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『知識ゼロからの史記入門』(渡辺精一、横山光輝)

忙しい先生のための作品紹介。第41弾は……

渡辺精一 著、横山光輝 絵『知識ゼロからの史記入門』(幻冬舎 2011)
対応する教材    『史記』(「鴻門之会」「垓下の戦い」など)
ページ数      190ページ
原作・史実の忠実度 ★★★★★
読みやすさ     ★★★☆☆
図・絵の多さ    ★★★★☆
レベル       ★★☆☆☆

作品内容

 中国最古の正史である司馬遷『史記』の入門書です。

 『三国志』や『水滸伝』で有名な漫画家である横山光輝氏のイラストとともに、『史記』で描かれる有名なエピソードが辺精一氏監修のもと解説されています。

 基本的に各エピソードについての解説文や図説が、見開き1ページで、横山光輝氏の漫画の一場面とともにまとめられています。「司馬遷のいわせてもらおう」のミニコーナーでは、『史記』を編纂した司馬遷の見聞きした話や個人的な意見も紹介されています。

おすすめポイント 『史記』の名場面を、おなじみのイラストとともに解説!

 漢文の授業では『史記』を出典として、「呉越同舟」「臥薪嘗胆」などの故事成語や、「鴻門之会」「四面楚歌」など項羽と劉邦にかかわる場面が多く取り上げられます。

 生徒が学習する上で最初にネックになるのが時代背景と登場人物の理解ではないでしょうか。本書は文章が平易でイラストが多いため、登場人物に対するイメージを抱きやすくなっています。

 また本書の冒頭部分では、中国正史における『史記』の位置づけや、司馬遷が『史記』を書いた経緯、「紀伝体」とはなにか、構成はどうなっているか、など教科書ではあまり解説されない『史記』の全体像が示されています。

 漢文の授業で『史記』を扱う際は各場面に焦点を当てられることが多く、“歴史書としての『史記』”についてはあまり意識されないように思います。本書を活用することで、『史記』を編纂した司馬遷の思いや、紀伝体という筆記方法にも注目するきっかけになりそうです。

活用方法

 教員・生徒どちらの知識習得のためにも活用できる内容です。

 たとえば、「鴻門之会」の場面を授業で扱うのであれば、楚・漢の主な武将と人物関係、懐王との約束の内容、咸陽にいたるまでの項羽軍・劉邦軍のそれぞれの道程など、本文を読むための前提知識をイラストや図で視覚的に学ぶことができます。時代背景や人物関係を確認した上で教科書の本文を読めば生徒の学習へのハードルも一段下げられそうです。

 また「垓下の戦い」の場面では、故事成語「四面楚歌」の成り立ちの説明はもちろんのこと、項羽が率いる楚軍が敗退した理由が3つのポイントで分かりやすくまとめられています。様々なエピソードから「項羽と劉邦どちらがリーダーとして優れているのか」などの問いにも発展させられそうです。

 あくまでも入門書という位置づけでひとつのエピソードに割かれるページ数も少ないため、各場面について本書だけですべての内容について理解することは難しいかもしれません。教科書の本文を中心に、知識を補ったり本文の内容についてより深く考えたりするきっかけとして活用したいところです。



https://www.gentosha.co.jp/book/b5107.html

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