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月と六文銭・第十四章(47)

 工作員・田口静香たぐちしずかは厚生労働省での新薬承認にまつわる自殺や怪死事件を追い、時には看護師、時には生保営業社員の高島都たかしまみやこに扮し、米大手製薬会社の営業社員・ネイサン・ウェインスタインに迫っていた。
 彼との情事を2度経験したが、分析用の記録映像は、物事にあまり動じない田口でも赤面するほど恥ずかしい自分の姿を記録したものだった。

~ファラデーの揺り籠~(47)

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 都は恥ずかしさで顔を真っ赤にしたまま気を取り直して、もう一度画像を戻して、電磁波の動きを観察した。電磁波はガッと上がり、高原状態をキープしていたが単調な真っ直ぐな線ではなかった。高原状態の線を拡大してみたら、細かくキューッと上がってストンと落ちる、いわば鋸の歯のような状態を繰り返していた。
 ん?ズレている。場所の差かしら?背中と鞄のは、ほぼ一緒の波形、頭の下のは少しズレている。膣から背中を伝って、頭、いや脳に刺激というか電気信号が伝わるまでの時差か?
 発見したことをメールにまとめて、ヴィッドに送り、都はノートPCの画面を閉じた。
 もう見たくないな、この資料映像。どこかにアーカイブされて、忘れ去られないかなぁ。
 ネイサン・ウェインスタインの"力"を調べる切り口になるはずの映像だが、SR&E(科学研究及び評価部)で詳細分析される際に、何人の研究者がこの映像を見ることになるんだろう…。
 あぁ、せめて喘ぐだけにしておけばよかった。英語でウェインスタインを喜ばせて、さっさとあの力を出させようとしたのが失敗だったなぁ…。
 後悔、後悔、珍しく、後悔。この仕事を始めてから、初めての後悔かもしれない。都からは苦笑いしか出ない状況だった。

***現在***
「哲也さん、私の初めての恋人はアイルランド人で、初めての男性経験もその彼とだったの。
 英語でセックスを覚えたこともあって、外国人相手にちゃんと"I'm coming"と言えるのよ。
 これまで哲也さんと英語でセックスしたことがないから、もしちゃんとI'm comingと言って絶頂に達したら、外国人としているみたいで喜んでくれるかなぁ?」
 田口は武田の顔を覗き込んで、悪戯心がムクムクと湧き上がった。
「ねぇ、私と英語でしてみます?」
「うん、してみたいなぁ」
 あれ、何か違うぞ。田口はちょっと考えて、前言を撤回した。
「いや、やめておきます」
「え、なんで?
 静香さんから言い出したことだよ」
「スーパーモデルとかと比べられたら、いやなんで!
 それに、もともとスタイルで負けちゃってる気がするし…」
 武田はそんなことないよと言いたくて、手を横に振った。
「イスラエル人のスーパーモデルのことを言っているの?しばらく会ってないよ。
 静香さんだって、英語で『Oh Shizuka, I love f-cking you』とか『Your p-ssy is so tight』とか言れたら、嬉しいでしょ?」

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 バイリンガルで英語でも普通に会話できる二人は、脳内で武田の言葉を翻訳していた:『Oh Shizuka, I love f-cking you=あぁ、静香、お前とおま○こするの好き!』、『Your p-ssy is so tight=お前のおま○こ、キツイ!』

「うわぁ、出たぁ、下品な英語!
 あぁあ、好きになる男性を間違えたかなぁ…」
 田口は考え込むフリをした。
「じゃあ、今から別れますか?」
 武田は逆襲に出た。
「いや、絶対、いや!
 哲也さんは私のものだもん、絶対、いやですからね、別れるなんて!」
 ぎゅっと抱きしめて、武田の顔を豊かな胸で包み、男根はハンドルの様にしっかり握っていた。
 武田は負けずに手を伸ばして、田口の脚を割り、彼女の敏感な真珠を指で刺激し始めていた。
「あぁ、静香のま○こ、いいね!」
「いやぁ~、だから、やめて~!
 日本語で言っても、やっぱり下品だわ!」
「逆は?
 静香さんに英語で『テツヤのち○こ、いい!もっと突いて!』と言わせちゃおうかなぁ?」

 バイリンガルの二人は再度、脳内で武田の言葉を翻訳していた:『テツヤのち○こ、いい!もっと突いて!=Oh Tetsuya, your d-ck is so good! Keep f-cking me!』

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「出たぁ、下品な英語、第二弾!
 いいよ、今からあたしのことをファックしても。でも、絶対『うう、静香のま○こ、いい!出ちゃうよ』って叫んで出すことになるわよ」
「確かにそうなる気がする、僕も。
 静香さんのあの膣の動きには敵わないからね」
 ふふふ、勝ち誇ったように静香が笑って、哲也の男根を強く握った。
「ところで、静香さんが英語でf-ckというよりも、カタカナでファックと言う方が、なんかエッチだよね」
「ん、もう!」
 田口は頬を膨らませて、武田の腹に正拳を見舞った。
「うぅ、てきちゅ~…」
 武田は涙目になり、田口は勝ち誇ったように彼の顔を再びEカップの胸で挟んだ。

***再び回想へ***
 翌朝、ホテルのラウンジで都がモーニングを食べているとオイダンとウェインスタインが来た。せっかくだから一緒に食べようということになり、ビュッフェからコーヒー、オレンジ・ジュース、トースト、ソーセージ、スクランブルエッグ、シリアル、ギリシャ・ヨーグルト、サラダを取ってきて、朝から盛り上がった。
「時差がきついからと昨日も早めに部屋に引き上げたよ」
 そう言って、オイダンは都にウィンクした。
「ヴィンセントの健康の秘訣は、部屋での軽い運動よね?」
 都もウィンクを返しながら、昨日はあのスラッとしたホステスと部屋で過ごしたんでしょ?と伝えたつもりだった。後で監視映像を見たら、多分紳士のオイダンがきれいな遊びをしているのが確認できるだろう。
 オイダンは否定せず、ウェインスタインの方を向いて、昨晩の展開を聞いた。
「ネイサンは昨日、ドライブに行かず、部屋に早めに引き上げたみたいだね」

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