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どうしたら「ひとりよがりのマンガ」から抜け出せるのか?

マンガ授業の経験から気づいた事

専門学校でマンガ講師を始めて14年近くになります(2018年現在)。
最初の頃は何をどう教えたらよいのか戸惑うことも多かったのですが、経験を重ねるといろいろなことが見え、私自身が学ぶことも多くありました。
私の授業内容の変遷を通して見えてきた事が色々あります。
まずは14年間の授業内容からお話始めたいと思います。

専門学校におけるマンガの講師といっても、それぞれ担当がパートがあります。
キャラクターや背景・パースといった作画に関する授業と、ストーリー構成&ネームを通したマンガ制作の授業と大きく二つに分かれます。
私の授業内容は、後者になります。

マンガを描いた経験があろうが無かろうが、学生にまず「コマ割りをしたマンガ」を描いてもらっています。
何が描かれているのか、読者に分かるマンガを描くこと。
それが重要だと考えているからです。

最初の課題は、2ページマンガ。
シナリオを用意し、それを2ページでコマ割りをしてマンガを完成させてもらいます。
マンガの冒頭のシーンを想定して描かれたシナリオなので、最初のコマには背景を描く必要があります。
そして、主人公が誰で、何をしているのかが分かる様に描かなくてはなりません。
また、最後のコマは「メクリ」になるので、どのような絵を描くのが効果的なのかということも意識して描く必要があります。
その他にも、「何が描かれているのか分かるマンガ」としての重要な「約束事」を解説し、実際に作業に入ってもらいます。学生達の顔を見ると、「なるほど・・分かりました」みたいな表情をしているのですが、実際に描き上げられたネームをみると、教えた基本的な表現や知識が見事にどこかに飛んでいってしまっていることが多いです。

マンガを描くというのは、頭で分っていても簡単に描けるものではありません。
理屈で分っていても、水泳で息継ぎが簡単には出来ないのと同じことで、練習することで身体(頭)が覚えていくのです。

「たくさんの作品を描きなさい」とよく言われます。
たくさんの作品を描くことで、マンガを描く身体(頭)なっていくのです。

「シナリオを用意して2ページのマンガを描く」という授業になったのは、実は最近の事です。
講師を始めた頃はシナリオを用意せず、「気配を背後に感じた主人公が振り向くと、そこに『A』が立っていた」というシチュエーションを、1ページで描いてもらっていました。
キャラクター・世界観・『A』をすべて自分で考えて、それをコマで表現してみよう!ということで描かせていたのです。

私自身、その頃はマンガ表現や基本的な構造について深く考えたこともなく(まだ「マンガのマンガ」は描いていません)、マンガ家としての自分の経験だけが頼りでした。
まずは「コマ割りをしてマンガを描くこと」に慣れさせることが目的だったのです。

ところが、出来上がってきた学生達の作品は、私が思いもよらぬ方向に向かっていて、私は困ってしまいました。

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