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Nintendo Switch「自作」行為に注意!

自前修理も同じだよ!

相変わらずNintendo Switchの品薄状態が続いています。
一時期よりは幾分マシになったとはいえ、それでも量販店に潤沢に並ぶほど流通状態が良くなったわけでもなく、中古品が定価以上で売られたり転売行為が横行する状況も相変わらずです。
そしてSwitchが故障したとき、任天堂に里帰りさせて修理して貰おうにも、これもかなり時間がかかっているそうです。

そんなんならパーツを取り寄せて自分で作ったり、部品を交換した方がええんとちゃうか?と思う人もいるかと思います。

https://gamemo.confidence-media.jp/20200416nintendo_switch_selfmake.html

そんなことを考える人はやはりいるようで、海外で部品単位で取り寄せてSwitchを作ってしまう猛者が現れたかと思ったら、その情報をもとに国内でも実現する人が現れたようです。

技術的には大変興味深い話です。ワシも本音を言えばやってみたい。めっちゃやりたい!!
しかしこの行為はいろいろと問題をはらんでいるように思います。
今回は考えられる問題点についてまとめてみようと思います。

流通してる“補修用部品”とは

ネットを検索するとNintendo Switchの補修用部品と謳われた部品が売られているのを見つけることが出来ます。
これは当然のことながら任天堂が正規に出荷しユーザー向けに提供している部品ではありません。
第三者の業者が製造した非正規互換品というべき代物であると思います(正規の部品製造業者が横流ししたもの……なんてことはさすがにあるまい?)
フラットケーブル類、ロゴが付いていないカバー、液晶パネルなどといった部品は概ねこうした非正規互換品であると思われます。

そして肝心のメインボードについては、ソフトウェア(OS)を書き込む都合上、非正規互換品を作って流通させるのは非常に難しいのでは?と感じます。
これは本体のシリアルナンバーを記録する必要があり、当然そのシリアルは任天堂が管理しているわけですから、適当なシリアルナンバーを記録したりするとゲームソフト側で動作させない、ニンテンドーeストアのアクセスを遮断される等の問題が生じる可能性があります(これについては後述)
そのため実際に流通しているメインボードは故障したSwitchからもぎ取った中古再生品が多いのではないかと推測しています。
中古再生品であればシリアルナンバーやソフトウェアの問題はひとまずクリアできるわけです。

一方、ソフトウェアが記録されているeMMCのバックアップを行えるハックも開拓されている(SwitchのメインプロセッサがNVIDIA Tegra X1をベースにしており、Tegraの手法を応用していると思われます)とのことなので、上記についてはあくまでワシの推測にすぎず、実際はそこはうまく回避する術が発見されていたりもするかも知れませんが。

非正規Switchで起こる可能性がある問題

任天堂が正規に出荷したものではない、非正規互換品などで組まれたSwitch(非正規Switchと呼びます)はいろいろと問題を抱えることが想定されます。

その1:任天堂の保証は当然得られない
当たり前のことですが正規のSwitchではありませんから任天堂のサポートは一切得られません。
ゲームソフトが正常に動作しない、正規のJoy-Conを接続できない、映像出力がおかしいなどの問題が生じたとしても、任天堂は知ったことではないわけです。

その2:シリアル不一致で弾かれる?
シリアルナンバーについては前述していますが、任天堂が管理しているシリアルナンバーに合致していないものが記録されている場合、正規のものではないとして動作を制限するということは起こりえるかも知れません。
カートリッジでゲームを読み込ませようとしても立ち上がらない、ニンテンドーeストアにアクセスしようとしても遮断されたり一部動作が制限されるなどの可能性は起こりえるものと考えられますし、現状はなくても今後そうしたチェック機構が盛り込まれる可能性は否定できません。
そうした問題を回避するため、正規出荷品からメインボードを抜き取って転用しているのでは?と推測はしているのですが。

シリアルナンバーは本体に記録されている。
(写真はSwitch Liteより。)

その3:部品が正しく動作するとは限らない
正規の部品と同じ形をしていても、全く同じ動作をするという保証はありません。
具体的には操作感度が鈍い、音が籠もってるなど、正規品より性能面で劣るという可能性は否定できないのです。
また一見まともに動いているように見えて、思わぬところで変な挙動を示すという可能性もあります。

そもそも電波法に抵触するのでは?

