新規事業を行うと決めた場合の5つの参入手法・実施方法

新規事業を行おうと思った場合、理想としては、自社内の経営資源(リソース)で実施することではないでしょうか。

ただし、既存事業を行いながら、新規事業を行うので、既存の人材だけではリソースが足りなかったり、ノウハウが足りなかったりと思うようにいかないケースも多いのではないかなと思います。

そこで今回は、新規事業を行おうと決断した場合に、どのような手法で新規事業に参入できるのかについて5つの手法を書いてみました。

新規事業の5つの参入手法

まずは、新規事業の参入手法について列挙していきます。
1.自社のみで賄う
言葉の意味そのままですが自社で製造・開発をすべて賄い新規事業に参入することです。
2.自社主導で開発や製造など一部外注(社外リソース)
これは、一部の製造・開発プロセスを外部に依頼しながら新規事業を行うことです。
外注する範囲の広さはいろいろとありますが、IT業でいうと企画・設計までは自社で行いその後の開発(プログラミング)を外注したりということですね。
3.OEM(他社商材の自社ブランド化)
すでに他社が行っている製品・サービスをブランドだけ変えて、自社ブランドの製品・サービスと見えるように販売することです。これも、自社ブランドに展開するうえで、既存の製品サービスをカスタマイズして提供したりといろいろな提供方法は考えられます。
4.M&A
すでに新規事業領域の製品・サービスを提供していたり、関連する経営資源を保持している他の企業を買収したうえで、買収した企業主体で新規事業を展開することです。
5.他社商材の取り扱い
自社で開発・製造するのではなく、あくまでも販売会社として展開することです。したがって、製造や開発には基本的には関与せず販売やマーケティングのみを行うものです。

新規事業に不可欠な経営資源・KSF

この5つについて、参入手法をどのように判断すべきかですが、大事なのは新規事業に必要となる経営資源を自社で用意できるかどうかです。

経営資源は、ヒト・モノ・カネ・情報といわれますが、具体的な事例としては下記のようなものが挙げられます。

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事業を行ううえで、これらの経営資源が必要となりますが、事業の内容ごとに経営資源の優劣が当然あります。
例えば、QR・バーコード決済事業に参入する場合は「圧倒的な資金力」が重要になったり、コンサルティングサービスを手掛ける場合は「人材のスキルやノウハウ」が重要だったりということです。

このように、事業を成功させるために最重要な経営資源のことをKSF(最重要成功要因)といったりします。

KSFは「事業成功のカギ」とされるもので、新規事業の領域で勝ち抜くために、最も重要だと考えているものです。

KSFが自社の経営資源で賄うことが難しい場合は、そもそも競争に勝ち抜くことは困難なため、KSFをどのように構築するのかという観点で外部リソースの活用を検討する必要があります。

KSFの事例としては、新規事業の内容によって変わってきますが、例えば下記のようなものがあげられます。
・先端技術に関する知見
・圧倒的な開発スピード
・先行投資をできる圧倒的な資金力
・企業ブランド力(認知度)
・顧客網・アライアンス網

ただし、KSFが用意できたとしても、その他関連する経営資源が不足している場合は、事業運営が成り立たないので、KSFだけではなく、その他の経営資源も含めて優位性があるかの検討が必要です。

この関連する経営資源という観点を考えるうえでは、事業の全体の流れを把握する必要がありますが、関連するフレームワークとしてバリューチェーンがあります。このバリューチェーンのプロセスを見ながら考えていくとわかりやすいです。

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バリューチェーンの構造は、業種業態によって異なる部分があるとは思いますが、主活動を中心として、これらのプロセスを自社で賄うことができるのかという点を考えていきます。

また、バリューチェーンは製造業を主として作られているので、一部改良しながら該当する新規事業のプロセスに当てはめてくほうがより有効性が増します。
例えば、IT業の「主活動」は、下記のような感じでカスタマイズします。

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ここまで説明した経営資源・KSF・バリューチェーンに基づくプロセスを踏まえて参入手法を検討していきますが、もう1点重要な軸としては、「市場に魅力があるか(市場が伸びる可能性が高い)」です。

そもそも、市場に魅力がなければ、やる必要性もないという話なのでこの点も重要な要素です。

参入手法を判断するための軸

・やれる自信があるか(経営資源・競争優位・KSFが有利)
・市場に魅力があるか(市場が伸びる可能性が高い)

この2つの軸で参入可否および参入手法を判断するというお話をしました。

これらを踏まえたうえで、最終的にどのように判断するかについて基準を図で表してみました。

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基本スタンスは下記です。
・市場の魅力が高い場合は、なるべくリスクを取って参入するが、経営資源が乏しい場合は外部リソースを活用しながら参入
・市場の魅力が低い場合は、リスクに見合ったリターンを得られる可能性が下がるので、リスクがより低い方法で参入するか参入しない

その他、「新規事業分野に関するノウハウ蓄積をしたいかどうか」「参入する(しない)ことによる既存事業へのプラス(マイナス)の影響」などの要素も加味しながら判断していくことが必要となります。

以上、今回は新規事業の参入手法について書いてみました。新規事業検討の参考になれば幸いです!

著:森本 晃弘NS.CPA

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