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骨はどうやってできるの?:骨代謝の生理:#00052

 前回の私の記事で「骨粗しょう症」について話をしましたが、今回は「骨はどうやって作られるの?」という話です。(船原まどか)

 肌のターンオーバー。人の肌は表皮の一番奥にある基底層から新しい皮膚細胞が生成され、上へと押し上げられて肌の表面に出てきます。それが古くなると垢として剥がれ落ちて、どんどん新しい細胞と入れ替わっていきます。ということを私は中学生の頃に化粧品のCMで学びました。CMってすごい。でも骨の代謝については化粧品のCMは教えてくれませんでした。

 骨の場合、古くなったり悪くなった骨を破骨細胞という細胞が溶かし、その溶けた部分に骨芽細胞が骨を新しく形成することで新しくなります(骨のリモデリング)。

 新しい細胞が押し上げて古いものを排出する肌と違い、骨は先に古いものがなくなってから新しく生成されます。だから新しいものが追い付かないとどんどん古い骨だけ先になくなって、骨の代謝のバランスが崩れます。この新しい骨の生成と古い骨の除去のバランス調整にエストロゲンが関わっています。だから女性は閉経後に骨代謝のバランスが崩れ、骨粗しょう症になるリスクが男性よりも高くなります。

 そして古い骨を溶かす細胞が破骨細胞、新しい骨を作る細胞が骨芽細胞です。破骨細胞はどうやってできるかというと、前破骨細胞のRANKという受容体に、RANKLというタンパク質が結合することで破骨細胞に成長します。
ではそのRANKLはどこから出てくるのかというと骨芽細胞から産生されます。骨芽細胞からはRANKLの他にOPGというタンパク質も産生され、OPGはRANKLと結合することもできます。OPG+RANKLになると形が変わるので、前破骨細胞のRANKに結合できなくなります。

 このあたりが解ると、じゃあこうしたら骨の破壊を遅らせることができるのでは!?などの想像ができて、私はとても面白く感じました(そしてその想像はすでに薬になっている)。

 歯科で骨粗しょう症に関する薬剤の副作用が問題になりだしたころ、ドッと出てきた骨粗しょう症の薬剤名を丸覚えをしようと奮闘していたのですがなかなかに難しく…そんな時に、じゃあこの薬はどういう機序で作用してるの?…えっ骨代謝…?は~エストロゲンがね…?という逆引きのような形で落ち着きました。丸暗記の前に最初から骨代謝についてしっかり勉強しておけば良かったな!と思っています。大学の講義スライドは私の後悔で出来ています。

00:46 骨代謝とは
03:35 エストロゲンの役割
05:08 他の骨粗しょう症の原因

補足・訂正

 骨代謝にはエストロゲン以外にも多くのホルモンが関わっています。今回は、女性に多い骨粗しょう症がテーマですのでエストロゲンの話をしました。他のホルモンに興味がある人は、教科書を復習してください。

動画クイズの答え

 YouTube動画エンディングのクイズの答えは、「RANKL」。

 破骨細胞の最終分化には、前駆細胞である前破骨細胞の受容体(RANK:(receptor activator of NF-kB))にRANKL(RANK-ligand)というタンパク質が結合することにより、前破骨細胞が破骨細胞に成熟します。上記の記事でも述べましたが、RANKは骨芽細胞から供給され、またOPG(osteoprotegerin)も骨芽細胞から産生されます。
 ここが解ると薬の機序がすごく楽しいので、ぜひ復習してみてください~!

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