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チームカルチャーを育むためにChatGPTを活用してグループワークをしてみた話

以前のnoteでは、スキルギャップ分析を活用してチームメンバーとのコミュニケーションおよびキャリアディベロップメントについて考える例を出した。今回はChatGPTを活用して、チーム全体に対して良い影響を与えるようなグループワークを実施したことを共有しようと思う。

ジョハリの窓」という心理学のフレームワークがある。これは、自分自身と他人の認識の違いを明らかにし、コミュニケーションと相互理解を改善するのに有効な手法だ。

ジョハリの窓は、人間の特性や情報について、自分が認識しているか否か、他人(この場合は他のチームメンバー)が認識しているか否かに基づき、以下の4つの窓があるという考え方に基づく。

開放の窓: 自分と他人が共に認識しているもの
盲点の窓: 他人が認識しているが自分は認識していないもの
秘密の窓: 自分は認識しているが他人には見せていないもの
未知の窓: 自分も他人も認識していないもの

グループワークを始めるうえでは、自分のチームに重要と思われる要素を抽出して、事前に20-30の特性リストを用意し、チームメンバーに自分に特に当てはまるものを挙げてもらうこととなる。

私がChatGPTのない時代に、マーケティング部署のマネージャーとしてこの「特性リスト」を作る際には、即時に思いついたものとして以下のようなことを挙げだろう。

  • リーダーシップ

  • プロジェクトマネジメント能力

  • コミュニケーション能力

  • チームワーク

  • 情報分析能力

  • コンプライアンスの意識

  • クリエイティビティ

人間のマネージャーの限界があるのは、この「特性リスト」がマネージャーの認知バイアスを受けることである。どうしてもマネージャーが望む特性に偏るし、過去の社会人経験の延長線で物事を考えることとなる。

私はChatGPTを活用することによって、このバイアスを排除することを試みた。

このリストを土台として、私はワークショップを以下のプロセスで進めていった。

  1. チームメンバー全員にこの30のリストを提示し、意味が似ているもの、不要と思うもの、言い換えたほうが良いと思うものなど、推敲のプロセスを共有した。

  2. 20の特性の中から、「自分が認識している」と思う5つの特性をメンバーにリストアップしてもらった。

  3. 「他のメンバーが認識している」と特性について、同じように5つを、各メンバーごとにリストアップしてもらった。

そのうえで完成したリストがこちらである。

注:個人情報に関わるため、結果の一部をランダマイズしている


また、これらの結果をもとに、ChatGPTにチームの特徴を分析してもらい、さらにチーム内でのフィードバックおよびディスカッションの一助とした。


この研修を通じて得られた学びが3つある。

1,ジョハリの窓のアプローチを取り入れる際、特性の抽出における属人性を排除できることは大きな利点だ。従来の方法では、マネージャーの個人的な見解や経験に基づく特性リストの作成が避けられないが、ChatGPTを用いることで、客観的かつ多様な特性を抽出することができた。

2,従来はこの「特性の抽出プロセス」には時間と労力がかかっていた。あるいは、ときに人事研修の担当者などの第三者に協力を仰ぐ必要があったが、ChatGPTを活用することで、まるで人事研修担当者がその場にいるかのように、このプロセスをファシリテーションできた。特性リストの作成だけでなく、フィードバックの集約までをサポートし、効率的なワークショップ運営が可能になった。たとえば特性の抽出のためにわたしが準備に費やした時間は15分ほどだった。

3,特性を吟味する過程で、マネージャーによる提案ではなく、ChatGPTからのアウトプットに対してチーム全員でフィードバックを行う形式を採用したことによって、チームメンバーからの率直な意見が促進された。「マネージャーが押し付けているのではない」とチームメンバーが感じることを可能にし、よりオープンで誠実なコミュニケーションが始まった。マネージャーとチームメンバーという対立構造ではなく、ChatGPTとチームメンバー、それを仲介するマネージャーという形が機能した。


ChatGPTは、従来のチームビルディングや研修方法におけるいくつかの課題を克服し、チームメンバー間の信頼関係構築、相互理解の促進、そして組織全体のコミュニケーションの向上に貢献するためにも有効だ。

人間のマネージャーがこれから考えるべきことは、このような技術を活用して、既存のチームビルディングのためのフレームワークをいかに効果的に変えていくかを考えていくべきことである。効率性、客観性、多様性を高めることは、組織の成長を促進させるだろう。

中間管理職に求められるタスクの多くはChatGPTなどのAIによって代替されるだろう。しかしながら、「人工知能と協働する次世代のマネージャー像」というものが、きっとあるだろうと私は信じて、試行錯誤を続けていきたいと思う。

少なくとも今のところは。

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