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63 機内ショック 飯をとりもどせ!!

 航空機はもう何度も乗りましたね(マイ・ペース『東京』のメロディ)。しかし、そのほとんどはLCC(ローコストキャリア)だったので機内食なんか出るはずもなく、また、FSC(フルサービスキャリア)で機内食が出たときは社員旅行で行くグアムだったので、選択の余地なく社員みんな同じものを食わされた。
 何が言いたいかというと、ぼくは機内食提供時の有名なあのセリフ、『ポプテピピック』にも登場した「ビーフorチキン?」というクエスチョンを投げかけられたことがないのである。問われてみたいなー。
 ぼくの場合「ビーフorチキン」だったら、迷うことなくビーフを選ぶ。鶏口となるも牛後となるなかれ? いやいや、尻の肉でもいいから牛をチョイスしたい。
 でも、これが「ビーフorポーク」だったらどうだろう? これはけっこう悩む。あるいは「ミートorフィッシュ」だったら? フライト時間によるかな。「アルコールorソフトドリンク」だったら? ワインは「赤or白」だったら? このフード病シリーズでは極力お酒の話はしないようにしているのでこれ以上は深入りしないでおくが、かように機内食というのは悩ましいものだ。

 前述したように、ぼくのような貧困旅行者はLCCばかり乗ってるので、機内食なんか出ない。路線によってはあるにはあるが、たいていは有料だ。とはいえ、国内移動なんてたかだか2時間くらいしか乗らないものだから、わざわざ機内食を頼んだりする意味がない。それより、現地に着いてから土地の旨いものやご当地ラーメンを食べることの方が重要なのだ。
 Air ASIAでマレーシアへ行ったときは、LCCだったにもかかわらず機内食が出た。片道7時間のフライトだったので、手配してくれた友人が気を利かせてオーダーしておいてくれたのかもしれない。
 このときも「ビーフorチキン?」のクエスチョンはなく、問答無用で出されたのがトップに上げた写真の「ナシレマ」だ(※最初「ガパオ」だと思っていたんだけど、友人から「ナシレマ」だと指摘されました)。セットのドリンクとしてビールを頼んだら、おつまみに豆菓子もついてきた。一瞬、コメダ珈琲かと思った。

 いざ、このナシレマを食べようという段になり、ハタと箸が止まった(スプーンだけどね)。ぼくは、このときまでナシレマというものを食べた経験がないことに気がついたのだ。
 えーと、どうやって食べたらいいのかな?
 トレーの中央にごはんが盛ってある。それはいい。問題はおかずだ。ごはんの右側に何やら肉を煮たもの。ビーフorチキン? 左側には甘いような辛いような汁。そして、ごはんの上に乗ったゆで玉子(の半分)。野菜は見当たらない。「雑な弁当やなー」というのが第一印象だった。でも、端から少しずつ食べてみれば、味は悪くない。ビールにも合う。
 うまいうまいと食べ進んでいると、隣席の友達(アジア旅行大好き&現在はタイ在住)の挙動がおかしいことに気づいた。座席据え付けのミニテーブルがガタガタと揺れている。何をしているのかというと、毎日の朝食でぼくが納豆を混ぜているように、目の前のごはんをぐちゃぐちゃ混ぜているのだ。汁も、肉も、ゆで玉子さえも。
 それを見た瞬間、ああそうか、アジアのこうした料理は混ぜて食うものだった! と、ずいぶん昔に何かの本で見たのを思い出したのだった。不覚。カレーさえも混ぜて食べるのが好きなぼくが、そこに気づかなかったとは。
 友達の様子を真似て、しっかり混ぜてから食べたナシレマは納得の美味しさで、マレーシア旅行のいい思い出になった。

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とみさわ昭仁
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