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確率は第一印象と異なる:ギャンブルについて①

 吉野先生とはよくギャンブルの話をするのだが、どれだけ儲かったか損したかの話をしているのではなく、確率の話をしている。なぜその低い確率に我々は賭けてしまい、手持ちのお金を失ってしまうのか、という議論になる。まずは、ギャンブルで勝利する確率について述べてみたい。(小野堅太郎)

 ギャンブルといってもいろんなものがあり、言葉の定義をはっきりさせておかないと議論が混乱してしまう。ここでは、賭け事全般とギャンブル(賭博)という言葉は同じに扱いたい。パチンコ・パチスロは日本の法律上では遊技であってギャンブルには入らないが、まぁギャンブルに含めて話したい。ギャンブルは身の破滅を招き、周囲に迷惑をかける事があるため、非常に悪いイメージがついている。小野も吉野先生もギャンブルに肯定的であるのだが、身の破滅の引き起こすような事態を許容しているわけではないことを初めに申しておく。

 コインを投げて表か裏が出る確率は1/2、つまり50%、半々の確率である。コインを投げて1回目に表が出た後、2回目に続いて表が出る確率も50%である。え、25%ではないの?と思った人は、過去にタイムトラベルしている。コインの表が2連続して出る確率は、表→表、表→裏、裏→表、裏→裏の4通りのうちの1つなので1/4の確率、25%ということになる。しかし、コインは既に一回投げているので、次に表が出る確率は50%なのである。我々は、「2連続して表が出る確率は低いから、次は裏の可能性が高い」と感じてしまう。コインが細工されていないのであれば、毎回、確率は50%で一定なのである。25%と思ってしまうのは、1回目のコインが投げられる前には成り立っていたが、既に結果が出た後では初期化されてしまう。

 では、表→表→表→表→表のように5回連続して表が出た場合に、次に表が出る確率はどうだろうか。これも50%である。しかし、よく考えてみよう。確率(%)の計算法は、確率100%を出現パターンで割ったものである。表裏の2通りを1回チャレンジなら、2の1乗の2で割るから50%。2回チャレンジなら2の2乗の4で割るから25%。5回チャレンジなら2の5乗の32で割るから3%となる。過去に遡ってコインなげ前ならば、まず起こり得そうもない事に思えてしまう。多くの人がインチキを疑うだろう。もしくは「奇跡!」だと興奮する人もいるかもしれない。

 話を少し変えてみる。当たる確率が3%のクジがあったとする。具体的に例を出すと100本のクジ棒に3つ当たりが入っている状態である。一度引いたクジは元のクジ箱に戻さないといけない。戻さないと、クジ引きが進むごとに確率が変動してしまうので戻す必要がある。さて、当たりクジを引く確率は何%だろうか。多くの人は確率3%なら30回ほど引けば当たるだろうと考える。しかし、統計計算では30回引いて当たりを引く確率は60%となる。半々よりちょっと上ぐらいの確率でしかなく、確率90%にするためには75回ほど引く必要がある。

 この確率がどういう計算で求められるかというと、30回全てはずれる確率を100%から引いている。1回での当たる確率は毎回3%である。30回引く中で、3回目や29回目で当たりを出した場合、それ以降はクジを引かない。よって、当たる確率の計算はややこしい。そこで、計算をシンプルにするために「すべて外れる」確率を出すことにする。そうすると、はずれる確率は97%なので、0.97の30乗をすると0.40、すなわち40%となり、当たる確率は60%ということになる。

 我々の直感は悲しいほどに、確率の見積もりが甘い。コインを5回投げて全て表になる確率3%を「インチキ」と感じるのに、確率3%のクジを引くのに抵抗感がない。確率3%を30回引けば当たるだろうと考えるのに、コイン5回連続で表を出すのは不可能に思えてしまいます。

 さて、ここで賭けをしてみる。コインを5回投げて全て表になったら3000円、当たり3%のクジで当たりを引いたら3000円、参加費は100円。参加費を払えば、コインを5回、もしくはクジを1回引くことができます。どちらかの賭けを選ばないといけません。あなたはどちらを選びますか?

 私は、くじ引きを選びます。1回のチャレンジで3000円もらえる確率はどちらも同じです。コインを5回も投げてハラハラするのを、クジの1回でさっと終わらせたい、という気持ちから選んでいます。ゲーム性を重視する人ならコイン投げを選んだほうがよさそうです。

 いやいや、こんな賭けなんかしたくない、100円も支払いたくない、という人もいると思います。1回で3000円をもらうことになる確率はたったの3%です。とても当たる気がしません。参加費の100円が無駄になるでしょう。しかし、30回やって3000円支払うとして、一回でも全部表もしくは当たりを引けば3000円戻ってきます。その確率は60%です。23回目から確率は50%を超えます。主催者側は23回以上やられると確率的に損してしまうことになります。この賭けは、主催者側に不利な賭けであることがわかります。

 お金をかけるという設定にすることで、単純な確率計算が「賭博黙示録カイジ」の雰囲気を帯びてきました。北九州市は競輪、競馬、競艇とギャンブル施設の揃った場所です。程々に楽しみましょう。

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