マンガMeeでマンガ家デビューから人気連載までの道のりを大公開!『冷たいベッドの上で。』みずや実莉先生インタビュー【前編】
マンガMee公式noteでは、デビューを目指すみなさんへ、面白い漫画作りのヒントになる情報を発信中。マンガMeeで活躍する人気作家さんに、漫画家志望者なら気になる漫画作りのアレコレを教えてもらうインタビュー連載を公開しています。
今回は、マンガMeeで連載中の大人気作品『冷たいベッドの上で。』連載100回突破を記念して、作者のみずや実莉先生にデビューから長期連載に至るまでの道のりを伺いました!
前後編と、全2回にわけて掲載予定です。前編となるこの記事では、マンガMeetsで投稿をはじめデビューを掴むまでについてをお届けします!
投稿のきっかけは
——みずや先生、はじめまして!みずや先生は縦スクロール漫画『冷たいベッドの上で。』をマンガMeeにて絶賛連載中ですが、元々は横読みの漫画を描かれていたんですよね。いつ頃から漫画を描かれ始めたんですか?
みずや実莉先生(以下、みずや) 小さい頃から絵を描くのは好きだったんですが、漫画のようなものを描き始めたのは小学校低学年くらいだったと思います。といっても、原稿に描くわけではなく、友達や姉と一緒に紙とペンで漫画を描いているだけでしたけど(笑)
それからもずっと趣味で絵を描いてはいたのですが、そんなに画力もなかったので漫画家は目指さずお菓子系の専門学校に進んだんです。調理師免許も取って、社会人になってからはお菓子業界で何年か働いていました。
ただ、働いている間にも絵を描くことは続けていて…スケッチブックにデッサン練習したり、普通にイラストを描いたりしてました。本格的に漫画を描きはじめたのは5,6年前くらいからですね。デスクトップパソコンも液タブも買って、結構環境が整ったのでちょっと一回原稿に起こしてみようかなって。その流れで原稿を完成させて賞に応募していたら、評価や結果を見るのが楽しくなってきちゃって(笑)
好きな漫画がやまもり三香先生の『シュガーズ』とか咲坂伊緒先生の『アオハライド』みたいな王道少女漫画だったので、いろいろな少女向け媒体の新人賞に応募して――そのうちの一つがマンガMeeでした。
——マンガMeeの新人賞には2020年3月『こんな私ですが。』を初めてご応募いただいて入賞されていますが、これはマンガMeetsができる前ですよね。どのようにしてマンガMeetsを知ったのですか?
みずや しばらくはマンガMeeの賞に応募するつもりだったので、Meeの新人賞がマンガMeetsに移行したタイミングで知りました。
マンガMeetsができてから初めて投稿したのは『ハッピーエンド』ですね。一度転生ものを描いてみたいなとずっと思ってて、投稿作の中でも一番描きたいものを作中に込められたと思います。翌日デビュー賞で入賞して担当さんがついた作品でもあるので、投稿作の中でもかなり印象に残ってます。
——担当がついた時は、どんなお気持ちでしたか?
みずや やっぱりうれしかったですね。デビューに近づいたっていう実感がちょっと湧いた気がして。一歩前進した感じでした。
横読みから縦スクロールへ
——次作の『番犬少女』や2021年1月の翌日デビューマンガ賞に応募された『私が望むこと。』までは横読みの漫画を描かれていたと思うのですが、デビュー作『アンビバレンス』で縦スクロール漫画に挑戦されたきっかけは何だったんでしょうか?
みずや 担当さんの勧めが大きかったです。もともと担当さんに「みずやさんのネームはセリフや絵が下重心になることが多いから縦スクの方が向いてるかもしれない」とは言われていて、ちょうど縦スクロールマンガ賞が開催されることになったので「じゃあ1回チャレンジしてみましょうか」と。
——ではそれまで縦スク漫画を描かれたことは…
みずや 全くなかったです(笑) 読むのは好きだったんですけど、当時はカラーがすごく苦手で…できるかな?という不安はありました。ただ挑戦してみたい気持ちの方が強くて。その時は縦スクの描き方も全然分からなかったので、練習を積み重ねていかないとなと考えていました。まさかこの作品でデビューするなんて思ってなかった(笑)
——初の縦スクでデビューとは…すごいですね。『アンビバレンス』では物語のジャンルもがらりと変わってますよね。『私が望むこと。』までの作品は基本的に学生が主人公の恋愛ものでしたが、『アンビバレンス』は複数愛者(ポリアモリー)の関係を題材にされていて。こちらも何かきっかけがあったのでしょうか?