部品単位で買ってきたSwitchを自分で組み立てるという行為についても問題をはらんでいるものと考えます。
というのも、そもそもそれは電波法に抵触するのでは?という話です。

Switchはインターネットへの接続や他の本体との近接通信、Joy-Conなどのコントローラとのワイヤレス接続には無線電波を用いています。
つまりNintendo Switchは可搬型の無線機でもあるわけです。

電波法上、無線機である以上免許を持った者が免許を受けた機器で通信を行わなくてはいけないわけですが、大抵の人はそのような免許を持っていないはずです。
これはWi-Fiなどの機器は「免許を要しない無線局」(小電力データ通信システム)に該当し、使用者が無線従事者でなくても使用することが出来るためです。
しかし無線機側はちゃんとした法的な規則があります。
Switchはゲーム機ですがWi-Fiなどの電波を発射する機能を有することから特定無線設備に分類され、電波法上の技術基準に適合していることを証明する手続き(技術基準適合証明)を経て、包括的に無線機としての免許を与えられたのと同様の扱いになっています。
ちなみにこれは携帯電話も同様ですが、携帯電話は更に電気通信事業法の技術基準適合認定という手続きも経ています。
これらの手続きを経ていることを証明するため、いわゆる「技適マーク」というものが機器に記載されます。
近年は電磁的表示が認められるようになったため、Switchでも設定の「認証表示」のなかで技適マークとそれに関連する工事設計認証の番号が記載されているわけです。

Nintendo Switch Liteの技適等の認証表示

技適マークを受けた機器は改造をしてはいけないとなっています。
また改造を防止するため安易に筐体を開けられないようにしなければいけないともされています。
つまりメーカーなどの認定を受けた機関以外で筐体を開けてしまうとその時点で電波法の無線設備規則に抵触してしまうというわけです。

非正規互換品のパーツが本当に純正パーツと同様の性能を持っているか証明あるいは保証する術はなく、また本来開けてはいけない筐体を開けた状態で電波の送受信に関わる部分(つまりアンテナ等)を触るわけですから、これは“無線機の改造”にあたる可能性が極めて高いと言えます。
その前にユーザーが勝手にそんなとこを触ることが法的には抵触してしまってるわけですが。
また任天堂が正規に認めた部品ではないことから、技適の手続きで提出した資料と異なる状態で構成されたものが、正規のものに対して付与されている技適マークと工事設計認証の番号のもとに運用されるという事態にも繋がります。

普段何気なく使っている機器も、電波法や電気通信事業法のもとで使えているものがたくさんあります。
確かに普段意識しませんが、イレギュラーな行為に目を向けるときこそ改めて法の運用について考えなくてはいけないと思います。

そもそも本当に安いのか??

そもそものところ、部品で買い集めたら本当に安いのか、実際に試算してみることにしました。
必要な部品の一覧はありますので、eBayやAliExpressでいくらになるのかを調べてみます。

結果として、若干の変動はありますが諸経費を入れてメインボードを除く部品の総額が2万円前後となりました。
メインボードを加えると3万円前後となりましたので、実際言うほどお得とも言えません。
(これは日本へのシッピング費用が加算されるためで、それを除外した純粋な部品代で言うと3万円は切るためお得と言えないことはありません)
また販売価格が高騰している状況ですから、この金額でもまだ安いという考え方もあるでしょう。

しかし部品が届くまでの時間、組み立てる手間、様々なリスク、諸々を天秤に掛けて本当に得なのかと言われると、やはり首をかしげざるを得ません。

終わりに

とはいえ試みとしては大変面白く、ついやってしまいたくなるのは否めません。
部品さえ揃えば組み立てられてしまうということは、故障修理の時も比較的簡単に分解と部品交換が出来るということですから、Switchの保守性の良さが変な形で明らかになってしまったとも言えます。

とは言ったものの、国内の法規制にも照らし、それを行うことが適切なのかはよくよく考えた方が良いと思います。
「やるな!」とは敢えて言いません。ただおおっぴらにしていい話なのかは事前によく考えることを推奨します。
ただ、もし手を出してしまったときは不具合や不都合、また最悪は法的な問題に直面する事態に陥る場合もあるリスクも含めて自己責任、own riskであることを考えておいてほしいなと思う次第です。

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