場合においては、事業の正常な運営を妨げる場合を除き、午後10時から午前5時までの間(以下「深夜」といいます。)において労働させてはなりません。
○ ただし、次のような労働者は請求できません。

① その事業主に継続して雇用された期間が1年に満たない労働者
② 深夜においてその子を常態として保育できる同居の家族がいる労働者
③ 1週間の所定労働日数が2日以下の労働者
④ 所定労働時間の全部が深夜にある労働者

(1) 深夜業の制限は、あらかじめ制度が導入され、就業規則などに記載されるべきものです(指針第2の5(1))。
(2) 日々雇い入れられる者は請求できませんが、期間を定めて雇用される者は請求できます。
(3) 「事業の正常な運営を妨げる場合」に該当するか否かは、その労働者の所属する事業所を基準として、その労働者の担当する作業の内容、作業の繁閑、代替要員の配置の難易等諸般の事情を考慮して客観的に判断することとなります。
(4) 所定外労働の延長として深夜に及ぶことになった場合にも、請求できます。
(5) 「深夜においてその子を常態として保育できる同居の家族」とは、16歳以上の同居の家族であって、
 ① 深夜に就業していないこと(深夜における就業日数が1か月について3 日以下の場合を含みます。)。
 ② 負傷、疾病等により子の保育が困難な状態でないこと。
 ③ 6週間(多胎妊娠の場合は14週間)以内に出産する予定であるか、又は産後8週間を経過しない者でないこと。
のいずれにも該当する者をいいます(則第60条)。
(6) 「所定労働時間の全部が深夜にある労働者」とは、労働契約上労働すべき時間として定められている時間のすべてが午後10時~午前5時の間にある労働者をいいます。
ポイント解説
★ パートタイマーやアルバイトの方についても、日々雇い入れられる者や引き続き雇用された期間が1年に満たない労働者など、制度が適用にならない場合に該当しない限り、深夜業の制限の権利が認められます。
★ 事業主は、労働者が深夜業の制限を請求した場合においては、労働者が請求どおりに深夜業の制限を受けられるように、通常考えられる相当の努力をすべきものです。 事業主には、深夜業をしなくてもよいとする代わりに同等の昼間勤務を確保することまでは義務づけられていませんが、労働者本人が昼間勤務での就業を希望しており、かつ代わりに就業させることができる同職種の昼間勤務が十分あるにもかかわらず、深夜業の制限を請求した労働者を昼間勤務に就けさせず懲罰的に無給で休業させるといった取扱いは、深夜業の制限の制度の利用を躊躇させるものであり、不利益取扱いに当たるおそれがあります。 

以上コピー

小学校就学の始期に達するまでの子の育児を行うための深夜業の制限を「請求できない」とされる要件の中には、 深夜においてその子を常態として保育できる同居の家族がいる労働者
というのがある。
それは具体的には、『16歳以上の同居の家族であって…』と定義づけられているのだが。
自民党埼玉県議団の皆様、高校生は、ここでいう16歳以上の同居の家族に当てはまるのではないか?

実際には、この、深夜業の制限を請求することができない条件は、育児や介護をしている者にとっては過酷だと私個人としては思う。
ただ、事実としては、厚生労働省のパンフレットではこのように定義づけられた解説がある。
実際の、 育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律 の条文では
当該請求に係る深夜において、常態として当該子を保育することができる当該子の同居の家族その他の厚生労働省令で定める者がいる場合における当該労働者

という書き方になっており、施行規則では
(法第十九条第一項第二号の厚生労働省令で定める者)

第六十条 法第十九条第一項第二号の厚生労働省令で定める者は、同項の規定による請求に係る子の十六歳以上の同居の家族(法第二条第五号の家族をいう。)であって、次の各号のいずれにも該当する者とする。

 法第十九条第一項の深夜(以下「深夜」という。)において就業していない者(深夜における就業日数が一月について三日以下の者を含む。)であること。

 負傷、疾病又は身体上若しくは精神上の障害により請求に係る子を保育することが困難な状態にある者でないこと。

 六週間(多胎妊娠の場合にあっては、十四週間)以内に出産する予定であるか又は産後八週間を経過しない者でないこと。

とある。


いかがであろうか。

自民党埼玉県議団の皆様は、育児介護休業法や施行規則との整合性についてはどのように考えて、「瑕疵がない」と言われたのだろうか。
育児介護休業法や同施行規則は虐待であるとの問題視であるならば、そうしなくてもよい施策を講じ、法整備をするために国会に働きかけ、また、県としては親たちが心から安心して子どもを完全に保護できるよう県の福祉政策を講ずるのが先ではないか。
他県では「女性活躍(この掛け声も、いろいろ考えるところはあるが)」のスローガンのもとに動いているらしき施策を、埼玉県だけが逆行させるというなら、少なくとも当事者各位に不利益が生じないように充分なことができていてこそ、かと思われるが。

いかがであろうか。
もっとほかに、しなければならない喫緊の課題があるのではないか。
条例提出とは、もっとよく考えてするものではないのか。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?