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Venus of Tokyo 盗賊役への思い

NYCで観たSleep No Moreをきっかけに没入型演劇の魅力に没入してしまったミュージカル育ち猫とチーターが大好き表現者とは私のことです。有難いことに何作品かNYでイマーシブ作品に出演させていただいていたのですが、日本に帰ってからもVenus of TOKYOという本当に素晴らしいイマーシブ作品にご縁を頂けて幸せ者です。

今日は愛する作品での役について書きました!!

DAZZLE主催Venus of TOKYO

2021年6月より毎日3公演上演している日本初の常設イマーシブシアターDAZZLE主催Venus of Tokyoにて盗賊役として客演参加させていただいております。

先日777回公演を迎え、残りの1ヶ月を座組一同全力で駆け抜けようとしているロングラン公演です!2/23に発売された3月分のチケットの大千穐楽の週末は販売開始15分経たずに即完売、他の公演日もどんどん残席が少なくなっていってる人気ぶりです。本当に多くのお客様に愛され、応援され、何よりも2021年で結成25周年を迎えたダンスカンパニー、DAZZLEの偉大さと積み重ねをひしひしと感じます。こんな素敵な大作に出演させていただけるご縁、しかもロングランで9ヶ月も作品と役を追及させていただけたこの上なく恵まれた環境にただ感謝しかありません。

そんなロングランイマーシブ大作のVenus of Tokyo, 12役それぞれが背景や思惑を軸に目的があり、人物関係があり、感情が渦巻いてゆくのですが、その中で私は盗賊役を演じさせていただいております。この役は本当に愛着が深く湧いておりまして、最初の役のイメージから9ヶ月かけて変化した役作り、演じる上で大切にしている思いなどをまとめていきたいと思います!

盗賊役 -人物紹介-

Venus of Tokyo盗賊役

盗賊
孤児院から成り上がった。
高額な美術品を狙って、会場に潜入している。
招待状は贋作家に作ってもらった。奪った富は孤児院の子供たちに届けており、富豪を嫌悪している。

孤児院育ちで窃盗と所業や育ちは荒くとも、いいやつのようです。逃げ足は早いし所々アクションがあったり、でも密かに繊細な思いを隠し持っていたり。。。追えば追うほど発見できる隠れ要素が多い引き出し甲斐のある魅力的な役です!! 

Venus of TOKYOは各役に3〜5人ほどキャストがついています。この作品の奥深さは総勢65人からなるマルチキャストなので演じる人が違えば同じ役でもちょっとした表現や解釈が異なりますし、役同士の組み合わせによっても微妙に人物関係のダイナミックが変ったりと何万通りもの化学反応が起こるポテンシャルを秘めているのです!!

盗賊はクアドラプルキャスト、つまり4人いるのでその時点で4通り違う盗賊が存在しております!

役作りは本当に各個人それぞれのプロセス。私なりの「刈り上げ盗賊」の役作りを話していきますね。

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最初のイメージ

リハの時によく話していたのはルパン三世の藤子ちゃん的なポジションで、とてもセクシーで魅力的で、高嶺の花で色気たっぷりなんだけど盗みのスキルは抜かりなく、手先器用な感じでした。ただ私はルパン三世あまりよく知らなくて、藤子ちゃんもググってみたけれど、んーなんか私とはあまりに異次元なキャラクター。。て思いました。

かといって刈り上げに目力強めな全身黒衣装で真夏全出しでやるとちょっとつよつよで魅力的というよりは怖い系になってしまうなと思い......

その時「!」と思ったのが丁度ハマっていたアメリカのドラマ Killing EVE !!!!!

