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ブレンデッド生理学実習は成功したか!?:2020年オンライン大学教育を振り返って③

 2020年の最大の苦労は、生理学実習のオンライン化でした。1ヵ月ほど徹夜で動画編集しました。その他のコンテンツ作成から、出席管理、発熱者対応、感染対策、三密対策、二回繰り返し実習など、忙しくてあまり記憶がありません。記憶を絞り出してみます。(小野堅太郎)

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 ブレンデッドとは、オンラインと対面を交互に組み合わせた形式のものです。九州歯科大学での2020年度生理学実習は、午前中にオンラインによる自宅学習を行い、午後は対面で実習テストを行いながら同時に実験データを回収し、後日オンラインでレポートを提出するという形式でした。まさしくブレンデッド実習です。実習テーマが5つあるため、学生100人を5班に分けて行いました。1班1日1テーマで、5週にわたってローテーションで全員が5テーマすべてを履修します。

 実習内容の解説を動画にまとめていますので、それを見てもらったうえで午後の対面実習時間中に「実行できるか」を試験します。5班をさらに2班に分けて、時間をずらして午後に登校してもらいました。三密回避の目的もありますが、実習試験ですので人数が一度に20人以上もいると採点が不可能です。午後の登校初めに10分ほど実際の機器を触らせてシミュレーションしてもらいます。

 これまでのフル対面の実習と比べて、動画にまとめているので「説明を繰り返さなくていい」のと「対面での実働が午後だけになった」ので当日の肉体労働はへったなぁという感じです。ただし、事前の動画の作製はかなり大変でした。あと、午後からの登校なので、遅刻者がいなくなることを期待していましたが、朝からの登校であった2019年度以前と変わらない人数の遅刻者がいました(残念)。

 ブレンディッドにして一番よかったなぁというのは、欠席者の追実習がかなり楽になったことです。12月ということもあり軽い発熱や咽頭痛を訴える学生さんがかなりいたのですが、症状が出た時点でPCR検査を受けていないならば登校禁止でしたので、例年にない欠席者がいました。本人の不手際で欠席しているのではないので当然追実習を行うのですが、1~2時間で済みました。例年ならば、一人のために1日必要なため、教員のスケジュール調整なども必要になり大変でした。

 一番心配していたのは、「動画解説を見ただけで実習ができるのか?」でした。ですので、第1回、2回目の時は心配でしたが、ほとんどの学生が問題なく実行できていました。まれにできない学生さんがいるのですが、明らかに解説動画を見ていないと思われ、当然、悪い評価点が付きました。オンライン実習部分をちゃんとやらない学生さんがいたことは大変悲しいことです。しかし、結果的に他の同級生がちゃんとできるのに自分ができなくて焦っていましたので、後で勉強してくれたことと思います。サボっていた分だけ、成績評価にも反映されています。また、解説動画自体はYouTubeで公開しているので、いつでも復習が可能です。

 解説動画の中で、「血圧」と「心電図」は現在でもずっと視聴されていて、視聴回数はそれぞれ5000と10000を超えています。実習の学生さんだけではなく、おそらく、他の医療系大学の学生さんに観ていただいてるのではないかと思っています。あと、実習を進める中で、小野が担当する「味覚」と「唾液」の実習に関して、note記事で補助的な考察を上げて、学生さんにレポートの参考にしてもらいました。何人かは、その記事を引用してレポートをまとめてもらっていたので、嬉しかったです。

 レポート提出は例年手書きOKにしていましたが、2020年度はPDFでのオンライン提出にしました。しっかりとレポートを作るのならば、明らかに手書きよりWordの方がいいのですが、書式を自由にすると7割が手書きでの提出でした。そうすると字が読みにくいものがあり、評価にかなりの時間がかかっていました。また、「あれ、同じような文章を他のレポートで読んだぞ。」と剽窃が疑われる事例が出ても、探すのが大変で見つからないこともしばしばありました。今回はデジタルですので、とある剽窃検出ツールを使うことで一発検索できました。

 動画作製の労力を除けば全体的に良いこと尽くしでした。現在の感染症の状況が緩和しても、このやり方を継続しようと考えています。記事タイトルの「ブレンデッド生理学実習は成功したか!?」は、教員視点から見たら「成功した」でした。バタバタしていたので、学生からアンケートを取ったりしていないため、学生からの評価がわかりません。ただ、実習が終わった後の学生さんたちの表情を見ていると「学んでくれたかな?」と感じています。

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以下は、九州歯科大学生理学実習での公開コンテンツです。

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