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10年ぶりのソウル(2)

ソウルスカイとピョルマダン図書館

 ソウルの旅3日目は、主に江南(カンナム)を歩きました。今回の旅行で私が特に見たかったモノがあるからです。ソウルの流行の中心が漢江の南、つまりカンナム地区に移ってからずいぶん経ちますが、私たちは年齢のせいもあるのか、今までのソウル旅行では、キラキラしたカンナムとはあまり縁がありませんでした。今回も私たちはカンナムの洒落たショッピング・ストリートなどを目指したわけではありません。建築ファンである私がめざしたのは、5年前に蚕室(チャムシル)に完成した超高層ビル「ロッテワールドタワー」でした。蚕室にある「ロッテワールド」は、古くからの韓流ドラマのファンにはおなじみの場所ですね。ここでいくつものドラマが撮影されました。この超高層ビルは、その「ロッテワールド」の隣に建設されました。高さは554メートル。今年は、我が大阪の「あべのハルカス」がついに日本一の座を明け渡したと話題になりましたが、たかだか300メートル台の攻防です。日本は超高層ビルの世界でも、世界の後進国になってしまいました。まあ、地震大国ですから仕方がないことですが。

 では、その「ロッテワールドタワー」がどれだけ高いのかというと、世界ランキングでは次のようになります。
 1位、ドバイの「ブルジュ・ハリファ」 828メートル 
 2位、中国上海の「上海タワー」 632メートル
 3位 サウジアラビアの「メッカ・ロイヤル・クロック・タワー」 601メートル
 4位 中国深圳の「平安国際金融中心」 600メートル
 5位 韓国ソウルの「ロッテワールドタワー」 554メートル

 なんとアジアばかりですね。この他にもアジアにはクアラルンプールや台北などにワールドクラスの超高層ビルがあります。中国国内には他にも各地に超高層ビルがたくさんある。いずれにしても、ソウルの「ロッテワールドタワー」は世界で5番目に高い。かつて上った事のある台北の101ビルよりも高いということで、高層ビルマニアでもある私は、竣工当初からぜひとも行きたい場所でした。今回ようやく願いが叶いました。というわけで「ロッテワールドタワー」、愛称は「ソウルスカイ」に上がってきました。ソウルと言えば、かつて、南山の頂上にある「Nソウルタワー」からの展望を楽しんだことがありますが、カンナムから見下ろすソウルの街はとても新鮮でした。眼下にロッテワールド、漢江の対岸に遠く南山が小さく見え、すぐ近くに「オリンピック公園」を見下ろすことができました。1988年に、ここで五輪が開催されたことがきっかけで、それまでは中年男性の「キーセン観光」の目的地だと思われていた韓国が、女性も行ける観光地に変わってきたのです。若い人には想像もつかないでしょうね。感慨深いものがあります。でも、これだけの高所から眺めたせいか、ソウル五輪はこんなに小さいスタジアムで開催されたのかと意外な気がしました。でも、確かにここから歴史が動いたんです。もしソウルが二度目の五輪を主催するとしても、主会場はもうここではないでしょうが、東京のような騒動にならないようにしてもらいたいですね。

 私たちが次に向かったのは、蚕室から地下鉄2号線で三つ目の三成という駅を下車したところにあるCOEX(コエックスモール)でした。いくつもの高層ビルとショッピングセンターのあるこの複合施設は10年前にはすでに存在していました。有名な映画「猟奇的な彼女」のロケ地のひとつがここでしたから。今回、私たち、特に私が見たかったのは、5年前にこのコエックスの中にできた「ピョルマダン図書館」でした。写真で見た図書館の姿があまりに衝撃的だったからです。本の壁、あるいは本の断崖、本の丘、なんと形容すればいいんでしょうか。安藤忠雄設計の司馬遼太郎記念館を遙かに超える規模の本の聖地に見えました。早くこの目で見たい。ここもまた、数年前から、私の憧れの場所だったのです。まあ、言葉で説明するよりも、写真を見ていただく方がいいですね。以下の写真をご覧ください。近所にこんな場所があれば、私は毎日でも通うのになと思いました。なお、「ピョルマダン」というのは「星の庭」という意味です。この図書館は読むだけで、5万冊あるという蔵書の貸出しはしていないということでした。でも、これだけ観光客が多いと、ここでゆっくり読書を楽しむというわけにはいきませんね。私たちも写真を何枚も撮っただけで、肝心の本には一冊も触れずに帰ってきました。せめて喫茶店には入るんだったな。

 いったんホテルに戻ってしばらく休憩してから、ホテルを出て明洞でみつけた店で夕食をとりました。その後、地下鉄に乗ってソウル駅に出ることにしました。目的は、ソウル駅そのものではありませんでした。ニューヨークの「ハイライン」を模して、ソウル市が「ソウル路7017」をつくったのは5年前でした。線路を跨いでソウル駅を南北に貫いていた高架道路を緑の高架遊歩道としてリニューアルしたのです。名前の由来は、1970年に設置された道路を2017年に再生したからということです。遊歩道を設計したのはオランダ人の設計家だそうですが、ここもまたソウル市の都市計画の素晴らしい仕事で、今回の旅行で私が見たい場所のひとつでした。歩いてみると、日が暮れたせいか、眼下のソウル駅前の喧噪とは別世界のような静かな空間でした。イベント開催時や終末などにはとても賑わうそうです。


 

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