『スロウハイツの神様』感想!!

一部ネタバレを含みます。

『スロウハイツの神様』を読みました。本好き、読書好きの方々からすればあまりにも有名な作品なようで、今更感の拭えない本記事ですが、まあそもそも誰に見せるでもない自己満足、自分の感情の整理のための文章なので。

さて、『スロウハイツの神様』の、感想。一言でいうなれば、「これが本物の伏線回収か!」と。昨今、伏線という言葉は大人気。ワンピース然り、呪術廻戦然り。「考察系youtuber」なんて人たちも現れて、日々漫画やアニメの演出を「伏線」としてありがたがっています。もちろん、それが「伏線」という言葉の誤用だと指摘したいわけではありません。たぶん誤用じゃないし。ただ、近年大人気の「伏線」は、『スロウハイツの神様』におけるそれとは異質なように思えるのです。先に挙げた、ワンピースや呪術廻戦における伏線は、初出時には「どういうこと?」と困惑する読者をほっておいて、忘れたころにその説明がされるというものが多いように思います。あえて悪い言い方をするならば「説明放棄」ともいえるかもしれません。こういうタイプの伏線は、回収されるととてもすっきりしますよね。「なるほど、そういうことか!」と。僕はそういうことはあまりしませんが、考察を重ねてずばりそれを当てるという楽しみ方もあるでしょう。一方、『スロウハイツの神様』で仕掛けられるのは、読者が違和感に気付かずスルーしてしまうような伏線。その場では全く別の意味に捉えられたり、「どういうこと?」となったとしても、それが重大な秘密を孕んでいるとは思いもしない。だからそれが回収されるとき、めちゃくちゃびっくりします。だってそうでしょう。放置されていた謎がついに解説されるわけでも、節々に感じていた予感が実現するわけでもなく、何気なく信じていた事実がいきなり覆される。瞬間、脳内で今まで読んできた文字が反芻され、点と点が繋がっていく。誰も嘘はついていない(それどころか、ヒントを置いていてくれる)のに、まるで「騙された!」というような気分になります。これがめちゃくちゃ気持ちいい。ワンピースや呪術廻戦のような、「ついにあの謎が明かされる!」的なわくわくもいいですが、この不意打ちを食らう気持ちよさは『進撃の巨人』を思い出しました。

さて、話は変わって、私は小説を読むとき、読み終わるまではできるだけ映画やコミカライズ作品は読まないようにしています。脳内で行われる登場人物のキャスティングの妨げになるからです。読み終わった後なら、「答え合わせ」のような感じで見るんですけどね。どうでもいいですが、私の脳内の「スロウハイツ」の住人たちを紹介しておきます。

101:狩野壮太
僕の中で彼を演じてくれたのは、『銀魂』の志村新八くんです。作者様のなかでは眼鏡はかけてないでしょうが、僕の中の彼はなぜか眼鏡陰キャでした。悪口じゃないよ。

102:長野正義
彼の演じたのは版権キャラではありません。なんとなく、茶色でツンツンした髪の毛にソース顔のイケメンです。後の「答え合わせ」でみた漫画版の彼と一致度60%くらいでした。本作の登場人物で一番高いです。

103:森永すみれ
彼女のまた、演者は僕のオリジナル。黒髪ロング、ストレートではなく、少しふわっと巻いた髪。彼女には作中散々イライラさせられたので、苦手なタイプかもしれません笑

201:円屋伸一
僕のなかでは彼もまた眼鏡。イメージは、ネット上で有名なあの写真の男性。アイドルとのツーショット写真で、ハートを作ったのにサムズアップで誤魔化されたあの写真の男性です。そんな描写は一切ないのになぜかと聞かれても、そんなの僕にも分かりません。

202:チヨダ・コーキ
申し訳ないことに(?)、彼を演じたのもまたネットの玩具界隈の方。どの程度の人に伝わるかわかりませんが、自分が起こした事件についてインタビューされしどろもどろになる男性です。逮捕前のとんでもないタイミングで「あの事件についてどう思いますかー?」なんて聞かれて、あまりの挙動不審っぷりが面白かったです。失礼ですが。

203:黒田智志
僕の中で最初にキャストが決まったのは彼。どっからどう考えても『ヒロアカ』のサー・ナイトアイだろうと、即決でした。物語終盤、彼がなかなかの食わせ者であると判明しましたが、不敵に笑うナイトアイが浮かんでたまりませんでした。

301:赤羽環
彼女もわりとすぐにイメージがつきました。とはいえ、僕にしか伝わらないですが。彼女を演じたのは小学校の担任の先生です。六年生のときの。ただし、その先生は結構なお年で、流石におばさんと呼ばざるを得ない感じだったので、イメージはそのまま30年前くらいの姿を想像して読んでました。彼女は、漫画版との解釈違いが一番大きかったですね。別に僕が勝手に想像してるだけなので否定も肯定もしませんけど。

加賀美莉々亜
彼女は、どこぞの地下アイドルみたいな、そんな見た目。ゴスロリというのか、そんなファッションで、裏では煙草を吸っているような。彼女が実は性悪だというのは最初から予感していて、それだけが、終盤の展開で僕が唯一看破したものでした。しかし、最終章にもエピローグにも、彼女は一切登場しませんでしたね。「悪者」の出番はおしまいということなのでしょうか。僕には、彼女も被害者であるように思えるのですが。(では加害者は?と聞かれると難しいけれど。サー・ナイトアイ?)

と、そんな感じで、僕にとって数年ぶりの小説であった本作ですが、リハビリがてらゆっくり読み進め、2週間ほどで読了となりました。聞くところによると、辻村深月さんの小説は世界観が繋がっているらしく、『スロウハイツの神様』はそのスタートにあたるのだとか。いつかコンプリートを目指して全作品読んでみたいものですね。とりあえず、読書の習慣をつけるべく友人がたくさんおすすめしてくれたなかから次の一冊を決めたいと思います。

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