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一人で旅に出た理由。

人生3度目の竹富島は、人生初めての一人旅となった。

「竹富島にいます」と知人がSNSに投稿しているのを見て、今年の夏は竹富島に行きたいなと思った。竹富島は思い入れのある場所。とはいえ初回も2回目も今回も、自分から積極的に計画を立てたわけではない。竹富島に行きたいなと思いつつ、当初は割と悠長に構えていた。

「竹富島に行きたいなぁ」

知人のSNSを見た日、夫にそう言った。その時は1人で行くなんて発想はまったくなく、とりあえず思ったことを投げただけだった。夫の反応は「また何か言い出した」といったところだろうか。口には出さなかったが、何を思っているかは雰囲気でわかる。

私の発言にどれぐらいの時間的猶予があるのかを押し測ってもいるようだった。彼からすれば、つい数日前に結婚記念日旅行をしたばかりなのだから当然である。仕事もある中、そうほいほいと旅行に行くことはできない。その辺りは私も分かってはいたので、まだ全然すぐの話とは思っていなかった。そもそも昨今、日本の夏は長いのだ。

届いたお知らせ

様子が変わってきたのは、それから1週間も経たない頃だ。先ほど時間的猶予と書いたが、この猶予は唐突に短くなることがある。その週はセッションの予定が集中していて、何人もの人の話を聞いていた。(不定期で個人セッションを募集している。)その中で、ある方が口にした「一人旅」という言葉がセッションが終わった後もやけに心に残っていた。

いやいや、気のせい気のせい。とりあえず思考を逸らして(だって気づいてしまうと都合が悪い)Instagramを開く。ふと目についたストーリーをタップしたら、過去に何度かお会いした方が海外で一人旅をしていた。タイムリーが過ぎるとはこのことだろう。お、おぅ……。正直身構えた。いや、でもまだ大丈夫だ。まだ2回目、まだ2回目だから……。

自慢じゃないけれど、これまで人生37年生きてきた中で一人旅をしたことは(記憶が正しければ)1度もない。国内、海外ともに旅行することは少なくなかったし、一時期海外に住んでいたこともある。けれどいずれも同行者、または現地で合流する人がいた。そして大概の場合、旅行プランやさまざまな手配は、そういったことに詳しい人や得意な人が結構なところまで担ってくれていた。私はいつも希望があれば伝えるだけ。ようは、いつだって連れて行ってもらう側、現地でアテンドしてもらう側だったのだ。

知人のストーリーを見ながら「いやいや、ないない」と自分に言い聞かせる。一人旅はする気がない。むしろしたくない。計画や手配を全部自分でやるなんて……!(そういった類は苦手である。)何かあった時に1人で対処しなきゃいけないなんて……!(特に竹富島ともなれば虫との遭遇が恐怖だった。)けれど一方で避けられない予感もしていた。なぜかって、一人旅をしなければならない理由には、思い当たる節がある。

夫婦別行動

少し話は変わるけれど、私が夫と結婚したのは2022年の7月のことである。お互いに在宅ワークのフリーランスということもあり(夫は法人化しているが)、夫とは今日までほとんどの時間を共に過ごしている。

どちらかが(大抵は夫が)出張で不在の時はあっても、基本的にはニコイチで行動。というか、私がこの2年ですっかり単独行動をしなくなった。友人と会う時にはもちろん自分だけで出掛けるが、私が個人的に興味をもったイベントには夫を誘って出掛けていく。普段の買い物もカフェも、近所のお散歩すらも一緒。私が持っている夫婦の理想形として「一緒がいい」「"私たち"をやりたい」という希望が強くあったため、私個人に関して言えば夫と一緒じゃなければ出掛けないということすらあった。

ところが結婚3年目。先月に迎えた2回目の結婚記念日に、3年目の抱負として私が口にしたのは「それぞれの世界を広げていく」というものだった。(ちなみに夫も似たようなことを口にしていた)

結婚してからの最初の2年で「私たち」はある程度やり切った感じがしていた。それはイコール、夫婦としての地盤をある程度築けたということでもある。そしてここから先は、そこ(私たち)に固執するのは良くないだろうと私も夫も感じていた。「私たち」の地盤をさらに大きく強くしていくためにも、個々の世界に目を向けて広げていくフェーズに入ったというのは、夫婦共通の見解だった。

いつかの新潟、酒蔵ツアー

そんなわけで、最近は夫婦で別行動をすることが増えていた。とはいっても私が単独で出掛けることはほぼなく、夫単独で出掛ける回数が増えた分、私が外に出る回数が減っただけではあった。

私は元々家の中に引きこもりがちで、誰とも会わなくてもさほど苦ではない性分をしている。そしてこの2年(どころか、夫と付き合い出した頃からも含めると4年以上)で、誰かと会う以外ではすっかり1人で出掛けなくなった。けれど単独行動の必要性を感じる今、自分の興味関心に沿って出掛けていかなければならない。しかも、誰も伴わずに。

だからこそ「一人旅」という言葉に反応したのだろう。それぐらいのことをしなければ、変化が生まれないと感じていたのかもしれない。

そして3度目のお知らせが届く

いよいよ腹を括ったのは3度目のお知らせが届いた時だった。その日も私はセッションをしていて、お相手のお話に耳を傾けていた。その方は奇しくも一人旅が好きな方で、「あぁーー来たかぁーー」と内心では感じていた。1度ならず2度、そして3度。ここまで来たらもう逃れてはいけない。

「竹富島には1人で行かないといけないかも」

そう言いながら夫に伝えた言葉には、まだ行かない可能性も含まれていた。そもそも1人で行ったとして、竹富島で何をして過ごすんだろう?(竹富の海に還りたいという気持ちだけはあった)

けれどひとまず、飛行機と民宿を調べてみることにした。もし本当に単独で行くのなら、悠長に構えるのは何かが違う。早ければ早い方がいいだろう。そう思っていたらなんと、8月の飛行機(マイルを使った特典航空券)が見事に完売してしまっていた。流石は夏休みのハイシーズン。9月の飛行機なら予約は取れるが、夫婦で行くならまだしも自分だけなら遅いと感じる。7月を見てみたところ、自分の予定と照らし合わせて月末の2泊3日の往復便が1席だけ残っていた。

「来週じゃん……」あまりに急なスケジュールに内心動揺しつつ、民宿を検索する。飛行機の予約が取れても泊まる場所がなければ意味がないからだ。調べたら唯一、1つの民宿の1つの部屋だけが予約可能と出た。そうなれば最早悩む余地なんてない。1分1秒が命取りな中、すぐさま民宿と飛行機の予約を取った。「え、本当に行くの?」予約完了のメールが2通届いたのを確認して、最初に思ったのはそれだった。

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