記事一覧
私の好きなもの part2 ギャラリートーク
香川では誰もが猪熊弦一郎のことを「いのくまさん」と呼ぶ。〈丸亀市猪熊弦一郎現代美術館=ミモカ〉のことさえいのくまさんと呼んでいた。かつてそんな話をどこかに書いたか話したかした記憶があります。「誰も」というのは、ぼくが会った人のほとんどがというくらいの意味ですから、ぼく個人の印象に過ぎません。ただ、その印象は強烈なものでした。まるで知り合いのような親密さというか、画伯とか先生とかよりも、もっと心か
もっとみる必要なもののヒエラルキーについて
久しぶりにマイク・エーブルソンに会った。年に何度か、マイクと話がしたくなる時があって、唐突に「時間ある?」とメールすると、なんとかスケジュールを調整してくれているのだろうけれど、すぐに一緒にコーヒーを飲むことになる。いつもは渋谷か原宿。でも今日は恵比寿。コーヒーを飲んでいるうちに酒が恋しくなったら、おいしい自然派のワインが飲める店がある(マイクは自転車で行くと言っていたので、たぶん飲まないだろう
もっとみるあれとこれは本当に似ているだろうか
会期が延びたこともあって、もう四回も〈ギャラリーTOM〉に出かけ、掛井五郎の彫刻や絵を観ている。先日は帰りに『ESSENCE』という薄っぺらい冊子を購入した。1998年に〈麻布霞町画廊〉で開催された展示のカタログらしい。作品に番号が振ってあり、おそらく掛井五郎自身が書いたに違いない短い解説が、巻末にまとめて印刷されている。それをただここに書き写すだけでも、彼の制作態度やユーモアが伝わってくるだろ
もっとみる美しいものへ続くドアはひとつではない
2月15日金曜日のこと(わざわざ日付を記すのは、もちろんそこが大事だからなのだけれど)、事務所の近くで昼ごはんを食べようと〈Pho321〉に入ると、アンリ・サルヴァドールの「Jazz Méditerranée」が流れていた。前日に友人と二人でアンリを偲ぶ会をやったばかりだったので、思わず店のスタッフ・アサミちゃんに「一昨日がアンリ・サルバドールの命日だったから?」と尋ねると、キョトンとした顔をし
もっとみる