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サンタアニタパーク競馬場に行ってきた話

世界各国の競馬場に行くことが夢なのですが、先日、LA旅行でその夢を一部叶えることが出来ました。

サンタアニタパーク競馬場とは

アメリカ西海岸最大の都市、ロサンゼルス。ハリウッド等に代表されるエンターテインメント産業が極めて盛んな地域であり、スポーツ分野に限ってもメジャーリーグ、ロサンゼルス・ドジャースやNBA、ロサンゼルス・レイカーズ等世界有数の名門チームが名を連ねています。
競馬に関しても例外ではなく、西海岸で最大級であるサンタアニタパーク競馬場・ハリウッドパーク競馬場(後者は廃止されましたが...)だけでなく、ロスアラミトス競馬場などロサンゼルス近郊だけで3つの競馬場が存在しています。

その中でもサンタアニタパーク競馬場はアメリカ西海岸競馬の中心地として、数多の名馬・名レースを輩出してきたことで知られています。近年では後続を13 1/4馬身差でぶっちぎったフライトラインのデビュー戦などが印象的でしょうか。

西海岸という立地から遠征が比較的容易であることから日本との関わりも深く、古くはハクチカラによる史上初の日本馬による重賞制覇に始まり、昨年だけでも9頭の日本調教馬が同競馬場に遠征しています。

現地へ

アクセス

Union Station(空港からの直通バスもあります)

海外の競馬場としては比較的アクセスが容易であり、LAの中心駅的な存在であるUnion Stationから電車で約40分程度。Arcadia(アルケィディア) Stationで下車し、20分程歩いた所に位置しています。
ご存知の方も多いと思いますが、LAの公共交通機関は基本的に治安が世紀末で、実際このUnion Station周辺もヤク中やホームレスが跋扈しています。とはいえ電車自体は割と安心して乗れるレベルだったので、昼間に競馬を観に行く分には特に影響はありませんでした。Arcadia Stationから競馬場までは完全に閑静な住宅街という感じで、基本的にはタクシーやレンタカーを使わなくても安全に行くことが出来ます。

道路から競馬場へ

駅から20分程度歩くと程なくして競馬場の敷地が見えてきますが、駐車場の入口しか見えず「徒歩で入っていいのかな...?」と心配になります。
ただ周りを見渡すと、恐らく近隣に住んでいるであろう競馬ファン兄貴達は普通に車道を歩いて入っているのでそれに追従。

競馬場入口にて

クソほど広い駐車場を暫く進むと競馬場のゲートが見えてきました。

日本の"公営競技"という感じの無骨な建物とは異なり、ディズニーランドを彷彿とさせるような印象的な建物が目に入ります。
入場料は$10。受付で支払うのですが、この日は既に半分程のレースが終わった段階での入場であった為、半額の$5で大丈夫でした。

競馬場内 パドック

パドック付近から

場内も「馬券販売機が並んで〜」といった日本の競馬場とは異なり、どちらかと言えばテーマパークや公園のような感じなのですが、レースが近づくと雰囲気は一変。丁度着いたタイミングがレース発走時刻近くだったのですが、勝負師のような目でパドックを見るオヤジ達、ビジョンで騎手の名前を怒鳴るオヤジ等々......なんか見慣れた光景が広がっています。
オヤジ達の会話に耳を立てると「この馬のSire(父)は〇〇だからこの条件は〜」みたいな会話も聞こえてきており、本当にこの辺はどの国も変わらないなと思いました。

パドック付近ビジョン

この日のメインはリステッド競走で、他場でも特に特筆すべきレースはありませんでしたが、人入りとしては白鷺賞のある日の姫路競馬場(≒メインが2勝クラスの日の土曜の小倉)くらいには人が入っていましたね。

