1-高校時代

高校入学後は、はじめバスケ部に入っていた。順調に過ごしていたが、一年の夏休み空けの練習で左足首をひどく骨折してしまい、医者に全治3,4ヶ月、長くて半年と言われた。それでも僕はバスケを続けたかったからギプスの足を引きずりながら部活に出ていた。見学や裏方作業をこなしていた。


 しかしある日母親に「何で運動できないのに部活行ってるの?もっと自分の体を大切にしなさい。時間の無駄でしょ。将来のために勉強すべきよ」とひどく叱られ、部活道具を全て没収された。その日を境に部活には出られなくなってしまった。しかし気の遠くなるくらい先だが治ったら復帰するつもりだった。


 部活に行かなくなったから仲の良かった部員たちと段々疎遠になっていった。当時のクラスメイトには、他にバスケ部のメンバーはいなかった。そうして1ヶ月くらいたったある日、今まで仲の良かったある部員と久しぶりに校舎内で会い、「よっ」と声をかけ挨拶しようとした。


 僕は彼が「元気か」と言ってくれるもんだと思っていた。しかし「なんで部活こねぇんだよ、ふざけんな」と言われ、睨みつけられた。その日以降、バスケ部のメンバーに会うのが怖くなり、彼らを避けるような生活が始まった。


 なぜかその人はそれ以降、校舎内ですれ違う度に睨みつけられ、時に舌打ちされることもあった。体を思うように動かせない不自由さ、大好きなバスケができない悲しみ、それ以上に今まで仲の良かった人たちと疎遠になるばかりか、疎外されているような気がして、強い孤独感を感じるようになった。


 その孤独感を紛らわすかのように、僕はクラスメイトの仲良しメンバーと常に行動を共にするようになった。カラオケに行ったり、すごく楽しかったが、いつも報われないような後ろめたいような感情が僕の中から消えることは無かった。


 怪我して3ヶ月くらいたったある日、とうとう部活に復帰する気力を失くし、退部届を出した。なぜこんな形で大好きなバスケとお別れしなければならないのか?なぜ今まで仲の良かった人たちと気まずい関係になってしまったのか?自分の無力さ、やるせなさ、悲しみで数え切れないくらい枕を濡らした。


 人生で初めての挫折で、2回目の人間関係の喪失でもあった。その後のバスケ部はまるで”裏切り者”に対して見せびらかすように、より一層仲の良い姿を学年全体にアピールしているような気がした。遠目に見ながら、僕はむしゃむしゃする気持ちをこらえていた。


 バスケ部を辞めて以降は時間も空き、勉強に専念することができるはずだった。しかし、成績は段々下がっていく一方だった。部活を一生懸命やっている人たちに、帰宅部の僕はなぜ負けてしまうのか?当時他者と比較しがちだった僕は自己肯定感を失っていき、ずぶずぶ泥沼にハマっていった。


 報われない気持ちを満たしてくれる手段が他になかったから、スマホやカラオケの誘惑に勝つことができなかった。勉強しなければならないとは昔からずっと思ってきたことだったけど、中学1年以来初めて手につかなくなっていた。色々な雑念、無念さに集中を阻害された。


 こんな状況でも、大部分のバスケ部の他のメンバーたちは僕が辞めた後も積極的に話しかけてくれた。すごく嬉しかった。結局最後まで彼らとは僕の個人的な問題で上手く話すことはできなかった。だけどバスケ部に入ったことを後悔したことは一度もなかった。


 はじめに思い描いていた高校生活の形とは真逆と言っても良い3年間を過ごしたわけだけど、人とは違う経験をすることができたという意味で、有意義だったんではないかと思うようにしている。過去の自分を報いるために、そう考えなければならないから。


 何か挫折してしまった人、途中で好きな団体を辞めてしまった人etc、少数かもしれないけど、彼らは彼らなりに苦労しているはずだ。特に壁にあたることなく順調に人生を歩んでいる人には見えないものが見えているはずだ。だから後ろめたく思う必要など無いのだ。未来に生かすようにすれば良いだけだ。


 大学受験ではなんとか運良く慶應理工学部に合格した。楽しみなサークル、大学生活。もう二度と高校の時と同じ思いをするものか!今度こそ最後まで楽しんでやるんだ!とはじめは意気込んでいた。しかし、結局同じことを繰り返すとは夢にも思っていなかった。つづく~

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