神須屋通信 #10
令和3年8月の出来事
0801(日)
●私はテレビドラマはほとんど見ないのだが、NHKの朝ドラと大河ドラマ、それに、NHK衛星放送の韓国歴史ドラマだけは見ることにしている。まるで、NHKの回し者みたいですね。今年の大河は渋沢栄一を主人公にした「青天を衝け」で、私は毎回楽しんで視聴しているのだが、なんと、五輪期間中は放送中止。私は五輪よりこちらを見たいんだけどな。でも、韓国歴史ドラマである「花郎」(ふぁらん)はちゃんと、いつも通り放送していた。このドラマは歴史ドラマといっても、イケメン集団を主人公にした女の子向けのドラマで、本来ならば、私のような年寄りが見る番組ではないのだが、大学時代に朝鮮史を勉強したことがある私は、当然ながら、三国時代の新羅の歴史的存在である花郎の事を知っていたので、ついつい見続けてしまった。本来、花郎というのは、日本史でいうと、聖徳太子が生まれる以前の昔に存在した、新羅王室の親衛隊だったのだが、このドラマではまるでBTSのようなボーイズグループになっている。衣装も派手で、歴史考証を無視した馬鹿馬鹿しい内容なのだが、ついつい見てしまうのはなぜだろう。この年齢なのに、私はかなりのミーハーらしい。
0803(火)
●月に2回の中国語教室に出席するために、天王寺へ出た。定年退職してから始めた中国語も、もう10年近く学んでいることになるが、なにしろ、月に2回の教室だけで、それ以外の勉強はしていないので、未だに初級レベルを脱することができない。それに、このコロナ禍で、いつになったら中国旅行ができるかもわからないので、モチベーションはあがらない。
●帰宅後、これだけは五輪中継を見ている、男子サッカーの試合をテレビ観戦した。スペインとの準決勝である。延長戦の末に、1-0で敗退。日本はよく耐えたし、勝つチャンスもあったと思うが、相手が一枚上手だったのは確かだ。銅メダルを賭けた闘いの相手は、予選リーグで一度勝っているメキシコ。でも、メキシコはスペインより強いかもしれない。
●運転免許更新のための高齢者研修の知らせが届いていた。もう、そんな年齢になったんだ。
0805(木)
●今日の大阪は、38.9度という酷暑。ほとんど家にいて、エアコンを入れていた。
●五輪陸上の男子リレー。日本は決勝に残ったが、残った中では最もタイムが遅く、別の組で走った予選敗退のアメリカよりも遅かったそうだ。このままだとメダルは難しいだろう。
●女子卓球団体も、中国の壁を破れず、銀メダル。それでも、日本はメダル総数で過去最高の40個を超えた。でも、コロナ感染者数も過去最多を更新しているので、喜びも半ば。
0806(金)
●朝、前回と同じく、近所のクリニックでファイザーワクチン2度目の接種。その後、目立った副反応なし。これで一安心。
●男子サッカーの3位決定戦は3-1でメキシコに敗戦。先取点をPKでとられたのが痛かった。でも、これが実力だろう。スピードがなく、パスの精度が低く、得点力もない。これでは世界で勝てない。
●男子陸上4×100メートルリレーも期待はしていなかったが、なんと、バトンパスをミスして失格。さすがにこれは予想していなかった。バトンパスは日本のお家芸のはずだったのに。きょうは残念な一日だった。五輪は後2日間。メダル総数は50個に届きそうだ。もちろん、史上最多。でも喜べない。コロナがあるから。
●今日は、広島原爆記念日。広島の式典で挨拶した菅首相は原稿をとばして読んだそうだ。菅首相は安倍晋三以下かもしれない。五輪とコロナで疲れていたのかもしれないが。
0807(土)
●五輪の野球、日本が金メダルをとった。また、私は、アメリカの女性陸上選手、アリソン・フェリックスをひいきにしているのだが、五輪通算11個目のメダルを獲ったというニュースは喜ばしい。
●R.A.Heinlein"The Door into Summer"読了。日本で映画化されたというので、何十年ぶりかで再読する気になった。かつては感動した作品。再読した読後感も悪くはなかったのだが、いろいろ欠点が目について、傑作とはいいがたいことがわかった。この小説の主役は、猫のピートだ。
●先月受診した人間ドックの結果が戻ってきたが、膵臓の精密検査の必要があるとあった。これでまた心配ごとが増えた。
0808(日)
●3月に亡くなった姉の初盆の法要を大阪市内のお寺でするので、暑い中、夫婦して参列。ところが、法要はたった10分で終わってしまった。それもそのはず、次の法要の順番の人たちが玄関で待っていた。それにしても、この程度なら、わざわざ暑い中来て、多額のお布施や回向料なども持ってくるんじゃなかった。
