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アプローズ 有吉京子

完結するまでに17年かかったという超骨太な物語。ここまでくると百合とひとくくりで語っていいものだろうか。
「女」をテーマにした大河ドラマのようだった。

演劇やお芝居が好きな私にはとっかかりやすく、ベルギーの寄宿制の女学院の演劇部の人気を分ける沙羅とシュナックという少女が話の主人公だ。
この二人はよく言えば運命、悪く言えば腐れ縁。宿命でもいいか、とりあえずどんなにもがいても不思議な縁で離れられない二人である。

連載開始が1981年、昭和の時代だ。
その時代の少女漫画って大好き。線が細く繊細で綺麗。
絵はもちろん、セリフが、背景が、キャラクターたちの動きが美術館で飾られている作品たちのよう。美しい。
特にシュナックというキャラは誰よりも圧倒的に美しく、凶暴なほど中身が少女のままで沙羅を振り回していくのが見ていてうっとりする。

最近の百合作品と比べると、やはり人間関係も身体に関しても重厚で、私はどちらかというとこういう方が好きみたいだ。

●幸せって、愛って、なんだろうね

沙羅は普通に男性と恋愛をするし、シュナックに対して誠実であろうとする。が、結局心はシュナックへ帰る。
とにかくシュナックの吸引力が強すぎた。
シュナックがいなければ、ある程度名のある女優になって、気の合う役者仲間と結婚でもしていたのではないだろうか。普通の人生を普通に幸せに。

でも、たった一人に出会ってしまったためにそうはならなかった。

最終巻の帯にある「あなたに会えて本当によかった」は沙羅がシュナックを救った言葉だ。

私がさっき言った普通の人生を普通に幸せにというのは要するに私の価値観で、何が幸せかなんて、本当に十人十色。

「あなたに会えて本当によかった」と言える相手に一生のうち何人めぐり会えるだろうか。いいことも悪いことも全てを許せる、その人が存在していること自体に感謝してもしきれないような、そんな人に。

お互いをそんな存在だと認め合いめぐり逢えたことこそが、この世でたった一つの真実の幸せなのだと思う。
これは究極の愛の言葉だと教えてもらった。

私も、これからも何度でも読み返すであろう素晴らしい物語に会えたと思う。
ごちそうさまでした。

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