みずや 結構軽いノリだったと思います。 縦スクで何描くか担当さんと話してたときに「不倫いきましょう!不倫!」「不倫ですか!?」みたいな(笑) それで不倫関連のことについていろいろ調べていたらポリアモリーに行きついて、『アンビバレンス』が生まれました。だからそれまでは不倫漫画もあまり読んだことがなくて(笑) ドロドロは好きだったんですけど、自分が描くならピュアな恋愛ものなのかなと思っていました。でもいざやってみたらノリノリで描けたんです。「人の不幸は蜜の味」じゃないですけど(笑)
『アンビバレンス』がなかったら『冷たいベッドの上で。』も生まれなかったので、初代の担当さんには「ここまで連れてきてくれてありがとう」と言いたい気持ちです。
——『アンビバレンス』はチャレンジMeeの『ウチガワ』、そして『冷たいベッドの上で。』の原型となる作品ですもんね。「本来奥さんにバレてはいけないはずの不倫を妻が公認している」という設定はかなりインパクトがありますが、こういった企画を思い付いた経緯をもう少し詳しく教えていただけますか?
みずや ネットニュースを見ていたときに、ふと複数愛者の方の記事を見つけて。いろんな人と関係を持っているけれどそれを双方が容認している——でもある一方が不満を持っていたらどうなるんだろう?という疑問が浮かんだことがきっかけでした。それからSNSで複数愛者の方の投稿を検索したりして、詳しくなっていくうちに「ネームに起こせるかも」と思ったんです。
一応「悪魔的な女の人が男の人を翻弄する」みたいな別ネタもあったんですけど、担当さんにどっちが良いか聞いたらきっぱり「複数愛者で」と(笑)
——ニュースがきっかけで企画を思い付いたとのことですが、現在でもアイデアを考えられる時にはそういったメディアで情報収集されるんですか?
みずや そうですね。自分や周囲の人をモデルにする漫画家さんもいると聞きますけど、このジャンルの場合、聞いたことをそのままネタとして使うのは流石に躊躇しちゃうので(笑) 身近なリアルの話は少々参考にさせていただく程度です。だから各キャラに具体的なモデルはいなくて、基本ストーリーも含めてゼロベースで作っています。とはいえ「どういう人がいるのか」を知らないとキャラ造形の取っ掛かりが掴めないので、ニュースやSNSで面白い人がいないかチェックしたりしています。
——新境地に挑戦された『アンビバレンス』は見事縦スクロールマンガ賞で準グランプリを受賞されましたが、デビューが決まったときはどんな心境でしたか?
みずや 担当さんに「本当ですか?嘘ついてないですよね」って言いました(笑) その後に嬉しさがやってくる感じ。あと、縦スクでデビューさせてもらったので、これからも縦スクでいこうという決意を固めました。
キャラの掘り下げで物語を組み立てる
——デビュー後、『アンビバレンス』を基にした縦スク漫画『ウチガワ』でチャレンジMee(以下、チャレミ)に挑戦されたみずや先生ですが、本格的に縦スクを描いていくにあたって大変だったことはありますか?
みずや 縦スクに適したコマ割りを考えるのが大変でしたね。「斜めに割っても良いのかな」とか「スクロールを効果的に使ったコマ割りはどうすればできるんだろう」とか悩みが多くて…縦長の画面を生かした大胆な描写など縦スクならではのコマ割りもあるので、ピッコマさんに掲載されている人気の縦スク漫画をたくさん見て、コマ割りの文法を研究しながら描いていました。
ストーリー面では、横読みで描いていたころよりヒキを強くするという意識が強くなりました。気になる終わり方にして続きを読ませる、という基本構成は縦スクのドロドロ系だと非常に重要なので。
ヒキに関しては、展開の意外性だけでなく「少し怖い顔をアップにしてカラーならではのインパクトを与える」など作画面でもこだわっています。
——『ウチガワ』は『アンビバレンス』が原型になっていますが、元々読み切りとして作られた物語をどうやって連載ネームに再構成していったのでしょうか?
みずや 『アンビバレンス』は読み切りとして描いていましたが、機会があれば広げて描いてみたいなとは思っていたんです。チャレミの企画について打合せしていた時にその話をしたら担当さんも乗り気だったので、『アンビバレンス』をチャレミ用にブラッシュアップしていくことになりました。
そこからは『アンビバレンス』を一旦ふわっとほどいて連載ネームにしていく作業に入りました。主人公の美春、美春と不倫関係になる照、そして不倫を公認する照の妻・悠乃というメインキャラの立ち位置自体はそのままで行こうということになったのですが、キャラの関係性や性格は結構変わりましたね。
——どのようなところが変わったんですか?