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このポスターの上の方にいるのがJodie Comer演じるシリアルキラー、ヴィラネルです。

ヴィラネルはおしゃれ大好き、殺しを遊びやゲームだと思っている超楽観的キラーで、殺しの現場にちょっと自分のサインなるものを残していく自己顕示欲の強い殺し屋の中でも一目置かれるほどのとても腕の良いシリアルキラー。

盗賊なので人殺しはしません汗。が、この明るい遊び心あるおしゃれ大好きで仕事を終える前に人にちょっかい出して引っ掻き回す感じがとあるシーンにぴったり!!と思い、更にこの楽観的な感じベースに本気を出して強めな一面を出すときはしっかり出せば緩急あって面白い流れができるなと思いました。

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変化した役作り

これはVenus of Tokyoでの現場ではないのですが、9月10月にとある素敵なコンテンポラリー界の異才と注目されるアーティスト、橋本ロマンスさんと7年越しの再会をし、ロマンス作品に出演した際のプロセスでターニングポイントとなる言葉をかけられました。

「真夏は存在してるだけで十分インパクトも何かを伝える力がある。武装して舞台立たなくていいんだよ。フィルターかけなくていいの!!」

かなり衝撃でした。これをきっかけにどの現場でも自分のパフォーマンスや在り方を見直すようになって、俯瞰してみて見えてきたことがたくさんありました。

6月から3、4ヶ月ほどたち、Venus of TOKYOでの盗賊役も肌に馴染んできた頃というのもあって盗賊役を今一度見直してみてまた一段と深めたかったのでリハから続けてきた積み重ねと足し算のプロセスを一旦おしまいにして、次のステップ、引き算のテクニックで役と向き合ってみました。

私は見た目のインパクトは「刈り上げ」というのがかなりインパクトあってそれだけで強めな印象を与えますし、それが自分特有の武器であり個性です。

だからこそそれ以上に気張らなくてもいい表現方法があるなと気づくきっかけになり、そこから盗賊役が秘めている「繊細さ」「丁寧さ」に注目して見るようになりました。

あまり詳しくは言えないのですが、盗賊役は80分通してみてみるとアクトの緩急の差がかなり大きい役の一つです。とあるところは「動」の要素、活発で激しいところもあるけれどふとしたところで「静」のシーンが来る。それもよくよくみてみると美味しいところがいくつも。。。「動」の要素は田中真夏という人間本来意識してなくても強め激しめに出てくるエレメントなので、もちろん踊りの質、DAZZLE振りを常に追及してはいるけれど自分特有のアクト、盗賊の役作りは「静」の要素をとにかく突き詰めていきました。

すると意外な自分の一面、ハイエネルギーな表現者だからこそ、「静」のパフォーマンスが大きな魅せ所になり得ることが発見できました!! 

具体的にどういうことかというと、身体能力や踊りのキレももちろん大事な魅力的な表現だけれど、アクション激しめな盗賊役だからこそ、繊細なニュアンスをふと落とし込むことでより盗賊役が立体的なものにアウトプットできるのではないかなと思いました。

劇中に(運によりけりですが)お客様と私が1対1になりやすい、視界もアクトスペースも限られてるとても短いとあるシーンがあるのですが、そこで盗賊役が窃盗をする背景をもっと繊細に描いたり、窃盗品に対して抱く想いを込めたり、お客様との壁をほんの一瞬破って繋がりを作ることを楽しんでいます。

いったいどこのシーンでしょうか.....?フル追いしてみて探してみてくださいね!!!!!!是非とも遭遇して体験してほしいです♪

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目のお芝居

マスクも衣装のうちという特殊な上演スタイルということは「目のお芝居」が大きな表現の要素になります。「目は口ほどに物を言う」と言いますよね。あくまで私個人の意見ですが、本当にその通りでどんなに振付通りに踊って台本通りに演じていても目の奥から出る表現や光がなければ平面的に見えてしまうと思います。立体的な表現を見て感動し、それを目指したいと私は心から思っているので、この目のお芝居もかなり考えました。