馬がパドック入りする際は写真左の黒い道路上を通る
馬との距離の近さも魅力
パドック
場内にはサラブレッド以外の馬も

スタンド

パドックも程々に、スタンドに入るとまず目に付くのはパブ。丁度パドックを見ながら飲める位置につけており、正直ここで酒を飲みながら競馬を見るだけでも1日過ごせそうな感じです。


さらに進むと見えてくるのは馬券販売所。日本でもお馴染みの機械で買って〜というスタイルの馬券発売機が。
とはいえこの機械は専用のカード(?)がないと馬券購入が出来ない様子。

馬券販売機

どうすりゃいいんだ...となりますが、そこで目に入ったのが手売りの馬券販売所。日本ではなかなか見ることが無くなったスタイルですが、アメリカではまだまだ現役です。

馬券の購入方法はそこまで難しくなく、「第〇レース」「馬券の方式(単勝や馬連など)」「購入する馬番」を伝えるだけなので単勝(英:win)などの英訳を知っていれば英語が出来なくても購入はできます。ちなみに馬券方式等の英訳に関してはクソ緑JRA様が海外競馬英和辞典というサイトを作成しているので、訪問前に軽く目を通しておくとより楽しめるでしょう。

実際に筆者も馬券を購入
レースに関しては下調べをしていなかったので適当にデットーリと木村和士が乗る馬の単勝を

その他スタンド内には飲食店も。
筆者は滞在中三大欲求すら忘れ競馬に没頭していたのですが、巻き込まれて連れてこられた友人二人はここで食事をとっていました。アメリカでは外食は高い高い言われていますが、下記チキンは13ドルほど。量も割と多かったらしく、円安さえ考えなければまぁ普通の値段なんじゃないでしょうか。
味は「アメリカンって感じでおいしかったけど、量が多いから胃もたれする」そうです。

その他場内観光スポット等

さて、サンタアニタパークは歴史ある競馬場なので、当然競馬オタ垂涎モノの観光スポットも沢山。
その中でもとくに有名なのは今から紹介するゼニヤッタ像ではないでしょうか。

同地だけでBCクラシックをはじめとしたGⅠ5勝、現役通算ではGⅠ13勝、19連勝。史上最強牝馬との呼び声も高い西海岸の女傑。”あの”ゼニヤッタの銅像が目の前に!!!
しかも、特徴的なゼニヤッタ歩き(日本ではドゥラメンテ歩きとも)のポーズで!!!

もう感動で涙が溢れそうですが、反対側にはなんとジョンヘンリーの銅像も!噴水挟んでトータルG Ⅰ29勝ですよ。どんだけ贅沢なんですか。

ここサンタアニタパークを拠点に、40年近く経っても未だ破られないアメリカ記録のGⅠ16勝を記録し、ケルソ・フォアゴーと並んでアメリカ史上最強セン馬の一頭にも数えられる名馬です。OKB君
同期はアファームドにアリダー、日本だとホウヨウボーイやシービークロスなど、歴史に両足突っ込んでいる名馬の記念像をいることができただけでもアメリカに来たかいがありました。

そして当然、ここには『今』を生きる名馬ゆかりのスポットも。

比較対象はセクレタリアト、21世紀の北米最強馬のフライトラインの壁画です。僅か6戦の短いキャリアでしたが、そのうちデビュー戦とマリブSの2戦をここサンタアニタで過ごした為か、場内でもかなり目立つ位置に壁画がありました。5年後には銅像も立っていそうですね。

他にも場内には日本同様土産物屋もあり、競馬ファンとしては寄っていきたいところでしょう。日本と文化が異なる為か「名馬のグッズ」的なものは少なかったですが、それでもゼニヤッタやセクレタリアトのグッズがありました。
中でも興味深かったのは書籍コーナー。シービスケットやファニーサイドといったアイドルホースに関する書籍が多くあり、これらの馬の日米間での知名度の差を感じました。オグリキャップが海外の競馬ファンにはそこまで知られていないのと同じような感じでしょうね。

