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試薬の秤量と溶解 #00101

 試薬の計り方と溶かし方について説明します。バイオ系研究では、水溶液は必須の実験ツールです。正確な溶液を作ることで実験の高い再現性を確保できます。動画を見た後、NaClなど安価な試薬でしっかりとトレーニングしてください。(小野堅太郎)


1.グラム単位の秤量

 試薬を計るのには「電子天秤」を使います。電子天秤は大きく2種類あり、グラム単位を計るものとミリグラム(1000 mg=1 g)単位を計るものがあります。まずは、グラム単位の秤量について説明します。

 電子天秤を使用する際は、初めに「水平になっているか」「前の使用者が試薬をこぼしていないか」を確認します。グラム単位の電子天秤はミリグラム単位ほどの精密さを必要としませんが、水平になっているかどうかは必ず確認してください。すべての電子天秤は水準器が付いているので、丸い気泡が水準器の赤い丸の中に納まるように脚の高さを調整して水平にしてください。試薬がこぼれている場合は(そんなことがないよう使用後は毎回片づけてください)、刷毛などを使用して掃除してください。

丸い気泡が赤い丸の中に納まるように脚の高さを調整してください

 グラム単位の電子天秤で秤量するには、天秤の上に薬包紙、秤量皿、ビーカーのいずれかを置いてゼロ合わせします。薬包紙はいろいろなサイズがありますので、適宜、適切なサイズを利用してください。薬包紙は仕様の際には、折り目をつけます。動画では対角線に2回折る方法を紹介しています。小野は普段は一回しか折っていません。ツルツルの面に試薬を置きますので、ツルツル面が谷になるようにしてください。

ツルツル面にはできるだけ触らないように!

 薬さじを使って、試薬ビンから試薬を取り出します。最初は、ザバっと入れて構いませんが(飛び散らないように)、目的の重量に近づいたら薬さじを指で叩いて試薬を少しずつ落としていきます

少し練習が必要です。

 目的の重量になったら、蓋をして正確な値を読み取ります。足りなければ、先ほどと同様に薬さじを叩いて追加してください。多すぎたら回収します。薬さじで一度とった試薬は、試薬ビンに戻してはいけません。キムワイプの上にとって廃棄してください。

 薬包紙なら数グラムまで計れます。10グラムを超える場合は秤量皿を使用してください。直接、ビーカーに取る方法もありますが、試薬によっては「水を追加しては危険」なものもありますので、安全に注意した上で行ってください(NaClやKClは大丈夫です)。

2.試薬の溶解

 秤量した試薬を蒸留水(or 超純水:MQW)に溶かします。溶解にはマグネティック(電磁)スターラーを使用します。スターラーとは撹拌機のことです。英語ではstirrerなので、発音はほとんど「スター」ですが、日本語ではなぜかスターラーと呼ばれています(同じくピンセットは英語でフォーセップ)。スターラーの内部で金属棒が回転するので、磁石となっているスターラーバーをビーカーに入れると、溶液に渦を作ってくれます。スターラーバーは素手で触らないでください。

うちの研究室では大きなピンセットを使っています。

 渦の程度は、溶液の中心が軽くくぼむくらいにしてください。激しすぎると溶液が外に飛び散ることがあります。必ず、試薬を入れる前に渦を調整してください。

 試薬を入れた後に溶けたかどうかは、「透明になっている」ことを目で見て確認してください。

3.ミリグラム単位の秤量

 では、ミリグラム単位の試薬の秤量法について説明します。1ミリグラムは1グラムの1000分の1ですので、かなり少ない量になります。グラム単位の電子天秤とは違って防振台の上で秤量する必要があります(うちの研究室では「防振床」があるため、その上に実験台を置き、ミリグラム単位の電子天秤を使用しています)。水平を合わせるのはグラム単位のときと同じです。大抵、この電子天秤を使用するときは、毒物・劇物を扱いますのでグローブを必ず着用してください。カプサイシンなど目に刺激性のある試薬の場合はゴーグルをかける必要があります。

 試薬を計る際は、左右の風防扉を開けて、左右から手を入れます。小さい耳かきのような薬さじを用いて試薬を取り出します。

 秤量の基本は、グラム単位のときと同じです。かなり高額な試薬を扱う場合がありますので、試薬を薬さじに取りすぎないように注意してください。

4.超音波を使って溶解する

 試薬が溶けにくい場合は、市販の超音波洗浄機を使用します(他の動画でも解説しますが、モノによってはpH調整や熱を加えないと溶解しない場合があります)。ビーカーを直接超音波にかけます。チューブ内の溶液の場合は、フロート(浮き)を使います。

 もしくは、直接チューブ内の溶液に超音波をかけて溶かす方法もあります。超音波の強度が大きすぎると溶液が飛び散りますので、注意してください。

5.電子天秤の精密さチェック

 溶液作製の成否は、実験の成否に直接影響します。あれ?おかしいな、と思ったら、電子天秤が正常に秤量できているかどうかを確かめてください。うちの研究室では分銅を置いていますので、これを用いて正しく秤量できているかをたまにチェックしています。

 正しく試薬の秤量と溶解ができるようになってください。


解説動画

00:26 g単位の秤量法
04:20 試薬の溶かし方
06:14 mg単位の秤量法
08:34 超音波で溶かす

スターラーバーを「スターラー」と言っている個所がありますが、ご容赦ください。

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