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百人一首で学ぶ古文常識

忙しい先生のための作品紹介。第5弾は……

谷知子『百人一首解剖図鑑』(2020、エクスナレッジ)
対応する教材    『百人一首』
原作・史実の忠実度 ★★★★★
読みやすさ     ★★★☆☆
図・絵の多さ    ★★★☆☆
レベル       ★★★☆☆
ページ数      191ページ

内容紹介

 『小倉百人一首』を一首ずつイラスト付きで解説した一冊。各首片面1ページか見開き1ページで解説されており、歌のテーマの解説文、和歌の内容を表現したイラスト、関連事項の解説などが載っています。注目すべきは関連事項の解説です。従来の百人一首の解説本に多かった、和歌の意味や文法についての解説は最低限におさえ、和歌が詠まれた状況や作者、社会制度や社会情勢といった背景がイラストつきで詳しく説明されています。

おすすめポイント 「百人一首で学ぶ古文常識」

 本書は『百人一首』を通じて古文の世界を知るにはうってつけです。見出しも和歌ではなく作者ごとにまとまっており、著名な歌人であれば「紫式部が詠んだ和歌」という調べ方もできます。もし生徒から、「女房の名前ってどう決まっているの?」「朝ぼらけは何時頃?」「宇治ってどんな場所?」といった質問が出ても、これがあれば大丈夫!  ほかにも、「清少納言を巡る三角関係」「現代まで続く歌の家 御子左家」といった作者の周辺事情についての解説、「平安の結婚事情」「地方赴任の生活」といった当時の社会的な状況についての解説、「想像力で詠む『題詠』」「心の内を訴える述懐歌」「和歌を競う歌合」といった和歌の周辺概念についての解説などさまざまです。

 このようにさまざまな解説があり、かなり濃密な本になっているため、一冊全てを読破するのはハードルが高いかもしれません。百人一首についての前提知識がなくても読みやすい本ですがレベルを3にしたのはこれによります。難しいと感じた人は、気になった歌や事項について調べる、というように辞書的に使うこともできます。百人一首を学ぶ前に古典の世界を味わうのもよし、学びながら並行して世界を広げるのもよし、学んだ後に振り返りながら知識を深めるのもよし。生徒の学習段階に応じた薦め方ができます。

 和歌の文法的な解説や意味の解釈についての説明は最低限に抑えられています。そのため、和歌そのものについて詳しく学びたい人というより、和歌の世界について広く学びたい人にオススメです。

授業で使うとしたら

 授業では、本書の特長であるイラストを用いた解説を一部コピーして説明する、などの使用例が考えられます。また、古文常識など周辺知識についての解説が豊富なので、百人一首以外の単元を学習している際にも使用できるのは本書の強みでしょう。

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