筆者も50ドルほどいろいろお買い物をしましたが、旅行一日目ということもあり浪費を自重してしまったのを少々後悔しています。特に先述のファニーサイドの書籍なんかは買っておけばよかったなと…(日本では資料が少ないので)

レース

パドック~コーストラック

パドック~コーストラックまでの通路はファンもほぼ真横を通れるようになっています。

この辺の距離感の近さは、昨年のブリーダーズカップの際の池添騎手への密着動画でも映されているので必見です(下記動画3:00頃から)。

サンタアニタは日本でも割と名の知れた騎手が多く拠点にしており、昨年から同地を拠点に移したデットーリ騎手や昨年マンダリンヒーローに騎乗した木村和士騎手、ルーラーシップの主戦であったリスポリ騎手などを目と鼻の先で見ることができます。

特に筆者は生デットーリを見る機会がなかなかなかったので、彼を目の前にしたときは興奮しっぱなしでしたね。
木村騎手に関しても、カナダかサンタアニタにでも行かない限り、まぁ見ることができない方なので、生で見れたことには感動でした。
惜しむらくは色紙もサインペンも忘れたこと…これだけ距離も近いのでサインも結構もらえるらしく、この2人のサインは是非手に入れたかった…(まぁ実はデットーリのサインは持っているのですが)

いざレースへ

馬場入り
場内との距離感的には大井辺りと似た感じ

空港に昼に着き、そのまま来たこともあり、競馬場で見ることができたのは8レースと9レースの2つ。出馬表を見てみると、ジャスパークローネの父Frosted産駒や、昨年日本でも産駒デビューを果たしたアニマルキングダム産駒などがちらほら。他にも『カリフォルニア州産馬』という表記がある馬がいたのは西海岸独特という感じで興味深かったですね。

ゲート移動中
ゲート入り

競馬自体は私もいつも見ているアメリカ競馬という感じでしたが、なんといっても景色が絶景。『アメリカ一景色の良い競馬場』の評判は伊達ではなく、奥に広がる雄大な山脈は改めて北米大陸のスケールの大きさを実感できました。5日間様々な場所に行きましたが、これほど息を飲むような絶景は他にありませんでしたね。

レースが始まり場内を見渡すと「Go! six!」といった日本でも聞き馴染みのあるオヤジたちの声が。ゴール板を過ぎるとそれらの声が「Yeeeeeees!」か「Fu○k'n!!!」に変わるのはご愛敬。
中でも息子2人連れて、ベンチで胡坐かきながら馬券を握りしめていた上下スウェットのお姉さんの姿は印象的でした。

欧米の競馬場ではよく「ドレスコーデがある」みたいなウワサがありますが、ここサンタアニタは割と庶民派な競馬場であり、上記のお姉さんのような上下スウェットの人もそこそこいます。その点は旅行者でも気軽に行けるポイントじゃないでしょうか。

終わりに

今回、人生で2箇所目の海外競馬場訪問だったのですが、ここサンタアニタパーク競馬場は"日本の競馬ファンにも気軽にオススメ出来る海外競馬場"でした。

近年ではマリファナ解禁によりLA市内の治安が致命的に悪化していますが、競馬場内の治安は今回LAの様々なスポットを巡った中で1,2を争うレベルで良かった為、安心して訪問することが出来ます。
加えて、現在この競馬場ではデットーリのような世界的名手から日本にゆかりのある騎手まで、重賞等が行われていない日でも見どころが沢山あるところも素晴らしかったです。

LAといえばNBAのレイカーズ、MLBのドジャース等、エンターテインメント関連だけでも観光スポットが沢山ありますが、競馬ファンの皆様は人生に一度くらいサンタアニタパーク競馬場を訪れてみるのも良い経験ではないでしょうか?

筆者はアメリカ帰国の翌日に阪神競馬場で「サンタアニタから中0週のローテで来ました」って言い放ちました。オススメです。

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