見出し画像

中小企業DX成功事例 [会宝産業] 自動車中古部品の世界的プラットフォーマーへ

高品質な日本車の解体部品を世界中にリサイクルし、環境問題の解決を目指す

石川県金沢市の老舗の中小企業「会宝産業」はDXにより自動車解体業者から自動車中古部品販売の世界的プラットフォーマーへと事業を発展させた。

会宝産業は1969年に創立し、長年、自動車解体を主要事業としていたが、高度経済成長期に公害問題にあえぐ日本社会を見つめる中で、解体部品のリサイクルが必要と考え、それを担うエコシステムの構築を目指した。

そして国内だけでなく、アジアやアフリカ、中南米など世界各国へ中古部品を輸出するビジョンを描いた。

構想当時は海外のバイヤーが部品を買い付ける場合、商談による価格交渉が当たり前だった。また、部品の品質や状態が共有されていないため、部品の品質を保証する仕組みが必要だった。そこで会宝産業はITでこの問題を解決しようとした。

経済産業省「IT活用型経営革新モデル事業」に応募し、KRAシステムを開発

会宝産業は2004年、経済産業省「IT活用型経営革新モデル事業」に応募し、助成金を活用して、中古自動車部品の製造・販売基幹業務統合管理システム(KRAシステム)を開発した。

KRAシステムは中古部品の在庫管理データベースシステムを核に仕入管理、販売管理、生産管理などのサブシステムで構成されており、国内外の自動車リサイクル工場とつないで入庫から出荷までの一括一元管理を可能にした。

KRAシステムはクラウド基盤上で構築されており、自社だけではなくインターネットを通して、国内外のアライアンス企業にもSaaSとして提供した。

利用企業はKRAシステム導入により、在庫管理、品質管理の精度が向上し、一定の基準で品質や状態を評価して価格を決め、市場へ流通させることが可能になった。また、KRAシステムに蓄積された過去の取引データによって、国や地域ごとの需要動向をつかみ、価格調整ができるようになった。 
更に世界中で集めた市況データから、部品価格を蓄積し、廃車の仕入れ価格や部品の販売価格を算出して取引ができるようになった。

KRAシステムを強みに独自の販売ルートを開拓し、世界展開

会宝産業はKRAシステムを強みにして、商社に頼らない独自の販売ルートを開拓した。

その結果、世界74ヵ国と取引実績を持つまでに事業を成長させた。

また国内約30 社の自動車リサイクル関連事業者と「NPO 法人RUM(リ・ユース・モータリゼーション)アライアンス」を設立し、部品調達・供給などで連携を深め、自動車リサイクル事業の普及・標準化のリーダー的役割を果たしている。

中小企業でも世界を征するプラットフォーマーになれる!

会宝産業は、まさに自動車中古部品のグローバルプラットフォーマーと言える。

会宝産業は、この事業モデルを、インドなど海外にも展開しており、発展途上国の環境問題の解決に大きく貢献している。

デジタル技術の進化により、クラウド上のシステム構築は低コストで行えるようになった。

会宝産業の事例は資金力が弱い中小企業であっても、優れたリーダーシップ、ビジョン、戦略があればプラットフォーム・ビジネスにおいても成功できることを証明している。


参考

会宝産業株式会社 ホームページ / 会宝産業株式会社
「解体屋」から、中古部品の世界的プラットフォーマーへ / 『WIRED』日本版
「途上国のAmazon」になる⁉こんなスゴイ日本企業があったのか / 現代ビジネス
 会宝産業株式会社 ~中古エンジンの性能を可視化し、世界的マーケットの創造を狙う / SPRING(サービス産業生産性協議会)
インドで車リサイクル 会宝産業、現地に解体工場 / 日本経済新聞


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?