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落とし穴

そう、あれはオレが小学2年生のとき。
夏休みも終わりにさしかかろうとしていた、8月末日。
早朝から、通っていた小学校にてラジオ体操が催されていた。
ラジオ体操に参加したら、終了後にカードにハンコを押してもらえるってやつ。家が近くなのもあり、毎日行っていた。
そのラジオ体操前後に、そこに集まった友人たちと遊ぶのが楽しかった。


ラジオ体操終了後、運動場内の砂場へ。
大きな鉄棒があった。
その鉄棒にぶら下がってブランブランして砂場へジャンプ。
どっちが遠くまで飛べるか?友人とそんな遊びをしていたとき。

オレの番になり、思いっきりブランブランして、ジャーンプ・・・
よし、これは最高記録行ったか・・・
宙に浮きながら、そんなことを確信。

そして着地の瞬間・・・

ズボッ!!!!!

水しぶきが上がり、身体全体が砂場に沈む。
あれ??何が起こった??
自分でも全くわからず。
身体を見回すと、砂ではなく、どうやら身体全体が水の中に沈んでいる。
身体中、ずぶ濡れ。
頭だけが砂場から出ていた格好。
横で見ていた友人は、めちゃくちゃびっくりしてた。
そう、落とし穴に落ちたのだ。


砂場からちょっと離れた場所で、ウチのオカンとその友人のお母さんが話していた。
友人がオカン連中のところに駆けていき、事態を報告。
オカン連中が慌てて落とし穴に埋まっているオレのとこに駆けつけた。
オレは特に泣きもせず、ただただきょとんとしていた。
びっくりして何も言えなかったのだ。


夏休みでも、先生は学校にいる。
先生が出勤する頃を見計らって、オレを含め事件の目撃者たちが職員室に行く。学校内で校長教頭の次に権力がありそうなおばあさんの先生とともに砂場へ。落とし穴の詳細を把握するためだ。


どうやらその落とし穴の構造は、大まかに言えば、大きめのドラム缶(子供1人がすっぽり入るくらい)を砂場に埋めたもの。深くならないように砂がドラム缶4分の1くらいに詰め込まれていて、後の4分の3は水で満たされているという仕組み。おそらくドラム缶の口の上を布で覆っておいて、その上に砂をかぶせてその布(落とし穴の蓋)が見えないようにしていたのだ。
ドラム缶を砂場から取り出そうとするも、中に入っている水や砂が重たくて取り出せない。おばあさんの先生が職員室へ戻り、若い男の先生数人を連れてきてやっと取り出せた感じ。取り出した後、砂場にはバカでかい穴が。


「まんちゃん、落とし穴に落ちてんでー、オレ横で見ててめちゃくちゃびっくりしたもん」
誰かに会うごとに、その話をする友人。
笑い話というよりは純粋にびっくりしたって風な話しぶりだったな。
でもまあ確かに、落とし穴に落ちるって体験もレアだと思うし、目の前で落とし穴に落ちるの見るって体験もレアだと思う。
そりゃ、誰かに言いたくなるし、オレ自身も話のネタにしたくなる。
かなりレアな体験をひとりでも多くの人と共有したく、この話を執筆した次第。落とし穴に落ちたって人、はたしてオレの他にいるのだろうか??



#創作大賞2023 #エッセイ部門

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