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40 神保町編2 紅とんの極うまネギ盛りと目盛つき焼酎

 神保町にいい酒場が少ないと言っても、チェーン店ならいろいろある。ぼくはチェーン店も嫌いじゃない。なかでも好んで利用していたのが、すずらん通りの「紅とん」だ。
 店名に「とん」が付いているのでもつ焼き店なのかというと、たしかにもつ焼きもあるが、それ以外の居酒屋メニューも多いので、限定的に何屋とは言い切れない。まあ「居酒屋」ですわな。
 メインはグループ客向けのテーブル席が中心で、あとはカウンターが少しあるだけ。だからぼくみたいな一人客はあまり居心地がよろしくないのだけど、つまみが安くてうまい(ぼくの好みに合う)ので、グループ客の喧騒は耳に蓋をしてやり過ごす。
 つまみはだいたいどれもうまいが、とくに好きだったのは「ネギ盛り」だ。関西圏で主流の細い青ネギを長さ4センチほどにザクザクと切り、それにゴごま油をひと回しかける。そこに食塩と鰹節がドサドサッ。もう塩とごま油の組み合わせという時点で優勝は目に見えているが、案の定うまい。ごま油は正義。これだけでホッピーがすすむすすむ。

 そう、ホッピー。
 ぼくは紅とんに限らず、酒場に行ってドリンクメニューにホッピーがあれば迷わずピーホツのロイシー、すなわち「ホッピーの白」を頼むのだが、問題なのは店によって「焼酎(ナカ)が少ない」ことである。
 あのね、居酒屋のホッピーなんて、どうせたいした焼酎を使ってないんですよ。金宮どころか、いいちこでも二階堂でもあるはずがない。どこかのノンブランドの一升瓶。だったらケチケチせずに注いでくれりゃいいのに、出てきたジョッキを見ると焼酎そのものは2センチくらいしか入ってない。そこにホッピーのソトを注いだところで、酒を飲んだ気がしねえ。
 そんなところをケチったってたいして利益が上がるわけじゃないし、むしろ印象が悪いだけ。某・海産物を各テーブル備え付けの電熱コンロで客に自分で焼かせる系のチェーン居酒屋がまさにそれで、ぼくは二度と利用しないと決めている。
 かといって、ここが酔っぱらいの厄介なところなんだけど、じゃあナカをたくさん入れてくれるのがいい店かというと、そうとも限らない。ホッピーには「ちょうどいい濃さ」ってのがあるんだね。しかも、その「ちょうど良さ」は人によって違う。ああ本当に厄介だ。

 ところが、紅とんにはその問題を一気に解決する方法が用意されている。それが最初に挙げた写真の焼酎ボトルである。
 全支店がそういうシステムを取ってるかはわからないが、少なくともぼくがマニタ書房のために神保町に滞在していた時期の紅とん神保町店は、初めて訪問した時にこれが出てきた。自分で好きなだけのナカを注げるのである。
 スタートの位置から、2杯目、4杯目、6杯目、8杯目とラインが引かれてるのが見えますね。このラインを守る必要はなくて、自分の好みの濃さでナカを注いで飲めばいい。ぼくはだいたい1.5杯くらいの濃さで割るのがちょうどよかったな。ただし、最後に清算するときはラインの位置でお代わりの杯数を計算されるので、最後の一杯を作るときにナカの量を調整して、どこかのラインにピッタリ合わせなきゃならない。でも、酔っ払いってそんなことすら楽しみになってしまうので、何も問題ない。
 店員さんによっては「ホッピーの白」って言っただけでは、このボトルが出てこない時もあるので、ぼくはいつも「ナカはメモリ付きのボトルでちょうだい」って言ってたな。
 いまもこのサービスやってるんだろうか? 神保町を離れて早くも4年。紅とんにも久しく行ってないので、どうなってるかはわからない。他の店にも真似してほしいアイデアであるよ。

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