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『平安女子の楽しい!生活』(川村裕子)

忙しい先生のための作品紹介。第58弾は……

川村裕子『平安女子の楽しい!生活』(岩波ジュニア新書 2014年)
対応する教材    「古文常識」
ページ数      220ページ
原作・史実の忠実度 ★★★★☆
読みやすさ     ★★★☆☆
レベル       ★★☆☆☆
生徒へのおすすめ度 ★★★★☆
教員へのおすすめ度 ★★☆☆☆

作品内容

 タイトルの通り、平安時代の女性の生活について書かれた一冊です。「インテリア&ファッション編」「ラブ編」「ライフ編」の三部からなり、住居や衣服といった日常生活から、恋愛や仕事など人生のイベントまで、さまざまな角度から「平安女子」について知ることができます。
『蜻蛉日記』や『枕草子』などの文学作品の現代語訳を引用しながら解説されているため、概略的な話だけでなく、実際に女房がどのような生活を送っていたかというリアルな日常を知ることができます。

おすすめポイント 十二単って何を着るの?

 「平安女性と言えば十二単」と思う人も多いでしょう。しかし、実際に何をどのように着ていたかは意外と知らないものです。本書では、一般に「十二単」と呼ばれる装束が、「単+袴+袿たくさん+表着+裳+唐衣」という構造であったと解説されています。単と袴がインナー、袿と表着がシャツ、裳がスカート、唐衣が上着、とそれぞれ現代では何に当たるのかを併せて説明しているので、とても簡単でわかりやすいです。
 ほかにも、屏風や御簾といった家具はどう使われていたのか、男女のやりとりで外せないポイントは何か、貴族の妻や女房はどういう仕事をしていたのか、といった素朴な疑問に対する答えが簡明に書かれています。
 岩波ジュニア新書ということもあり、小中学生にもわかりやすい文体で書かれているのも特長です。一方でわかりやすさを重視しているため、引用は現代語のみで原文や出典の箇所が明記されていません。そのため、原典を確認することは難しいという難点もあります。しかし中高生が入門書として読むことを考えると、十分な情報量でしょう。
 古典に精通している教員にとっては新しい情報は少ないかもしれませんが、生徒にはおすすめしやすい一冊でしょう。

活用方法

 本書は古文常識についての本ですので、特定の教材を読むときに役に立つ、というわけではありません。どちらかといえば参考図書として提示する方が向いています。
 しかし、だからといってこの本が直接役に立たないわけではありません。古文の親しみにくさの一部には、彼らの生活様式や文化がよくわからない、ということもあるでしょう。そのため、当時の人々がどんな生活を営んでいたのか、恋愛の常識はどうだったのか、人生の目標は何だったのか、などの背景を知っておくことで、さまざまな文章を読む際に読解の端緒になるのではないでしょうか。
 また『源氏物語』で若紫を垣間見する場面(P107)や『百人一首』の「忘らるる~」の和歌(P126)といった有名場面が出てくる他、道長や道綱母など有名人も多く登場するので、関連する作品を授業で扱ったときには触れやすいかもしれません。

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