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『夜明け』

起きてから歩いてアップリンク渋谷にいって広瀬奈々子監督『夜明け』を観に行く。広瀬監督は是枝裕和・西川美和監督が立ち上げた制作者集団「分福」の出身で、彼らの愛弟子というのが宣伝の売りのひとつのようだった。

是枝監督はずっと「家族」について描いていると思う。『万引き家族』では疑似家族の物語を呈示した。もはや、血の繋がりは呪いでしかなく、血の繋がらない者同士が集まり家族として生きていく。しかし、そこにも血の繋がりができたり、外部にある元の家族への想いや反発が出てくるので、やはり疑似家族であろうが血の繋がった家族であろうが、いつか形を失っていく。しかし、そこに救いがないわけではない。幼児虐待で子供を殺してしまう親のニュースを見る。それなら、虐待されている子供が知らない誰かに誘拐されても、そこで愛される方がまだマシだと思ってしまう自分もいる。『万引き家族』はそういう物語でもあった。
西川美和監督作品では『永い言い訳』において、互いに妻を亡くした男たちが疑似家族を形成していくが、その終焉を描いていた。西川監督作品では「偽り」が作品のテーマになっている。医者ではないのに医者のふりをしている『ディア・ドクター』や夫婦で結婚詐欺をしている『夢売るふたり』、そして、兄弟の愛憎を描いた『ゆれる』でも弟の証言や目撃したものがそれを彷彿させる。
と広瀬監督の師匠筋ふたりの作品について書いたのは、今作『夜明け』もそれらの要素を含んでいるからだ。


橋の下の水際で倒れている男(柳楽優弥)を見つけた哲郎(小林薫)は自宅に連れて帰り解放する。男は素性を東京から来たといい、名前を「ヨシダシンイチ」と名乗る。哲郎には妻と息子がいたが息子が運転した車が事故に遭いふたりを失っていた。息子の名前もシンイチだった。そこから哲郎が経営する鉄工所でシンイチは働くようになっていくが..。
という物語であり、ここでは哲郎とシンイチの疑似家族が始まる。父として偽りの息子とやり直すことで過去の後悔をなくそうとし、父として振る舞おうとする哲郎。シンイチはある理由があり、この町を訪れており、抱えた後悔が哲郎や彼の仕事仲間たちによって癒されるのを拒否してしまう。次第に馴染んでいくが彼はどうしても自分のしたある行為を許せない。哲郎はそれも受け止めようとするのだが。鉄工所の先輩を園子温監督『TOKYO TRIBE』でも主役を張ったYOUNG DAISがいい味出してます。


やさしくされることを拒絶してしまうシンイチ、わかるよ、人のやさしさに耐えきれないことって、そして、そこにあったものを破壊というか壊してしまう。どうしようもない後悔だけが残って、どうしようもないまま飛び出してしまう。これは傷を残してしまう作品だと思う。父親との関係で悩んでいる息子が見るとかなりしんどいかも。


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82年早生まれ。ライターときどき「monokaki」編集スタッフ。 「水道橋博士のメルマ旬報」で「碇のむきだし」連載中。「PLANETS」メルマガで「ユートピアの終焉 あだち充と戦後日本の青春」連載中。
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