みずや 読み切り時の想定だと、照さんは本編ほどヤバい人じゃなかったんです。本当に2人を平等に愛していて大切に思っている感じで。だから連載として続きを描いていくなら、「照さんの望みを叶えてあげたいし3人だとしても一緒に住みたい、だけど自分だけのものにしたい嫉妬心もあって…」といった美春のもじもじした葛藤を描く話になるかなと考えていました。
でも、キャラクターの細かい設定を決めたり性格を紐解いていったりするうちに、この方向性だとしっくり来ないなと思ったんです。照さんは実のところもっとどす黒い感情を持っている危険な人なんじゃないか、美春は葛藤し続けるというより全力で照さんを奪い取ろうとするんじゃないか…だったら前半で美春はもっと攻撃的に悠乃に接するよな、と。
——『ウチガワ』では美春と悠乃の攻撃的なやり取りも見どころですよね。特に3話では悠乃が美春のカップを割るというシーンが印象的でした。
みずや 美春が悠乃に対して更なる殺意を持ってもらうために入れたシーンですね。『アンビバレンス』では悠乃が少ししか登場しなかったので、どういったキャラにするかも悩みどころではあったのですが、とりあえず勢いでネームを描いたら美春と悠乃のガチンコバトルになりました(笑)
基本的にはキャラの考え方や関係性に沿わせつつ、1話に1つは盛り上がりをつくることを意識してネームを切っていましたね。
——連載ネームをつくる時にはキャラの掘り下げが大切なんですね。方向性が固まってからは「勢いでネームを描いた」とのことですが、プロットなどは書かれなかったのでしょうか?
みずや そうですね。投稿者時代からぶっつけネームだったので、チャレミでもネームからです。もちろん、どんな展開にするかということはざっくりお伝えしていましたが。
ちなみに『冷たいベッドの上で。』もネームから提出しています。「何かおかしいところあったら言ってください!」くらいの勢いで(笑) 文章に起こすのがすごく苦手なので、最初からネームで描いた方が説明しやすいんです。
——チャレミでは見事グランプリを受賞されて『冷たいベッドの上で。』を連載されることになりましたが、チャレンジMeeを経験して良かったことがあれば教えてください!
みずや メンタル面が鍛えられたと思います…。連載争奪戦とあって毎日気が気じゃなかったです(笑)
——チャレミで掲載される話数は3話までですが、グランプリを取る前から後々どういう展開にしていくかは決めていたんですか?
みずや 美春と悠乃が洗脳を解いて、照さんから離れるための物語にしようということは決めてました。かなりざっくりで細かいところは決まってなかったので、話ごとの展開は連載決定後に決めたんですけど…着地点は最初に『ウチガワ』のネームをつくったときから変わってないです。
——連載にあたってタイトルを『ウチガワ』から『冷たいベッドの上で。』に変更されたのには何か理由があったんですか?
みずや 『ウチガワ』を修正していった際に、このタイトルだと意味が合わなくなってしまうなと思ったんです。もしかしたら内容を誤解されてしまうかもしれないので、もっと直観的に内容を分かってもらいやすいタイトルに変えよう、と。ただタイトルを考えるのが苦手だったのでタイトル決めはちょっと難航して…書店に通って文庫本のタイトルをたくさん眺めたりしていました。そこから言い回しが良さげなものを参考にして何個かタイトルを考えて、担当さんと相談して『冷たいベッドの上で。』に決定しました。句点が付いているのはなんとなくオシャレっぽいからです(笑)
——『ウチガワ』だと意味が合わなくなってしまったというお話でしたが、なぜそう思われたんでしょうか?
みずや もともと主人公である美春だけの胸の内の葛藤を描いたものだったので『ウチガワ』だったんですけど、連載するにあたって悠乃や照のことも描く必要が出てきたのでタイトル変更しました。美春もウチに秘めるより結構行動に出る人になりましたしね。
——そういった経緯で『冷たいベッドの上で。』という印象的なタイトルが誕生したんですね!
みずや先生、ありがとうございました!後編では『冷たいベッドの上で。』の制作秘話について深堀りしていきたいと思います。引き続きよろしくお願いします!
次回予告
後編も準備中です!お楽しみに!
関連リンク
みずや実莉先生の『冷たいベッドの上で。』はマンガMeeのアプリからお楽しみください▼
マンガMee公式noteでは、マンガMeeで活躍する作家さんに漫画の作り方を聞くインタビューを公開中。過去のインタビューはこちらからお楽しみください▼
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?