●夜、五輪の閉会式。式の途中で、今朝の男子マラソンと昨日の女子マラソンの表彰式があった。男子は札幌から東京まで移動したらしい。優勝は世界記録保持者のキプチョゲの連覇。大迫は6位入賞。今回のレースの様子を見ていると、日本選手がこれからマラソンでメダルをとることは不可能だろうとさえ思う。
●閉会式のアトラクションは、開会式以上のがっかりさせる出来だったが、映像だけで紹介された、次回のパリ様子を見られたことだけが収穫。なお、今回の東京五輪で、日本は金メダル27個、メダル総計58個の過去最多となった。
●閉会式は最後まで見なかったが、「花郎」の放送を見逃したので、家内がハングル教室の友人から借りてあったDVDで見る。ところが、DVDとNHKの放送分とは編集内容が違うようで、NHKの放送は9回目だったのに、私が見たDVDでは11話がほぼその内容になっていた。
0810(火)
●午後、暑いので出かけず、家で、ハインライン「夏への扉」の感想文を書いて、noteに投稿した。
●夜、たまたまYouTubeで山下達郎の「夏への扉」を聞いたら、これは小説そのものを歌詞にしているんだと初めて気づいた。そして、今まで謎だったところの意味が初めてわかった。リッキーなんとかいうところ。あれは、主人公の少女の名前の愛称だったんですね。今頃気づくとは。
●五輪が終わったと思ったら、今日から夏の高校野球。昨年は中止だったから、二年ぶり。無観客。
0811(水)
●世界の話題は、メッシがバルセロナからパリに移籍したこと。
0812(木)
●大井浩一「大岡信」読了。大井さんというのは元毎日新聞記者。私よりかなり若い人で、大岡さんとの関係はそう深くなかったようだが、新書版の小さな本ではあるが、素晴らしい大岡信論になっていた。大岡さんも喜んでいるだろう。なお、私は青土社版の「大岡信著作集」を持っているが、この出版に三浦雅士さんがからんでいた事を初めて知った。三浦さんは元編集者だが、私が尊敬する評論家。大岡さんも、詩人としてよりも評論家として愛読していた。
0813(金)
●午前中、いつも糖尿病の検査をしてもらっているF病院へ。人間ドックの検査結果を受けての受診。若い男の医者。問診の後、血液検査。結果、数値は正常で、人間ドックの時点でストレスかなにかがあったのだろうということになった。これで一安心。
●各地で豪雨による水害。死者も出ている。甲子園の高校野球は休み。コロナは全国で感染者2万人突破。どこまで続くのか。こちらも災害状態。
0814(土)
●久しぶりに、amazon primeで映画を2本見た。「アド・アストラ」はブラッド・ピット主演のSF映画。演技も美術も素晴らしいが、脚本がまるでB級。それに対して、期待していなかった「チャーリーズ・エンジェル」の新作が面白かった。エラ・バリンスカという長身有色の女優がなんとも魅力的だった。顔がアジア風丸顔なのに、スタイル抜群。モデル出身かな。
0815(日)
●終戦記念日。近畿は雨が止んで高校野球も再会されたが、各地で水害の報告が続く。
●午後、これも久しぶりに、スロージョギング約25分。帰宅後、昼寝。
●夜は、五輪後に再開した「青天を衝け」と「花郎」。前者はパリ編が終わり、来週からいよいよ明治。これを見ても、渋沢栄一は絶妙の時期に国外にいたことがわかる。まさに天の配剤だった。
0816(月)
●アフガニスタンがタリバンの手に落ちた。首都カーブルは、数十年前のサイゴンようになっているそうだ。アフガニスタンがかつてのベトナムのようになるとは思えない。待っているのは混乱だろう。アフガニスタンが近代国家になるにはまだまだ時間がかかると思う。多くの血が流れることのないように祈るのみ。なお、日本ではカブールと呼ぶが、国際的にはカーブルというのが正しいようだ。日本では、現地情報に詳しい人は、意識的にカーブルと言っている。私は、アフガニスタンの事は何も知らないのに、格好をつけて、カーブルと呼ぶ。イスタンブールのことを、イスタンブルと呼ぶのと同じ。つまらないトリビア知識。
0817(火)
●今日も雨。高校野球は強行開催したが、第一試合が降雨コールドになってしまった。明らかに主催者の判断ミス。選手が可哀想だ。異常気象の長雨で、何日も延期になっている事情も分かるが。
●午前中に、家内と梅田へ。阪急32番街31階にある「京月」という店でちょっと贅沢な昼食。料理もよかったが、景色が素晴らしかった。雨模様のキタの都会風景。高層ビルがずいぶん増えている。
