見出し画像

出会いは嘘と思い出の中で

俺の中にはガキの頃から
部屋の床が歪むくらい
暗い虚無があるから
位にこだわりをみせて
格好をつけたがっている家のようなものだ
真っ黒な夜の眼差しが怖いものだから
部屋の電気を点けたら
夜のコンビニの灯火に群がる
蛾のような感覚
大きく見せたり話に毒を盛る悪気ない
偽りの自己で
涙見せぬよう
全部君への愛の為だと
ペラペラと嘘を並べる音は
蛾がバタバタと羽音で
威嚇するような思い出を語りたがる
あまりにも見え透いているのに
嘘だとわかる擬態を纏うのかしら

この時代に個人情報は
だだもれであるというが
この家はフィクションでできているから
開示されても何の問題もない
観音開きの窓が
開けっ広げにパタンパタンと羽音を立てる
本当の俺が分からなくなる
君と一緒に住もうと思うが
一度離婚していて
この窓から兎のように
飛び出した連れ子を
ずっと探していることは
まだ君に話せていない

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?