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接着前処理:粗造化 #00067

インレーやクラウンなどの歯冠修復物(補綴物)の接着操作は、予後の成否を決める重要なステップです。しかし、修復物の材質やセメントに応じて適正な操作は異なり、複雑です。前回の記事(#00065と66)では、接着前処理の分類、そして材質を分類しました。今回は、接着前処理の粗造化の方法について解説します。(池田弘)

 粗造化とは、歯冠修復物の内面に凹凸を形成し、セメントと修復物の間でマイクロレベルの機械的嵌合を獲得するための操作です。臨床的に使用できる粗造化の方法は、サンドブラストとフッ酸エッチングの2つがあります。

 サンドブラストは、硬い微粒子を高圧で吹き付けることで表面を粗造にする方法のことです。英語では、"sandblast"や"airborne-particle abrasion"などと呼ばれます。このサンドブラストは、基本的に金属に対する粗造化の方法です。しかし、ジルコニア(高密度焼結体)とCAD/CAM冠用コンポジットレジンに対して使用することも可能です(*諸説あり)。サンドブラストする際は、対象物から1cm程度の距離から数秒から数十秒かけて、被着面全体をムラなく処理することが重要です。およそ目視で判断できます。ガラスセラミックスに対しては、サンドブラストは絶対に行ってはいけません。なぜなら、ガラスセラミックスが非常に割れやすくなるからです。

 フッ酸エッチングは、ガラスセラミックスに対する粗造化の手法です。フッ酸を被着面全体に塗布することで表面のガラス層がエッチングされ、結果として凹凸が形成されます。フッ酸エッチングした後は材料を綺麗に水洗します。フッ酸エッチングゲルは、猛毒のフッ化水素(HF)を含有するため、素手で触っては絶対にいけません。フッ酸に対して知識がある人が使用しなければいけません。

 粗造化の方法のまとめを下表に示します。

図1

00:43 レジンセメントを用いた接着操作の概要 
01:12 材料の分類と接着前処理
01:29 サンドブラスト
06:32 フッ酸エッチング
12:20 まとめ

補足・訂正

 サンドブラストに用いられる微粒子は、ガラスビーズ、アルミナ、シリカコートしたアルミナなどがありますが、普通はアルミナ粒子を使用します。フッ酸エッチングに使用されるのは、9.5%濃度のフッ酸エッチングゲルです。このフッ酸を用いてe.maxをエッチングする場合には、20秒から60秒の保持時間が適正であると言われています。

動画クイズの答え

Q. サンドブラストで使用されるアルミナ粒子のサイズは?

A. 約50~100 μm

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