●昼食後に、前日約束した不動産仲介会社へ。お盆休み前に頑張ってくれたようで、亡くなった姉から相続したマンションが、そこそこの値段で売れそうだというので、契約することにした。
●天王寺に出て、家内とはここで分かれて中国語教室へ。欠席者が二人いて、出席は3名のみ。突然、先生が9月は全て休講にしたいと言い出した。コロナ禍が収まらないし、緊急事態が延期されるからというのが表向きの理由だが、どうやら、中国人の若い女性である先生自身が9月にワクチン接種を受けることになって、アレルギーがあるという、自らの体調が不安なのだとわかったので、休講を了承した。
0818(水)
●今日も雨のため、高校野球中止。史上最多の延期だという。
●コロナ感染者は相変わらず増え続けている。大阪は2千人を越え、過去最多。東京は5千人越え。
0819(木)
●松岡正剛「資本主義問題」読了。千夜千冊エディションの一冊。このシリーズはもう20冊を超えているそうだが、私が読んだのはこれが7冊目。それでも、とても隅々までは読めない。知らない著者の本の紹介も多いから。まったく、なんという怪物的読書量だ。
●午後、amazon primeで無料で見られる、「シン・エヴァンゲリオン劇場版」を見た。結局、この長い物語は、庵野監督自身の深層心理における葛藤のドラマを宇宙大に拡張したものだったんですね。だからこそ、多くの若者から深い共感を得た。というのはあまりに凡庸な感想かな。私は「鉄腕アトム」や「ゴジラ」のオールド世代で、ガンダム世代でさえないのだが、東浩紀さんらの世代に大きな影響を与えたらしい、この「エヴァンゲリオン」のことは気になっていて、新シリーズの「序」「破」「Q」も、やはりamazonですでに見ていた。本当は、劇場の大きな画面で見た方がよかったんだろうが。YouTubeには、この物語の解説解読がたくさん投稿されていて、私も少し見たけれど、感心しますね。「エヴァンゲリオン学」というものがすでに存在しているようだ。将来、これで学術論文を書く人が出るかも。いや、すでに出ているのかな。
0820(金)
●千葉真一がコロナで亡くなったというニュースに驚いたが、82歳なのに、ワクチンを接種していなかったのにも驚いた。自分の健康に自信がありすぎたのか。それとも、反ワクチンの思想に毒されていたのか。
●その後、もう一人の人物の死が報道された。笑福亭仁鶴さん。85歳。長らく姿を見なかったから、 驚きはなかったが、時の流れを実感する。ラジオの深夜放送の時代から知っている関西の爆笑王だった。生の落語を聴いたことがなかったのは残念だった。
0821(土)
●久しぶりに放送された「ブラタモリ」を見る。私たち夫婦はこの番組の大ファン。今回のテーマは諏訪。ここが縄文時代の一大人口密集地だったことを知った。鍵は黒曜石と片岩にある。本当に勉強になる。地学の先生たちは「奇跡の番組」と呼んでいるそうだ。まさに、タモリがいたから成立する番組。
0822(日)
●横浜市長選は、野党候補が勝利。分裂選挙になった自民党候補敗退。菅首相にどんな影響があるかが関心事。
●今日は家内の71回目の誕生日。子供も孫もいない夫婦なので、普段は互いの年齢を忘れているが、そんな歳になったのか。現在は、姉の死の後始末で忙しいが、そろそろ、自分たちが死んだ後のことも考えないといけない。
0824(火)
●与那覇潤「平成史」読了。歴史家としては最後の著作だという。父を亡くした子供の時代。全てが薄っぺらいフェイクの時代、平成。しかし著者は、通史が書ける最後の時代だったかもしれないと言う。歴史家の仕事に絶望した著者らしい感想。著者が加藤典洋さんを高く評価していることが記憶に残った。そういえば、加藤さんの文庫の解説を書いていたなあ。私は、「中国化する日本」以来の与那覇さんのファンで、それだけに、彼が鬱病になって大学も辞めた時には驚きもし心配もしたが、立派に回復されたようで安心した。もう、歴史家は卒業らしいが、これからの日本の言論界を支える人物の一人だと思う。期待している。
●夜、パラリンピック開会式。テレビの中継を見なかったが、オリンピックの開会式よりはずっと良かったという感想がネットで流れてきた。皮肉なものだ。コロナの感染者数が増加を続けている現在、諸手をあげて歓迎できないが、無事に閉幕を迎えることを願う。
0826(木)
