〈キトランク〉冒険者名鑑②

〈常夜〉のミェル
今代の黒龍巫女である盲目の少女。
その瞳に光なき故に黒龍の帳の奥、その真の姿を見る。
誰しもが光を失う帳の領域において、常から視覚を用いぬ彼女に敵うものは存在しない。その一歩も、息遣いも、マナの巡りですら彼女は【視て】いるのだ。


〈影渡り〉のシデムシ
複数の蟲人の要素を併せ持つ合成魔人、〈常夜〉のミェルの〈騎士〉
ツギハギだらけで無限に変化を続ける自分を醜いと感じており、影に潜る異能によって普段はミェルの影に隠れている。
自らの姿を見ることの出来ないミェルの前でのみその姿を見せる。
「貴方は自分の事を醜いと言うけれど、私は好きよ。すべすべで硬い甲殻も、綺麗な音を出す羽も。ちょっと痛いけれど私をしっかり抱きとめてくれる鉤の付いた腕も。
私には見ることが出来ないから、美醜については分からないけど、私は好きよ、貴方の事」ーミェルとシデムシ-


〈定命〉のフライフ
悠久の時を生きるエルフの剣術を定命の身にして納めた天才剣士
無限に研鑚されるエルフの剣術にはその歴史の中で相対した者への対策が織り込まれており、後の先を取る必殺剣と化している。
深山幽谷に捨てられていたところを山籠り中のエルフの武芸者に拾われて育てられたため身体や魔力の使い方はエルフのそれに近しいため通常の人間種と比べると遙かに長寿である。
定命とはあくまでも真エルフからの視点なのだ。
ーこの剣術を身に付けるという事は、エルフの歴史を身に付けることに等しいー


〈葬い〉のシルヴァレト
【不死殺し】【眷属狩り】【真夜中に歩く者】等の名で知られる対アンデッド戦に特化した剣士
彼が剣を振るうのは死者の安らかな眠りの為であり、死者の未練を晴らす為であれば教会との対立をも厭わない。
現代では忘れ去られた女神である〈安らかな死の魔女〉に見初められ死の防人と化した彼の本質は人間よりもむしろ不死者に近い。
彼が戦うのはあくまでも〈安らかな死の魔女〉の願いにより死者に眠りを与えるためであり、不死者への憎悪や嫌悪感という物は一切ない。
また、眠る意思のない不死に対しても他の死者の眠りを妨げぬ限り敵対の意思はない。
ー誰だって眠る時は静かに眠りたいもんだろうー

〈精霊の愛し子〉スズキ・ベルウッド・リーンボック
かつてこの世界ではないどこか別の世界からきたという勇者スズキの名を受け継ぐリーンボック家の嫡男。
精霊との親和性が非常に高く、見ることはおろか明確な意思の疎通が可能な領域にある稀有な存在。
精霊の気分により出力が不安定になるという精霊魔法の欠点を精霊と直にコミュニケーションを取ることで調節するというとんでもない力技を行使する。
ー違うよ!!狂人じゃないよ!!精霊さんがね…だから狂人じゃないって!!―

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