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カメの甲羅は肋骨(ろっこつ)

 カメの甲羅の内側を見たことがありますか?私が歯学部の学生だったころ、お隣の医学部の解剖学教室に、カメの甲羅の研究をしていた先生がいらっしゃいました。「カメの甲羅の中が気になります」というと、その先生は快くカメの骨格標本を見せてくださいました。 

カメの甲羅の内側には…

 背骨が張り付いてました。というか、背骨と肋骨が一体化して、甲羅を作っているといった感じでしょうか。骨格の一部なので、カメは甲羅を脱ぎ捨てることはできません。ここでちょっとこの構造に違和感を覚えませんか?自分にも、背骨と肋骨が繋がって背中側にあります。でも、その外側には肩甲骨が張り付いています。カメの肩甲骨はどこにいった?

カメの肩甲骨

 カメの肩甲骨は、甲羅(=背骨と肋骨)の内側にあります。ほかの動物と比較すると、背骨&肋骨と、肩甲骨の2つの位置関係が逆になっています。なんとも奇妙な構造をしています。
 肩甲骨は鎖骨を介して上腕骨を胴体につなげる役割を担っています。肩をすくめたり、腕の上げ下げや腕を回すといった腕の運動と連動し、その自由な動きをサポートする役割があります。このような役割を持った肩甲骨が背骨&肋骨の内側にあることで、カメのあの特徴的な動きが可能となっています。

カメは〇〇を引っ込める

 カメの特徴といえば、手足を甲羅の中に引っ込める動きですね(首も)。これは、腕を引っ込める役割を担う肩甲骨が甲羅の内側に入り込んでいるからです。足を引っ込めるために必要な骨盤も甲羅の内側に入り込んでいます。この動きこそ、カメの特徴的な骨格が可能にした動きなのです!

カメの発生過程を考える 

 実は、カメの発生過程(受精卵から固体になるまで)を見てみると、途中まではほかの脊椎動物と同様の形態をしています(ヒトも犬も猫も鳥もカメも同じ形)。ところが、発生のある段階で、カメの肋骨は内側ではなく外側に張り出すように伸びだし、甲羅の元となっていきます。張り出した肋骨は肩甲骨の原基を甲羅の内側に巻き込んでしまうのです

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 カメは進化の過程で他の生物に類を見ないような独特の形態を獲得しました。硬い甲羅は外敵から身を守るために最適のアイテムでしょう。手足も頭も硬い甲羅の中にしまわれてしまったら、敵はなすすべもありません。ただ、甲羅を獲得するのと引き換えに、素早く手足を動かして移動するという機能は手放さざるを得ませんでした。

 地球上には本当に面白い形の生き物がいるなぁと、私はいつも感心させられっぱなしです。本当にすごい!おもしろい!奇跡!地球に生きててよかった!皆さんも是非、そんな目で生き物たちを眺めてみてくださいね☆

カメの進化についての詳細は下記の「新版 動物進化形態学」( 倉谷滋 著、2017、東京大学出版会)を参照してください。ほかの生物の進化についても詳しく書いてあります!


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