後ほど詳しく話しますが、計算され過ぎたものは平面的な表現になってしまうのであまり好きではありません。なので最初の方は純粋に〇〇のアクトによって視線が動いた、とかそういった自然現象に素直に従って、だんだんそれが計算/振付になってきてしまってるなと実感したらアクトを変える/違うアプローチをして見るを毎公演アンテナを張り巡らせてアップデートし続けている感覚です。

目でお芝居と言いながらも目で表情を作るというよりももしかしたら私は視線の先、揺らぎ、動きでの表現やお芝居を追及してきたのかもしれないと振り返ってみて思います。

舞台ではそこまで視線の揺らぎまでは見えないけれど、特に映像やイマーシブシアターではそれが大きな表現の要素になりますからね!とても良質なスキルを磨かせていただいたと深く感慨深く思います。

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大切にしている要素

高瀬道場 殺陣とアクション稽古からの学び

2020年7月より踊り以外の表現を追及してみたくて殺陣とアクションを高瀬道場にて学んでいるのですが、新たなスキルを稽古していく以上の事をたくさん学ばさせていただいております。そして道場での稽古と訓練がこのVenus of Tokyoで役に立つなんて本当に最大の発見です!!

高瀬道場では殺陣とアクションにおける身体性はもちろんですが最大の学びはカメラへのお芝居だと思います。技術を訓練して手順を組みながらiPhoneで撮ってアングルやカメラへのお芝居も考える。カメラは何を写したいのかの理解力、この位置だと自分はどの様に映っているのかの感覚、映像を見てる人は何をみたいのかの想像力、このようなスキルも最高の師範方の元、毎週稽古しています。

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Venus of Tokyoは毎回19:30回のみ監視者役が実際に映像を撮りながらオンライン配信をしています。監視者役の演者の方たちも毎回早く入って画角を研究していらっしゃいますが、何せよ、配信を試聴していらっしゃるお客様のリアルタイムでの投票によって追う演者が代わり、演者自身もカメラに追われるまで今日のルートを知りません。よってカメラが何を写すかはその時のリアルという事です。監視者それぞれ他の役も演じている演者なのでほぼ全ての同時多発的に起きているシーンの大事なポイントは把握されている、画角のセンスも素晴らしいカメラマンの才能も兼ね備えた方達ばかりで本当に尊敬です....

でもそこで道場で学んだスキルを応用してみたい私でしたので!パッと追われて今日は誰のルートである事がわかり、このシーンの時に監視者がその位置にいるということは、こういう画角を狙っていて、きっとこういう感じに写っているから照明が当たるようにこうしよう...アクションが見えるようにちょっと角度調節しよう...とか演じつつもそういった映像面でのテクニックも実用しながら磨けていけたのはとても大きな実りでした!!


Storytelling

ミュージカル劇団育ち故か、私の表現の根本に必ず「Storytellingストーリーテリング」があります。役付きの作品ともなればそれが台詞なしのダンス一筋の公演でも気づけばパフォーマンスの時にはお芝居に近いものを役に込めています。

感受性豊かで且つ色や音や感情を強く深く経験する私にとって演技力は力強いツールであり、自分なりに解釈してお客様へのパフォーマンスとして表現するのはもちろん、其れと同じ位共演者にいかに発信できるか、感情の化学反応の駆け引き/発火ができるか、また共演者から発信されるアクトをいかに拾って受け止めて役としてその世界観と状況にあった返しができるかに重きを置いています。


マルチキャストの奥深さ、化学反応

これはマルチキャスト公演且つ固定曜日以外にも出演する機会がたくさんあったからならではなのですが、例えば関係性の強い役とのシーン、意味深なやり取りのある役とのシーンでは相手の演者や変化するアクトによって私の盗賊にも変化が生まれます。特に面白い!もっと来いや!と待ち構えいたのは「他の盗賊とやるときはこういうアクトしてるんだけれど、どう?」と普段出演しない曜日に出演した際に発見できる、自分はしていなかった他の役とのちょっとした絡みやタイミングを提案された時です!!!そういう新発見によって「ここでこういう繋がりができると盗賊のこの印象がもっと目に止まるようになるな...」とか深められるきっかけになります!もうこの時のexcitingな感じと言ったらたまりません。

