ま に
なくしてしまったのは、きれいな夕陽やダウンライトに照らされた小さな空間。 あなたによって作られた隙間を埋めたい時 ここにそっとやってきます。
6月の君は冷たいくらいの綺麗さだった。 緑豊かな山の上にある、煉瓦作りの大きなホテルの変に賑やか過ぎたロビー。 人だかりの中、本当の名前だって知らない君のことをただずっと、ずっと待っていたんだ。 オーダーのスーツはグレーの細かい千鳥格子。 シャツはアイロンのない白のラルフローレン。 決めすぎない格好が君は好きだって言ったから。 数の限られた僕のクローゼットから選んだ精一杯の君へのメッセージ。 虫に食われたままの袖先の生地がやるせなかったけれど、 それさえも、彼女は
レースで飾られた青白い瞼が 眼球の動きで微かに左右する 記憶の全てを預けに この場所にやってくるものに施される 小さな儀式 鳥が降り立ったように光のさざ波が 空気の襞を連呼させる 一瞬遠くで耳鳴りのように聴こえた呼び鈴を合図に騒めいていた感情という全ての記憶が 強く真っ白な光に吸い込まれた レースの飾りを外された女の目からは 行き場を喪ったガラス玉が カチリと音を立て石の床に流れた
言葉と気持ちを持ち余した夜は 白い紙に文字を乗せる作業を 何度も何度も繰り返します。 寂しさは形を変え 新しい言葉に生まれ変わり そのことは私を安心させます。 触れている不確かな暖かさより 確実に積み上げられたたくさんの文字が 柔らかな毛布をより暖かく感じさせます。
この世の中で 忘れなければならないものなんて ひとつもないはずでした。 あなたを想う言葉の他に。 #記憶 #言葉 #恋愛
【冷たい夜、空にはたくさんの星が瞬いています。 一際まぶしく輝いた星が現れた瞬間、天使たちが舞いおりました。 イエスの誕生を世界の誰よりも一番に知らされたのは、地位も名誉もない 小さな羊飼いの少年でした。】 「クリスマスおめでとう。 あなたがこの部屋に通うことになったのは すべてママの責任ですね。 辛い思いをたくさんさせてしまったこと 本当にごめんなさい。 あなた達の心が どれ程の傷を受けていたのかを あの時のママは知ろうともしなかった。 ううん…知りたく
霙(みぞれ)の午後 思考はまるで 傍らでまどろむ猫の夢想 鼻先に微かなチョコレートの匂い ロードショーの約束の時間 絨毯に寝ころがったまま 机上の時計の音のない秒針を仰ぎ見る コートを出そうと思い直し 扉の奥の重たい箱を開けた瞬間 僕が本当に望んだ季節が 去年のままそこに息衝いていた #恋愛 #ねこ
久しぶりに歩きだした昼 いつもと同じ だけれども いつもとはちょっとだけ違う日常 誰かの目に留まったことの安心感 誰かの日常のほんの少しのスパイス 必要とされていれば 心は平静を保てるという事実 この平穏にありがとうと 誰に言おうか 夜の小さな台所の灯りの下 優しい冬の背中を撫でてみた #恋愛