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【台湾映画】誰先愛上他的(Dear Ex)

ネタバレなし、きっと観たくなる台湾映画感想文

< もくじ > 
0.ネタバレなしのあらすじ/予告動画/映画プロフィール
1.現代社会における愛の多元的側面
(1)同性愛
(2)親子愛
(3)故人への愛
2.観た翌日、じわじわくる余韻
(1)21世紀のアジア版『Ghost』
(2)スマホの着メロ
(3)社会に訴えること
3.巧みな色彩&イラスト&字幕遣い
(1)台湾の色彩
(2)イラスト効果
(3)中英ダブル字幕

0.ネタバレなしのあらすじ
 母子家庭でワーキングマザーでもある母「劉三蓮」は、あまりのショックに膝から崩れ落ちた。別居の末亡くなった夫「宋正遠」の保険金の受取人が、なんと、浮気相手、しかも男性だったのだ。
 母は浮気相手の男「小王」(*男性の愛人を指す言葉でもある)の家に踏み込み、保険金を取り戻すための戦いを挑むことにした。しかし、14歳息子「宋呈希」による思わぬ反逆が発生!息子は家出し、父親のパートナー小王の家に居座ることにしたのであった。
 母、小王、息子―3人はどうなるのか。保険金は誰の手に。

 タイトルの『誰先愛上他的(英題:Dear Ex)』は、直訳すると、「先に彼を愛したのは誰」ということになると思うが、ぜひ誰か、この映画の良さをひきたてるような日本語タイトルを考え出してほしい。
 なお、個人的な未来予測では、2018年11月現在、日本での上映は予定されていないが、きっと来年あたり日本へ上陸していることと思う。

≪予告動画≫

≪映画プロフィール≫
『誰先愛上他的(Dear Ex)』
上映時間:99分 制作国:台湾 言語:華語 字幕:繁体字中文・英文
公開年:2018年 公開国:台湾

1.現代社会における愛の多元的側面
(1)同性愛
 同性愛が描かれているということは、この作品の特徴の一つである。社会的に同性愛が広く受け入れられていないことが分かるシーンもたくさん出てくる。また、個人的に、台湾社会では、L(レズ)よりG(ゲイ)に対する風当たりが強いという印象がある。
 「宋正遠」と「小王」のラブシーンもあるが、全年齢OKの本作品ではライトに描かれている。
(2)親子愛
 この作品では、親子愛も多く描かれている。母「劉三蓮」から息子「宋呈希」への愛、亡くなった「宋正遠」の息子「宋呈希」に対する愛、「小王」ですら「宋呈希」に対し第2の父のようである。そして、物語後半に登場する「小王の母」にも注目したい。
(3)故人への愛
 台湾における宗教心のなかで、故人をしのぶ心というのは比較的強く、実在の人物が神格化し祭られている廟(*台湾におけるお寺のような宗教施設)もある。
 「宋正遠」という一人の故人を主演の全員(劉三蓮・小王・息子)が愛し続けており、そのことが全員の共通点でもある。
 また、「劉三蓮」と「小王」が保険金をめぐり争う様子は「宋正遠」の愛の奪い合いにも見えた。特に「劉三蓮」が保険金を返してほしいと要求するシーンでは、「宋正遠」の愛を返せと言っているようにも見えた。

2.観た翌日、じわじわくる余韻
(1)21世紀のアジア版『Ghost』

 私が好きな、愛がテーマの映画に『Ghost』(日題:ゴースト/ニューヨークの幻)という洋画があるが、『Ghost』では男女の愛が描かれており、死んだ恋人が幽霊になって会いに来る内容で、非常にキリスト教的要素が強い欧米の映画である。
 対して本作品は、愛がテーマでありながら、21世紀のLGBT含め様々な形の愛が容認されつつある現代社会に即した作品に仕上がっており、仏教・儒教的要素が強いアジアの映画になっていると思う。
(2)スマホの着信音
 強烈に印象に残っているのが、小王のスマホの電話着信音が、パートナー「宋正遠」の録音音声「老公、接電話!(旦那さん、電話に出て!)」であったことだ。
 同性婚は公には認められていないものの、事実婚状態である二人の関係は、夫×夫であり、「宋正遠」の「小王」への愛を感じるシーンでもある。
(3)社会に訴えること
 台湾では、2018年11月24日に統一地方選挙と同時実施の国民投票にて、婚姻の平等等、性的少数者の人権に関する案件の是非を問う投票が控えている。
 性的少数者の人権に対する関心の高まりの中、金馬奨(*中華圏で最も栄誉ある映画賞)を多カテゴリーで獲得し、2018年11月2日に映画が上映開始されたことで、台湾社会への影響力も大きいのではないだろうか。

3.巧みな色彩&イラスト&字幕遣い
(1)台湾の色彩

 台湾らしい色彩というものがある。そういった色、デザインなどが多用されている作品でもある。ぜひ、「小王」の部屋に注目してみてほしい。
 回想シーンではノスタルジックな雰囲気に美を感じた。台湾アーティストの実力はすごい。
(2)イラスト効果
 観客に物事を分かりやすく説明するシーンや、場面の切替のシーンなど、映像にかぶせる形でイラストが出てくる。イラストによってユーモア感が出てくすっと笑わせてくれたり、おしゃれな印象を与えたりしていて、イラストがひとつの効果的な演出をかもしだしていた。
(3)中英ダブル字幕
 台湾の映像業界では、ニュース番組にしろドラマにしろ、中文の字幕がつくことは多い。この映画ではオリジナル作品に中文・英文のダブル字幕がついていて、そのまま海外へ輸出できるようになっている。こういった見せ方
からも、多様性社会を尊重する姿勢がうかがえて良かった。
 遍的な愛というテーマであること、近年世界的にも関心が高い同性愛を表現していることから、世界でも通用する映画になっていることは間違いない。

☆参考サイト☆


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