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月と六文銭・第五章(3)

 板垣いたがき陽子ようこは武田と箱根へのドライブを楽しみつつ、次の展開にも期待していた…

~レースクィーン陽子~(3)

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 GT3は東名高速道路を出口のある左コースと合流も分岐もほとんどない右コースに分かれるところまで来ていた。武田は車を右コースに向かわせた。加減速、レーンチェンジを丁寧にこなし、流れるようにポルシェは走った。

 陽子は変に緊張することも、飽きて眠たくなることもなく、遠くの山々を眺め、流れていく緑の景色を楽しんだ。

 御殿場で高速を降りて、街を抜け、山に入っても、陽子はドライブを楽しめた。遅いスピードではないものの、無理にカーブに突っ込んでいったり、急ハンドルを切るわけでもなく、丁寧に道をなぞり、芦ノ湖畔に着いた。車を旅館の駐車場に入れ、武田は出迎えに来た男性に車の鍵を預けた。

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 気温は予想に反して少し低く、陽子はジャケットを持ってきてよかったと思った。足元は若干気を使って、底が厚くないスニーカーにしたのも、自分としては良い選択だと思っていた。武田は背が低い方で、レーサーかジョッキーならば逆に悪くない身長だった。

「タケダさんはどういう字を書くんですか?表札も郵便受けもカタカナですし、苗字しか表示されてなくて」
「武士の武に田んぼの田、下の名前はテツヤ、哲学の哲になりの字」

 陽子が字を想像していると武田は続けた。

「小学校から一貫してあだ名は金八きんぱちです」
「あっ、なるほど」

 陽子は笑っていいのか、ちょっと反応の仕方を悩んだ。

「哲也さんと呼んでいいですか?」
「構いませんが、曽我部さんや陽子さんのオジサンの前では気を付けた方がいいですよね」

 コクンと陽子は頷き、箱根神社に向かう武田の横に並んで歩きだした。

「久しぶりに来ました、箱根神社!
 家族で温泉に来て以来です」
「天気が良くて、気持ちがいいですね」
「この後、温泉ですか?」
「えぇ、あの旅館は午前中特別に開けてくれていて、露天風呂から芦ノ湖が見えるから、景色を楽しんでもらえると思います。
 内湯は男女別だけど、露天は一緒です。
 お昼は天ぷら蕎麦をいつもお願いしているのですが、大丈夫ですか?」
「はい、楽しみです」

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 二人で旅館の暖簾をくぐり、受付にいた初老の男性と言葉を交わした。

「お昼はどうなさいますか?」
「今日は2人分お願いします。
 それと、こちらには大きめのタオルを」

 男性は陽子の体をじろじろ見るような失礼は行動もなく、浴衣と重なったタオル2枚を陽子に渡した。武田にも同じものが出された。

「今の時間は武田様だけです。
 ゆっくりとどうぞ。
 お食事はひかりの間です」

 初老の男性は奥に入っていった。

 男女別にそれぞれ内湯に入っていった。陽子はキャップを取って髪をアップにしてまとめ、キュロット、ブラウス、ストッキング、ブラジャー、ショーツと順に素早く脱いで畳み、脱衣所の籠に入れた。ハンドバッグ、腕時計は少し悩んだが、一緒に鍵のかかるセイフティ・ボックスに入れた。

 渡された大きめのタオルを巻きつけず、前だけ上から下まで隠して洗い場に入った。受付の男性が言った通り、誰もいなかった。身体を洗い、一度内湯に浸かった。窓からは青い空と山が見えた。芦ノ湖が見たくて、露天風呂に向かうことにして、ガラス戸を開き、置いてある石をゆっくり降りて行った。

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 中央の少し大きめ露天風呂に武田は既に入っていた。武田の肩は予想に反してがっちりしていて、普段から鍛えられていることを窺わせた。陽子は武田の右後ろに膝をついて、そっと話しかけた。

「一瞬、目を瞑ってもらえますか?」
「ああ」

 武田は手で目を覆い、陽子はタオルを外して入った。

 相変わらず武田は前を向いたままで、陽子はその横に並んだ。陽光でぎらぎらする水面の下は何も見えず、陽子は色が濃いと指摘された乳首が見えないので、安心していた。

 そう、去年の秋のイベントの後、他の女の子と一緒にお風呂に行った時、自分の乳首の色が濃いことに気がついて、それ以来、あまり他人とお風呂に入ったり、或いは女性しかいないにしても、人前で着替えなくなっていた。

 陽子がパパと呼んでいる曽我部と付き合い始めてから2年が経ち、他の女性に比べ、自分の体が何となくいやらしさが増しているのも感じていた頃だった。

 男性を喜ばす術も徐々に身に付いていって、特にパパに教え込まれたオーラルテクニックは男性を虜にするものだった。陽子がオジサンと呼んでいるもう一人のパパに試したら、たちまち気に入ってしまったこともあり、オジサンは車の中でも陽子の口技を度々求めた。

「今日は霧が晴れていて、芦ノ湖が一望できます」

 前を向いたまま武田が話した。

「素敵です」

 そう陽子は応じた。陽子が武田の方へ体を寄せると、武田は右手を背中から回してきた。

「哲也さんは私に興味がありますか?」

 陽子も前を向いたまま聞いた。
 武田は陽子の腰に回した腕に少し力を入れ、抱き寄せた。
 陽子は首を回し、武田の右頬にキスして、同時に左手は武田の股間を探っていた。陰嚢を探り当て、優しく揉んだ後、男根も握った。もう元気だった。陽子は嬉しかった。

 自分から迫ったのに武田が反応してくれなかったら惨めな気持ちになる可能性があった。握った感じでは特別長いわけでも太いわけでもなかったが、少なくともパパとオジサンよりは大きく感じられた。

「私の胸、揉んでください」

 陽子は手を上下に動かし、武田にキスをしながら囁いた。

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