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譚小勇『まんが中国名言故事』

忙しい先生のための作品紹介。第54弾は……

譚小勇『まんが中国名言故事』(潮出版社 2017年)
対応する教材    「管鮑之交」「蛇足」「鴻門之会」など/故事成語
ページ数      269ページ
原作・史実の忠実度 ★★★★☆
読みやすさ     ★★★★☆
レベル       ★★☆☆☆
生徒へのおすすめ度 ★★★★★
教員へのおすすめ度 ★★☆☆☆

作品内容

 合計で40以上の故事成語が漫画で紹介された一冊です。コラムや補足の解説などはなく、ほとんどが漫画のみで構成されています。はじめに故事成語のタイトルと意味が簡便に書かれ、その後に故事が漫画で描かれています。一つ一つの解説は長くても見開き10ページ、多くは見開き2~3ページでまとまっているため、手軽に読める本です。

おすすめポイント 故事成語の物語を漫画で読む

 今回紹介するのは漢文についての漫画です。漢文を基にした漫画は古文に比べて数が絞られるため、授業で使われることも少ないのではないでしょうか。さらに、中国史の漫画として代表的な横山光輝『項羽と劉邦』のように長編の物語を描いたものではなく、短編集の形になっているものはさらに限られます。その意味で、本書は珍しいと言えるでしょう。

 さらに、本書の価値は珍しさだけではありません。古典は、忠実な現代語訳をしようとすると、日本語としてどこか不自然になったり、物語の流れがわかりにくくなったりしがちです。
 しかし、本書はストーリーのわかりやすさに重きが置かれており、純粋に漫画としてストーリーを楽しめます。かといって、原文をおざなりにしているわけではありません。一部設定の省略等はあるものの、台詞等の言葉はかなり原文に忠実に書かれています。このように、本書はわかりやすさと忠実さ、両方を兼ね備えた一冊なのです。

 教員としては、「臥薪嘗胆」「四面楚歌」など、教科書に載っている話が多いのも嬉しいポイントです。

活用方法

 先にも述べたように、ストーリーのわかりやすさに重きが置かれているため、漢文の学習の補助資料として使うことをおすすめします。一つ一つが短いので、授業で使うのであれば著作権に配慮したうえでコピーして配布することもできるでしょう。特に、授業の初めにあらすじを掴むために提示するのがおすすめです。

 また、原文を読まずにストーリーを紹介したい、という時にもおすすめです。私はかつて、似た意味の故事成語を比較してニュアンスの違いを考える、という授業を行ったことがありました。古典は一つ一つの文章を読むのにも時間がかかるため、複数の文章を比較するのは少しやりにくさがあります。しかし、このように漫画で簡単に読めるものであれば、全てを原文で読まずとも、比較したり考察したりすることができます。このように、授業の幅も広げてくれそうな一冊です。

【掲載故事成語一覧】
完璧
食指動く
杞憂
和氏の璧
三人市に虎をなす
病膏肓に入る
奇貨居くべし
狡兎死して走狗烹らる
愚公、山を移す
桃李言わざれども下自ら蹊を成す
まず隗より始めよ
石に立つ矢(一心岩をも通す)
宋襄の仁
臥薪嘗胆
鶏鳴狗盗
累卵より危うし
管鮑の交わり
守株
一旦の功、万世の功
刎頸の交わり
漁夫の利
蛇足
朝三暮四
蝸牛角上の戦い
蟷螂の斧
一字千金
夜郎自大
狡兎三窟
管をもって天を窺う
肯綮に当たる
背水の陣
一挙両得
鳴かず飛ばず
苦肉の策
国士無双
虎の威を借る狐
鴻門の会
四面楚歌
左袒
喪家の狗
良弓は張り難し

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