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日本の教育を考える

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他のクリエイターの皆さんの記事も含めて、教育に関する内容をまとめています。具体的な教育方法の提案、オンライン講義について、教育とは何かといったさまざまな議題について議論します。教… もっと読む
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#大学教育

教養系コンテンツの正確性はどこまで担保されるべきか

 種々の学術系コンテンツ(動画や記事)をネット検索し、容易に学べるようなったこの時代。その情報の正確性はどのレベルまで求められるのかを考察したい。(小野堅太郎)  オンライン学習を余儀なくされるこの時期。多くの教養系動画コンテンツが上がってきている。中田敦彦さんなど芸能人の動画を見させていただくとレベルの高さに驚かされるが、用語の使い方に間違いもあり、訂正したい衝動に駆られる。ネット記事を見ていたら、こういった間違いが訂正されずに拡散放置されている状況はよろしくないというも

オンライン授業普及後の将来予想

 前の記事で、大学においてオンライン授業はこれからも生き残る、との論旨を書いた。もしそうなったとして、どんな状況になるのかと想像してみた。ちょっと紹介してみる。(小野堅太郎) 1.時間割の枠組みが変わる オンライン授業が継続されるといっても、状況が改善すれば対面授業を復活させる教員も多いだろう。時間割にオンライン授業と対面授業が混在してしまうと、学生は学校に来たり、家に帰ったり、急いで学校に戻ったりと訳の分からないことになる。午前と午後の間に十分な時間を空けて、対面型とオン

オンライン授業は今後も続く

 本学でオンライン授業が4月から始まり、3か月ほどたった。学生登校が始まった現在でもオンライン授業は続いており、全学的にアンケート調査が行われている。光と影が見えてきたので、考察してみる。(小野堅太郎)  1か月前(6月頭)に、「大学でオンライン講義は定着するか」という記事を書いた。せっかく習得した講義の録画・編集能力とコンテンツが今後活かされるのか、という不安が綴られている。1か月前の自分に言いたい、「大丈夫、間違いなく活かされる」と。  小野は時間割で決められた授業開

授業評価の落とし穴(ある歯学部の話)

 九州歯科大学では授業の質を上げるために、授業評価が行われている。学生が教員を匿名で評価し、点数と学内教員順位が出てくる。加えて、各教員は大講座制における講座長から1回だけ講義見学があり、点数化される。極力、一般論に落とし込んで、考察してみる。(小野堅太郎)  授業の評価とは、教育の効果が上がっているか、を評価することである。教育とは何かと考えてみると「できないことが、できるようになる」ことである。「できない」を「わからない」と置き換えることもできるが、「わかった」ところで

オンライン講義に双方向性が必要か

 オンライン講義といっても、講義を動画にして配信する方法とZoomやTeamsで双方向的な講義を展開する方法とがある。本来の対面式講義に近いのは双方向性であるが、教育効果を考えた場合どちらがいいのかは悩む点が多い。今回はこれについて考察してみる。(小野堅太郎) そもそも対面式講義に双方向性があったか 双方向性というのは、学生が授業中に質問出る環境にあったか、ということが必要となる。対面式の講義にて、学生から次々と質問が出るような状況であったなら、「双方向性」においては自信を

基礎実習のオンライン化を考えなければいけない(その1)

 対面講義さえ中止しているさなか、対面でしか行えない実験などの基礎実習はどう対応すればいいのか。三密を避けた基礎実習のためにオンライン化はどこまで可能なのかを考察したい。(小野堅太郎)  歯学部における実習は大きく3つに分けられる。私のような基礎医学系教員が行う実験などによる「基礎実習」、臨床系教員による模型を使った手先トレーニングを目的とした「臨床前実習」、そして実際に患者さんの治療に携わる「臨床実習」。これらは目的によって分けられている。基礎実習は、座学で学んだことを実

基礎実習のオンライン化を考えなければいけない(その2)

 その1で基礎実習のオンライオン化は避けられないとの論旨を書いた。もちろん2020年の世界的災禍が収まって以前通りの実習環境に戻ることもある。様々な可能性の共通項から具体案を考えてみる。(小野堅太郎)  私の受け持つ生理学実習は、「唾液」「味覚」「咀嚼」「血圧」「心電図」の5つの項目からなり、研究室(分野)外の先生も参画してそれぞれに最低1名の教員(総5人以上)で行っている。実は生理学の実習を必ずしなければならないという決まりはなく、各大学の教員(主に担当教授)が必要と設定