家でフレンチのフルコースを作るときに解くべき最適化問題
今回は、先日家でフレンチのフルコースを作ったときに様々な最適化問題を解く必要があったので、それについてマニアックなnoteを書きたいと思います。
なぜ作ったの?
妻の誕生日だったのでフレンチが良かったんですが、子どもたちもいるし、テイクアウト出来て良さそうなフレンチがダラスエリアにはあまりなく、それならここぞとばかりにいい材料を買って自分で作ってしまえ!ということにしました。ワインもそれぞれペアリングすることにします。
テーマとメニューを決めよう
さすがにフルコースを作ったことはないので、何から始めていいか分からないわけですが、とりあえずテーマを決めます。
- ここぞとばかりにいい材料を使うこと
- フレンチ、和食、アメリカの要素をそれとなく入れること
このくらいですね。大して何も決まってません。
さて、次にそもそもフルコースってなんやねんという話になります。Google先生に聞いたところ、特に決まったパターンはないものの、典型的なコース構成は、
- Amuse Bouche アミューズブーシュ (一口サイズの前菜)
- Hors-d'œuvre オードブル (前菜)
- Potage ポタージュ (スープ)
- Poisson ポワソン (魚料理)
- Sorbet ソルベ (口直し)
- Entrée アントレ (肉料理)
- Dessert デセール (デザート)
となるようです。めっちゃいいレストランだと、前菜とデザートの数が多かったり、デザートの前にFromage (チーズ)があったりしますが、大体流れとしてはこんな感じです。最近はスープの代わりにエスプーマなどを使ったおしゃれな料理が出るお店も多いですね。
さすがにちょっと品数が多いので、ソルベは割愛、デザートについてはケーキを買ってくることにします。これで作るのはアミューズ、前菜、スープ、魚料理、肉料理の全5品です。
食材を決めよう
僕はプロの料理人ではないので、ここからのアプローチは完全に自己流になりますが、今回はまず使う食材を決めることにしました。旬とかよりはとにかく豪華に行く方針です。
まずは世界三大珍味 、
- キャビア
- トリュフ
- フォアグラ
次は日本人の心である海鮮、
- トロ
- ウニ
- イクラ
せっかくなので豪華に、
- 和牛
こんなところですね。これらを全てコースに入れてメニューを決めることが最適化問題になります。
メニューを決めよう
ここからはメニューを決めていくわけですが、なんの制限もなく決められるわけではなく、様々な制限があります。
- 温かいものは温かく提供出来ること
- 鍋、フライパン、その他調理器具の数
- 自分も食べながら滞りなく提供出来ること
非常に難しいんですが、2番目の調理器具の数については、普段料理する際にも頭の隅においておくと、非常に料理の効率が上がります。
これらの要素を考慮すると、その場で調理が必要な温菜は2品が限界です。1品は間違いなく肉料理になります。そこでまず1品目、和牛のステーキ、が決まります。いい肉はシンプルに焼くのがうまい。アメリカっぽくフライトポテトを添えて、Steak Fritesにします。せっかくなので、ソースは少しフレンチっぽく、ポルト酒でクラシックなソースを作ることにしましょう。
さて、次はアミューズが比較的決めやすいのですが、ここはもう手間がかからないもので、家にとても美味しいクラッカーがあるので、それに色々のせることにします。課題の食材であるイクラをクリームチーズと合わせたものと、冷蔵庫にあるメロンと生ハムでさくっと、カナッペ2種盛り、にしましょう。
次はスープを考えました。フレンチのスープはコンソメにしろ本格的に作ると結構手間がかかるので、なるべく手間のかからないもので、美味しいもの、ということで思いついたのが、ロブスターのビスク。アメリカなのでロブスターなんてほんとどこでも売ってるしそんなに高くないです。必要食材がこれで追加されました。
さてあとは魚と前菜になります。魚については、二人共火を通した魚よりも圧倒的に刺身のほうが好きなので、もうシンプルにお造りにします。普段買わないMitsuwaでいい刺し身を仕入れましょう。調理手順もこれで少し楽になります。
ここで、残りの料理と食材を一度整理しておきましょう。あとは作らなければならないのは、前菜、課題食材は
- キャビア
- フォアグラ
- トリュフ
三大珍味全部残ってますやん。。。そりゃそんなの使って料理したことないですもの。。。どう考えても前菜1品に入れるには無理があるので、品数を増やすことにします。
この中で相性がいいのがフォアグラとトリュフです。あと、少量のリゾットの上に肉がのってる料理はフレンチっぽいなと思ったので、フォアグラのソテー トリュフのリゾット添え、をメインの前に追加することにします。
あとはキャビアで作る前菜です。ここで思い出していただきたいのが、温菜は2品まで、という制限です。すでにステーキとフォアグラのソテーがあるので、前菜は冷たいもの=作り置きが出来るものである必要があります。それでキャビアが使えるものを考えると。。。ウニのフラン キャビアのせ、これでいきましょう。
最終的なコースの品目は、
- アミューズブーシュ: 2種のカナッペ
- 前菜: ウニのフラン キャビアのせ
- スープ: ロブスターのビスク
- 魚料理: お造り
- 肉料理1: フォアグラのソテー トリュフのリゾットを添えて
- 肉料理2: 和牛のステーキ ポルト酒のソース
この全6品に決定です!