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ハプニング/その時の状況への瞬発力

番狂わせが面白い〜♪なんて私の大好きなエリザベートのルキーニさんがリズム良く歌ってましたが本当にその通りです。生の公演にハプニングはつきもの。イマーシブなら尚更。そのハプニングへの瞬発力こそイマーシブシアター役者としての底力だと深く思います。

もちろん台本と振付のディレクションに従うのは大前提ですが時としてお客様の並び位置だったり小道具のハプニングにより、咄嗟の判断を、それも世界観に生きる役の中での判断を独断の時は良いとして共演者がいる場合の発信なども大切ですね。想定外の事こそクリエイティビティの最大のチャンス!!!!なんて思うようになったのはイマーシブシアターならではですね!いつかNG集、ハプニング集を語る日が来るのでしょうか。


想像すること、想定ではない。

「計算され過ぎた演技は好きではない」と先ほど発言させていただきましたが、これには理由があります。

「想像することと想定することは同じではない。想像力を働かせて!」

橋本ロマンスさんに言われた言葉で深く心にタトゥーされた名言です。表現ジャンルに関わらず今にもこの先にもずっと覚えておくべき言葉だなと思っています。

「役を演じる」の次のステップは「役を生きる/全うすること」

演技にはさまざまなメソッドがあり、それぞれの役への向き合い方がありますが、今の私はこれがモットーです。

視線が動くきっかけ、あの役の肩に触れたくなった手、挑発の仕方、この役だけに見せてる盗賊の一面、遠くからでしか視界に入れることのできない存在の理由やふとしたことから生まれた予想外の絆。あらかじめ想定した決め事ではなくて全てその時その演者の方からの発信や偶然のタイミングから反応した、刈り上げ盗賊の心が動いたからの行動でこの世界線を全うしたいと強く思います。

恵と出逢いに感謝!!

DAZZLEという素晴らしいアーティストのお兄さん方の背中を追いかけながら、時に失敗してしまっても成長と学びを信じて何度でもトライと試行錯誤を試みさせてくださるDAZZLEの温かい深い愛を受け止めて、盗賊役を通して、ロングラン公演を通して、Venus of TOKYOを通して実にたくさん学ばさせていただき、より良い表現者に、そしてより良い人間に成長できたのではと未熟ながらに思います。

私は心の底からイマーシブシアターを愛していますし、この表現方法が天職とさえも信じています。この先も国問わずイマーシブシアターとのご縁が続くように己の技術とパフォーマンスを磨いていきたいです。

またVenus of TOKYOで出会えたDAZZLEの皆様、客演の皆様のハイスキルとプロとしての現場での行動力、人間力、在り方をたくさん勉強させていただきました!!!帰国して日本で活動をしてみることに一歩踏み出して良かったと心の底から思います。

さて、Venus of TOKYOの大千穐楽へのカウントダウンが始まりました。毎公演、キャストの誰しもが大切で特別な思いを込めてパフォーマンスに挑みます。千穐楽の週末以外はまだチケットがある回がございますのでお早めにお求めください!!!!!色んな組み合わせで色んな演者によって変化を遂げる役を思う存分楽しんで目撃してください。本当に素晴らしい作品なので一人でも多くの方に没入していただきたいです~!

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DRESSEDUNDRESSEDとのコラボのVenus of TOKYO限定キャラクターTシャツ盗賊Tシャツもぜひこの機会にゲットしてくださいne♪

最後にここまで読んでくださって、ありがとうございました!!!!!皆様の愛ある応援が何よりの励みとなっております。頂いたメッセージも一つ一つ拝見させていただいております。

私の残りの出演日はたったの4日、12公演でございます。

最後の出演回まで精進して参りますので、どうかよろしくお願い申し上げます。

盗賊役 田中真夏

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