●午後、断続的に読書。文藝春秋掲載の、今期芥川賞受賞作の一作、石沢麻依「貝に続く場所にて」読了。これが処女作だというが、かなり完成された高度な構成と文体の作品だった。あまり読みやすいとは言えない硬質な文体ではあるが、この内容にふさわしいと言えなくもない。まあ、好みの分かれるところだろう。川上弘美さんは気に入らなかったようだが、他の選考委員の作家たちには、おおむね好評だったようだ。この小説の舞台である、ドイツのゲッティンゲンという街のことを、おかげで知ることができた。ドイツ有数の大学がある小さな歴史のある街。ちゃんとYouTubeに映像があった。便利だ。作中に出てくる太陽系のモニュメントのことは本当にあるのかどうかわからなかったが。東日本大震災のことをベタに描かず、異国の地を舞台に幻想として描いたことは、小説にしかできないことである。寺田寅彦が登場するなど、知的な意匠もいい。元SF少年である私は、こういう小説は嫌いではない。次の作品も読んでみたいと思った。
●無観客で開催されている高校野球は、ベスト4が全て近畿の学校になった。これは史上初のことらしい。ただし、大阪代表は含まず。事情通に言わせると、これは長雨の影響だろうと言う。近畿のチームは延期のためのコンディション調整に有利だったということ。プロ野球でも、現在首位を行く、オリックスとタイガースがこのまま優勝したら、今年の野球界は関西奇跡の年になる。(8月末時点でオリックスは首位のまま。タイガースは首位から転落してしまった。)
0827(金)
●暑い夏が戻ってきている。
●芥川賞のもう一作、李琴峰「彼岸花が咲く島」読了。著者は台湾出身の女性。日本語を母語としていない人がこれだけの日本語を書けることにまず感嘆する。ドナルド・キーンやリービ英雄クラスの才能だ。小説そのものの世界には入っていけなかったが、日本語、中国語、沖縄方言を足したようなクレオール言語を作り出すなど、知的な冒険と構成に感心した。選考委員の松浦さんが書いていたように、この島の謎解き部分など、小説としては、実に稚拙な面はあるが、この文学的冒険が欠点を打ち消している。この人については、エッセーや評論の方を今後読んでいきたいと思った。ちなみに、私は、批評家的な資質を持つ作家を偏愛している。三島由紀夫に関しても、開高健などは、「一に批評家、二に劇作家、三四がなくて、五に小説家」などと言っていたものだ。
0828(土)
●視覚障害者のトライアスロンの中継をテレビで初めてじっくり見た。ガイドと一緒に泳ぎ、走る姿を見て、感動してしまった。普段見ないスポーツを見るのも楽しい。これも、パラリンピックの効用か。
●録画してあった、NHKの「没後30年、今夜はとことん三島由紀夫」を最後まで見た。三島については、特に新しい発見はなかったけれど、ゲストの一人、ヤマザキマリさんの話がとても面白かった。三島が自決した時、私は大学生で、事件を初めて知った時に最初に思ったのは、「豊穣の海」は未完のまま終わるのかということだった。あの事件以前も以後も、三島由起夫は私の大切な作家の一人であり続けているが、若い世代にもファンが多いようなのはうれしい。
0829(日)
●最近はコロナ関連の内向きの話題一色だが、海外のニュースで気になっていることとして、アフガニスタン関連のニュースの他に、中国の女優ヴィッキー・チャオのことがある。最近、消息不明になっていると、イギリスのBBCなども採り上げている。彼女は、チャン・ツイイーと並んで、私がひいきにしている女優で、女優の他にも監督やプロデューサーとしての実績をあげていて、中国を代表する女性なのだが、今回の容疑は何かよくわからない。脱税なのか政治的なことなのか。とにかく、無事でいて、また元気な姿を見せてくれることを願う。
●智辯決戦になった高校野球決勝は、和歌山の智辯が勝った。
●夜は、「青天を衝け」と「花郎」。のつもりだったのだが、なんと、「青天」がパラリンピック放送のためにまたお休み。こんなに休んでばっかりじゃ、30回くらいで終わってしまうのじゃないか。前半生だけで、明治後のお話はほとんどカットということか。
0831(火)
●午後2時から不動産仲介会社で、買主の不動産会社の人と初めて会う。契約書を交換した。仲介手数料の半額を渡し、売価の手付金を受け取った。マンションの正式引き渡しは、当初の予定より早く、9月10日になった。家財道具などは、そのまま買主に処分してもらうことになる。姉の死からまだ半年。早すぎるかなとも思うが、私たちが住むわけではないので、誰か、若い夫婦にでも住んでもらえればと思う。このコロナ禍の影響で、不動産市場の動きは鈍いらしいが。
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