ペアリングを決めよう
さて、お次は各料理に合わせるペアリングを決めましょう。といっても僕はソムリエでもないので、全てにピッタリのものを当てるのは無理なので、方針だけ決めます。
- アミューズ & 前菜: シャンパーニュ
- スープ: 白ワイン
- 魚: 日本酒
- 肉料理1: 甘口白ワイン
- 肉料理2: 赤ワイン
オーソドックスな構成ですが、日本酒を入れることで少し日本のモダンフレンチらしさを出しております。
シャンパーニュと赤白については、フランスのものというのだけ決めて、あとは好きなのを二人で買いに行くことにします。フランスワインはまじで分からんもの。。。
日本酒を甘口白ワインだけをSpecという酒屋へ買いに。日本酒はなんと李白のWandering Poetを見つけました。2合瓶で$19だが仕方ない。李白なのでぬる燗にしてお作りと合わせることにします。甘口の白はド定番のソーテルヌのハーフボトルを発見したので買いました。
材料を仕入れよう
今回は普段は買わない食材を仕入れるので、それがどこで買えるのか、をきちんと調べる必要があります。
キャビア、トリュフ、についてはEataly Dallasで買うことが可能です。ここは値段は高いですが、ここでしか買えないおしゃれ食材がいっぱい売っているのでときたま行くと楽しいです。ちなみにトリュフは小さいの1個で$15ほど、キャビアは10gで$30ほどです。
フォアグラと、和牛ステーキについては、Wild Forkという冷凍肉専門店が非常におすすめで、他にも何百種類という肉が売ってます。フォアグラは小さいサイズで売ってて$12くらいだったと思います。
お刺身はMitsuwaが王道ですが、マグロとホタテについてはうちはALDIで買ってますし、サーモンはH Martのやつが美味しいです。イクラやウニもH Martや、99 Ranchでも売ってます。今回はウニと大トロ、ハマチはMitsuwaで購入しました。ウニについては、普通売ってるのはサンタバーバラなどのアメリカかメキシコ産のウニで大体40gで$10-13、今回はMitsuwaで北海道のウニ100g $60で買いました。後でよく見たら北海道の店の名前が書いてあるけど産地はロシアでちょっと笑いました。
ロブスターは大体どこでも売ってるんですが、頭つきを買うならH Martか99 Ranchです。LBあたり$8.5とかそのくらい。安いです。
大体どこで何を買うかを普段から決めているので、仕入れは非常に楽に終わりました。
調理手順を決めよう
さて、ここからが佳境です。家にあるリソースと、自分のリソースで出来るように、調理手順を事前に考えます。ここらへんは好みだと思いますが、僕は3つの段階に分けて考えることが多いです。
前日仕込み
味を落とさず前倒し出来るものをどんどん前倒ししていけば、当日やらなければいけないことが減ります。
メニューリストの中で、前日に仕込めるものをまず考えます。ウニのフラン、これは冷菜なので前日に蒸して冷やしておけば、当日は上にウニとキャビアをのせて出すだけです。なのでこれは決定。
あとは、ロブスターのビスクもスープを取るのが3時間ほどかかるので前日にロブスタースープだけ取っておき、当日はルーを作って伸ばすのを仕込みすることにします。まずは蒸して身をはずし、その後殻を香味野菜とともに3時間煮込んで完成です。
他には、ソース類も前日仕込み可能です。今回はステーキに使うマディラ酒のソースを事前に作っておきます。フォアグラにもバルサミコソースを使うんですが、これにはフォアグラの脂が必要なのでその場で作ります。
当日仕込み
さて当日ディナー開始前の仕込みです。まずはロブスターのビスクを完成させます。小麦粉のルーを作り、トマトペーストを入れてその後スープで伸ばして完成。
その後ディナーを始める前に、刺し身を切りお造りを盛り付けておきます。アミューズも事前に盛りますが、クラッカーが湿気るのでなるべく直前に盛ります。
その後、フォアグラの付け合せのリゾットを作っておきます。なるべく直前に作りたいですが、時間的に結構厳しいことと、リゾットは水分が少ないのである程度先に作っていても大丈夫だと判断しました。使うのは普通の大型フライパンです。
当日調理
さていよいよディナーを開始します。アミューズ、ウニのフラン、ロブスターのビスク、お造りまでは仕込みでほぼ完成しているので、飾りを盛り付けてスムーズに出せます。
お造りを出す前に、日本酒の燗をつけている間に、フォアグラを調理します。小麦粉を両面につけ、シンプルにソテーします。これは普通の小型フライパンで調理します。その後そのままソースを作り、リゾットともに盛ってトリュフをかけて完成。トリュフが思ったより削りにくくて苦戦しました。
さて、最後はステーキです。これは肉焼きに使う鉄製のスキレットで調理します。今回は和牛で、厚みが2.5cmほどなので大体両面1分半ずつ焼いたあと、30秒ずつで裏返しながら3-4回焼けばいいと思います。付け合せもこだわりたかったんですが、さすがにリソースが足りないのであったもので間に合わせました。
当日使った鍋は、ビスク用の小型の鍋と、大小フライパン、スキレットの4つのみで、開始してからの調理で火を使ったのは2回だけです。これくらいの調理器具は多くの方がお持ちじゃないでしょうか?メニュー構成と、事前仕込みの手順を考えるだけで、誰でもフルコースを作ることが可能になります。
メニュー紹介
最後に今回のメニューを写真付きで紹介しておきます。
アミューズブーシュ: 2種のカナッペ (シャンパーニュ)
オードブル: ウニのフラン キャビアのせ (シャンパーニュ)
スープ: ロブスターのビスク (ブルゴーニュの白)
魚料理: お造り (李白のぬる燗)
肉料理1: フォアグラのソテー トリュフのリゾット添え (ソーテルヌの白)
肉料理2: 和牛のステーキ (ボルドーの赤)
デザートはEatalyで買ったケーキたちでした。
材料やお酒含めて恐らく$400-450くらいでしたが、材料は1回では使い切れないし、ワインも飲みきれないので、やっぱり家で作ると安いとは思います。
みなさんもおうちでフルコース、いかがでしょうか。
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